2年程前に【帝王の娘 スベクヒャン】という作品を見て「これは面白い!」と感じて以来、アマゾンプライムで見られる韓国時代劇をポツポツと見てきました。
今年に入ってからは【王の顔】【太陽を抱く月】【ペク・ドンス】【輝くか、狂うか】などの作品を見たのですが、【王の顔】や【太陽を抱く月】などはなかなか面白かったです。
ちなみに今のところ僕が選ぶNo.1韓国時代劇は【馬医】。あれを超えられる作品はなかなかない。
テレビドラマ【王になった男】の感想
そして、1ヵ月程前に見始めて昨日見終わったのが【王になった男】という作品。
この作品は、韓国で2019年に放送されたテレビドラマで、2012年に公開された同名の韓国映画(主演イ・ビョンホン)のリメイク版。
あらすじは以下の通りです。
朝鮮王朝時代、道化師のハソン(ヨ・ジング)は妹たちと共に芸を披露しながら全国を旅しており、漢陽(ハニャン)を訪れた一行は、王のイ・ホン(ヨ・ジング/2役)を揶揄する芸を見せる。
その場に居合わせた王の側近イ・ギュ(キム・サンギョン)はハソンの芸を止めさせようとするが、仮面をとったハソンの姿を見て思わず息をのむ。ハソンは王にうり二つの顔立ちをしていたのだ。イ・ギュはハソンに王の影武者をさせるため、宮廷に連れてくる。
宮中に渦巻く陰謀から、一度は宮廷を逃げ出すハソンだが、庶民がふみにじられる現実を知り、次第に本当の王になって世界を変えたいと願うようになる。
一方、王妃のソウン(イ・セヨン)は冷酷な王から距離をおいていたが、ある日突然優しくなった王に戸惑いつつも、次第に惹かれていくのだった…。王になった男|kandra.jpより引用
天才子役から実力派俳優へと成長したヨ・ジングの圧倒的な演技力
最初は、隆慶一郎氏の【影武者徳川家康】的な作品で面白そうと思い見始めたのですが、主人公を演じている役者さんのどうにも見覚えのある顔が気になりました。
役者さんの名前は<ヨ・ジング>。
前述の【太陽を抱く月】【ペク・ドンス】の2作品で主人公の少年時代を演じた子役の方でした。
【ペク・ドンス】ペク・ドンスの少年時代
子役時代はイケメンとはいえないけれど、演技力の高さは今まで見た全ての子役の中でもトップクラスで、ものすごく印象に残っていました。
憑依型ぽい演技だったので役に飲まれてしまわないだろうかと心配しましたが、現在も大活躍されているのでリセットがきちんとできるタイプなのでしょうね。
【太陽を抱く月】は少年時代の配役は皆素晴らしくて、特にヨ・ジングさんと【ミセン -未生-】の主人公のチャン・グレ氏を演じた役者さんは魅力的でした。
それだけに青年時代の配役は若干不満。特にヨヌ役の女優さん…
ストーリー自体は非常に面白かったので【太陽を抱く月】はおすすめの作品のひとつです。
少し脱線してしまいましたが、子役だったヨ・ジングさんがイケメン(巨人の石川慎吾選手似)に成長し、【王になった男】の主人公を演じたわけですが…
狂気を胸に抱えた冷酷な王様(イ・ホン)と…
正義感が強く人間味溢れた道化師(ハソン)の二役を一人で完璧に演じきっていました。
その圧倒的な演技力に、「この人は一体何種類の表情・声色を使い分けられるんだろうか」と驚愕したものです。
この時の年齢は22歳。日本のドラマをあまり見ていないので言い切ることはできないけれど、日本の若手俳優でこれだけの演技ができる人はいないだろうなと思いました。
次は【王になった男】のストーリーについて。
主人公のモデルは二面性をもつ朝鮮史上最悪の暴君・光海君
僕は韓国の歴史にあまり詳しくないので細かい部分は分かりませんが、主人公のひとりである王様のイ・ホンは【王の顔】の主人公だった光海君がモデルなんですね。
光海君は【王の顔】では、父王(宣祖)に疎まれながらも国を守るために日本軍とゲリラ戦を展開したり、常に民の側に立つ発言・行動をしたりと、明らかに名君・聖君という感じのキャラクターでした。
父王が亡くなり光海君が王になったところで物語が終わったので、その後名君としてさぞかし素晴らしい生涯を送ったのだろうなと思いながらWikiを見てみると、”暴君として廃位された王””朝鮮史上最悪の暴君”などと書かれていて驚いたものです。
【王の顔】の作中「もし聖君の道を外れたらむち打ってくれ」というまでに信頼していた腹心のホ・ギュンまでも史実では凌遅刑という残虐な刑罰で殺してしまったらしいですね…。
しかし、そんな悪逆非道な行いとは裏腹に、戦乱で疲弊した国内の復興政策や日本との国交回復、文化的編纂事業、そして大同法の施行など、国や民にとってプラスになる政策も数多く行っています。
光と闇という両極端な二つの顔を持つ光海君。
この物語をつくった作家さんはこのあたりから「もしかしたら王は二人いたのではないか」という想像を掻き立てられたのかもしれません。
さらに史実通りではバッドエンドが約束されているので、架空の人物や設定をたくさん加えてストーリーを再構築。
史実と異なるだけではなく、映画版とも違う(一部の設定やチョ内官役の役者さんは同じだけど)新しい物語になっています。
ハソン&イ・ギュのクンジョルとチャン武官の生き様に感動
物語序盤の完成度は本当に半端ない!
ストーリーも役者さんの演技も映像美も音楽も、これは今まで見た韓国時代劇でNo.1かもしれないと思いました。
道化師ハソンと王イ・ホンや都承旨イ・ギュ、チョ内官との絡み、少しずつ距離が近づいていく王妃ユ・ソウンとの関係などを見るのが楽しくて、1日1話しか見ないと決めていたのに用事をすっぽかしてテレビの前に釘付けになることも。
ハソンとイ・ギュのダブルクンジョルには心を打たれたし、
韓国で最高の敬意や感謝を表す、最も丁寧なお辞儀のこと
個人的に大好きだった無骨な男チャン武官の生き様は本当にかっこよかった。
チャン武官は映画版【王になった男】のト武将ポジションなんだろうなあと思いつつも、改変からのハッピーエンドを期待していたのですが…。
堅物だけどユーモアもあって作中最強クラスに強い、かっこいいキャラクターでした。
しかし、中盤から後半は重い話が多かったり、キャラクターの行動に若干イライラさせられることも多かったです。
特にサッカーの久保君似の妹ダルレ。
彼女の行動にはかなり引っ掻き回されましたね。
シン・チス(キム次長、歳とったなあ…)も途中までかなり厄介な相手だったのに最終盤では時間が押していたからかなんだかやっつけ仕事。
切れ者感は見る影もなくなってしまいました。
敵も味方も失策だらけで、「そうはならんやろ、おまえら真面目にやれ…」とヤキモキしながら見ていました。
最後は恋愛模様できれいに締め
そしてエンディング。
物語の最後を恋愛模様で終わらせようとするのはいかにも韓国時代劇という感じ。
日本の時代劇はさすがにそこまで時代観を崩せませんからね。
FF9的な演出で「道化の仮面を取ったらハソンでした、王妃と抱き合ってハッピーエンド!」がいいなと思いながら見ていたら、作中で何度も出てきた”ハシバミの実”が仕事をしました。
そういえばハシバミの実はずっとどんぐりの一種なんだろうなあと思っていましたが、どうやら違うみたいです。
どんぐりはブナ科でハシバミの実はカバノキ科ハシバミ属の果実だそうで、”ヘーゼルナッツ”と言われているものだとか。
実社会で使うことはなさそうな知識だけど勉強になりました。
【オクニョ】や【スベクヒャン】など、韓国時代劇は物語の締め方が微妙な作品が多いけれど、【王になった男】の終盤~エンディングはきれいにまとめられていて良かったと思います。
どうせ架空の話なんだから、もう少し重い話を抜いてハソンと都承旨たちの面白いやり取りや王妃とのイチャイチャをメインにした明るい話にしてくれたら楽に見えたのにと思うこともありましたが、韓国ドラマ特有の山あり谷ありストーリーがそれを許してはくれませんでした(笑)
ストーリーに関しては気に入らない人もいるかもしれませんが、ヨ・ジングさんを始めとした役者さんたちの演技力の高さや映像美は韓国時代劇の中でもトップクラスだと思うので、まだ見ていない人は是非見てみてください。
必ず心に残る作品になると思います。
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