ヴァニタスの手記 4巻
「…オレに言わせれば 人間も吸血鬼も同じようなものだ 酷く醜悪でどこまでも身勝手な生き物だ」
―ヴァニタス
『狩人』達の本拠地の構造に詳しすぎたヴァニタス。
ノエが明らかに納得のいかない顔をしていると、観念したようにヴァニタスは自分の過去を少しだけ語ります。
「親を吸血鬼に殺され、助けられた『狩人』から教育を受け、人体実験の材料になった。それだけの話だ」
それはまるで他人事のようにあっさりと説明していましたが、内心はとても深い憎悪の念で満ち満ちているのでしょう。
凄惨すぎる過去なので「他人事にしたい」のかもしれませんが…。
この次のコマでノエはこのヴァニタスの顔にイラァっとします。しかし相変わらずノエはヴァニタスの表情に敏感だなぁ…。
「ひとのことを番号で呼ぶのは やめろ!!!」
―ノエ
「ボクわるいきゅうけつきじゃないよ」と、ローランと和解したノエ。
2人がここに来た目的を伝えるとローランと部下たちは同行してくれる事になりました。
そして一行が辿りついたのは、ヴァニタスにとってのトラウマの巣窟、ドクター・モローの研究室でした。
ヴァニタスの事を「No69」と呼び、その狂った好奇心を抑えられないモローでしたが、ついにノエにプッツンされちゃいます。
ヴァニタスの猫被り作戦は失敗に終わってしまいますが、ノエがしっかり主人公してくれたのでスカッとしました。というかよくここまで我慢できたなノエ…。
どうやらローランも同じ気持ちだったみたいですね。ここからまた激しい戦闘が繰り広げられます。
ヴァニタスの手記4巻 ©2016 Jun Mochizuki
ドクター・モローが飼っていた『呪持ち』は、今までに戦った相手とは比べ物にならないほど凶悪でした。
過去のトラウマが蘇り、すっかり戦意喪失してしまったヴァニタスでしたが、諦めたくないというノエの言葉を受け、なんとか気持ちを立て直します。
2人は玉砕覚悟の特攻を仕掛け、なんとか『呪持ち』を救う事に成功します。決めの一撃がちょっとあっけなかったのでそこはちょっと残念でしたが…。
「生きているのが不思議」だと笑うヴァニタスにつられて、ノエも一緒に笑っています。
ヴァニタスも、ノエに救われたんじゃないでしょうか。
第1話で飛行船から落ちたときにも同じような台詞を言っていましたが、今回は2人ともいい笑顔してます。
直前の陰鬱な雰囲気から一転して素敵なシーンになりました。
人間と吸血鬼が一緒に笑っている。ローランはこの光景にとても感動していましたが、分かる気がします。
「オレは吸血鬼が好きです そして同じように オレは人間が好きです」
―ノエ
激闘を終え、カタコンブから戻ってきた2人。
ルスヴン卿は後日、パリの老舗カフェを貸切りにしてノエに接触を謀ります。
「君は吸血鬼の味方か?それとも人間の味方か?」というルスヴン卿の問いかけに、純粋なノエはこう答えました。
彼らしい優等生解答でしたが、ルスヴン卿にはお気に召さなかったようで、ノエは『呪い』を与えられてしまいます。
しかし、あえてノエを始末しなかったのを見ると、ルスヴン卿もこの言葉に何か思うところがあったのでしょう。
ノエみたいな考えの人ばかりだったら、世の中平和になるんだろうなぁ…。
「その時はオレが君を殺してやる 必ず 殺してやる」
―ヴァニタス
ノエがルスヴン卿に『呪い』を与えられていたその頃、ヴァニタスはジャンヌに呼び出されデートをしていました。
ヴァニタスと縁を切りたいジャンヌは、彼に「嫌われるために」全力で「ヴァニタスに恋する私」を演じていましたが、その魂胆を一瞬で見透かされ、逆にヴァニタスに掌の上で転がされてしまいます。
その結果、「優しさに対する防御力がとんでもなく低い」彼女は、ヴァニタスのこなれたリードに本当に恋心を抱き始めてしまいます。チョロいぞジャンヌ…。
しかし、楽しいデートも終わりが近づいた頃、転んだ子供の血液に反応してしまったジャンヌは吸血衝動を抑えられなくなってしまいます。
「いつかルカ様を傷付けてしまう日が来たらどうしよう…」と、取り乱し泣いてしまうジャンヌにヴァニタスはこの言葉をかけました。
優しい表情と台詞のギャップがすごい…。
ノエでは絶対に言えない、彼ならではの“救い”の言葉。
無責任に「治してやる」と言わないところが、またヴァニタスらしい。
ヴァニタスの手記 5巻
「ああ でも――君を倒すのには少々骨が折れそうだね!」
―ローラン
ローランは先日の件を経て、人間と吸血鬼の歴史を勉強し直していました。
『狩人』が吸血鬼と仲良くするなど論外なんだそうで、親友のオリヴィエはそれを知って激怒。
「そんな事がバレたら家族にも害が及ぶぞ」とローランを脅しますが、ローランは「だったら組織が半壊するくらいの覚悟で来いよ?」と逆に笑顔で脅し返します。かっけぇなおい。
オリヴィエはローランを心から心配し、ローランも申し訳なさそうな表情でオリヴィエに返します。この2人もノエ達に負けず劣らずいいコンビです。
オリヴィエさん、苦労してるんだろうなぁ…。
「オレは吸血鬼を“救う”ために来たんだ おまえは違うのか」
―ヴァニタス
「ジェヴォーダンの獣」事件の真相を調べに来た一行。
探索していた森の中で1人はぐれてしまったノエは、聖騎士隊長の1人≪柘榴石≫のアストルフォと遭遇してしまいます。
アストルフォと対峙するノエですが、その実力に防戦一方。ローランと同じように、話せば分かり合えると思っていたノエは焦り、どうしたらいいのか分からなくなっていました。
しばらくして合流したヴァニタスのこの言葉で冷静さを取り戻したノエはヴァニタスと交代。アストルフォの相手を任せ、「適材適所」で行動を再開します。
カタコンブではノエがヴァニタスを助ける事が多かったけど、今回は立場が逆ですね。この言葉で冷静さを取り戻せるのも、同じ目的のために戦う「相棒」ならではです。
いいコンビになったもんだ。
「ゴチャゴチャうるさい!!ひとの命がかかってるのよ 大人しく脱がされなさい!!」
―ジャンヌ
アストルフォとの戦闘でジャンヌを庇い、毒を受けたヴァニタス。
大嫌いな相手だとはいえ流石に見捨てられなかったジャンヌはヴァニタスを介抱します。
体温を確保させるため、雪で濡れてしまった服を脱がそうとしますが、意外とピュアなヴァニタスは顔を真っ赤にしてささやかに抵抗。
しかし一刻を争う状況なのでジャンヌは武力行使に出ます。これにはヴァニタスもたじたじ。
およそ『処刑人』とは思えないジャンヌのこの行動ですが、彼女も本心は誰かを“救いたい”と願っているのでしょう。
ヴァニタスもそれを分かっているようで、『ジェヴォーダンの獣』となってしまった(と思われる)友達のクロエのことを本当は“救いたい”んじゃないのかと、熱に魘されながら諭していました。
ジャンヌも本当はとても優しい子なんですね。
ヴァニタスの手記 6巻
「…やってみろ 愚鈍な混血の死体が雪山に二つ転がるだけだ」
―ヨハンとヴァニタス
ジャンヌのおかげで翌朝には元気いっぱいになったヴァニタスですが、突然ダンテとヨハンの喉元に刃を向け、「ちゃんと全部情報を提供しろ」と脅しにかかります。
まぁうん、確かに・・・ヴァニタスはその分のお金をきっちり支払ってますから、当然の要求ですよね。でも怖いよヴァニタス君。
ヨハンはヨハンで、大好きなダンテが危ない目に遭って自分のキャラを忘れて暴走してるし。
ダンテが「混血の味方は混血だけ」って言ってたし、『混血』同士の絆ってすごい強いんだろうなぁ。
ヨハンはそれ以上に、なんか深い過去がありそうですが…。
ヴァニタスが八つ当たりしてるのは、『白銀の魔女』に連れて行かれたノエが心配でイライラしているからだそうで。
2人ともそれぞれに、大切な人を思っての言動なんでしょうけど、皆仲良くしようよ。
ネーニアがクロエと一緒にいるのを見てしまったノエ。
かつて親友のルイが『呪持ち』になって死んでしまった元凶を前に、我を忘れ怒りを露わにします。
今回で三度目(実際にお互いを認識したのは二度目)の遭遇、ネーニアの目的が少しずつ分かってきました。
「願いを叶える代わりに真名をちょうだい」と言うネーニア。
ルイは「ノエ達を助けたい」と願ったんでしょうか。しかしその結果、真名を奪われたためにあんな悲劇が…。
もしルイの願いがそうだったのなら、ノエのつらさは計り知れませんね…。「オレとドミにルイを返せ!!!!」って台詞、なんかとても悲しい気持ちになりました。
「食べ物を粗末にする子は嫌いよ…?」
―クロエ
ネーニアに今にも飛びかからんとするノエは、テーブルの上の料理をお構い無しにぶちまけてしまいました。
そんなノエにすかさずクロエからの音速のビンタが飛んできます。
屈強なノエが一撃で吹っ飛んでしまうほどの凄まじい腕力を披露した彼女。ゴゴゴゴゴて、ジャン・ジャック引いてるじゃん。
うーん、まぁでも正論過ぎてぐうの音も出ないですね。
クロエは見た目通りの少女ではなく、何百年もの時を生きてきた吸血鬼で、今までの雰囲気やら言動から只者ではない感は出てましたけど、逆らっちゃダメなタイプのやつですね。
めっちゃボスオーラ出してて良いキャラしてます。
「これがクロエの望んだことなら クロエがもう泣かなくて済むのなら 僕はそれでいい 行き着く先が滅びだったとしても 最期までクロエのそばにいる」
―ジャン・ジャック
イケメン…!!
美味しいご飯作ってくれるし、裁縫だって得意だし、いい奴だし…。
こんな付き人居るなんて幸せだなクロエ。なかなかこんな事言ってくれる奴いないぞ。
でもこの台詞から、クロエのつらい過去と、これからあまりよろしくない事をしようとしていることが分かります。
かつて人々の恐怖が生み出した想像上の化け物、それが『獣』で、クロエは本当はそれではありませんでした。
ジャン・ジャックはその誤解を解くため、そしてクロエを貶めた人間と見捨てた吸血鬼への復讐のために、ネーニアを受け入れ、自らが『獣』になったのでした。
それはきっと正しいことではないのでしょうが、彼の存在はクロエを確かに救ってくれていたんだと思います。
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