『岸辺露伴は動かない』は、【ジョジョの奇妙な冒険第4部】のキャラクター、岸辺露伴の取材見聞録としてスピンオフ展開している漫画作品です。
ファッション誌や少女漫画誌などさまざまな媒体で発表された露伴先生の不思議な体験。
そのお話の概要や感想、印象的なシーンをまとめてみました。
岸辺露伴は動かない 1巻
懺悔室
『懺悔室』は、露伴先生がイタリアへ取材旅行に行った時のお話。
神を信じる者がプライバシーを守られた状態で神父に懺悔を聞いてもらえるという場所で、露伴先生は神父と勘違いされてうっかり(…でもなく確信的に)重い告白を聞いてしまいます。
露伴先生が聞いている懺悔の内容がストーリーとして展開されていくので、メインで動いているのは名もなきキャラクターたちなんだけどこれがまた不気味で面白い。
スタンドバトルもなく、ヘブンズ・ドアーさえも出てこない話なのにその不気味さにすごくジョジョらしさが詰まってるエピソードでした。
個人的には漫画『岸辺露伴は動かない』シリーズの中でこの話が一番”ジョジョっぽい”と思ってます。
このエピソードは2020年に発売されたOVAコレクターズエディション内にも収録されていて、OVAでは漫画とは違って露伴先生が康一くんに体験談を聞かせる形でストーリーが始まります。
本編とリンクした時系列で言うと、どうやら康一くんが承太郎の依頼でイタリアに行く直前に露伴先生から聞いた話という位置づけのようです。
印象的なシーン
『懺悔室』で印象的だったのはラストのネタばらしのシーン。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
はじめちょっと意味が分からなくて「?」となったのちに「なるほど…」と納得する瞬間。
一度読んだ後にもう一度初めから読み返してみたくなります。
掲載時期
1997年(週刊少年ジャンプ30号)
六壁坂
『六壁坂』は、妖怪伝説の噂を取材していた露伴先生が六壁坂村に住む女性「大郷楠宝子」の記憶をヘブンズ・ドアーで読み、知り得た情報をまとめたお話です。
大まかな内容としては妖怪伝説を取材していて本当にその妖怪に行き当たったというファンタジー満載な雰囲気なんだけど、肝心の「大郷楠宝子パート」に全然そんな空気が無くただただ怖い。
サスペンス風の展開で血だらけの描写が多く絵面はちょっとグロめです。
このエピソードはOVA化され、コミックス『岸辺露伴は動かない』2巻の特別版に同梱されたのちにOVAコレクターズエディションにも収録されました。
OVA版では漫画には出ていなかった未起隆が登場し、露伴先生が出会った妖怪について「オリオン星系に似たような生物がいた」と話しています。
印象的なシーン
『六壁坂』で印象的だったのは編集者と話している露伴先生のもとに二人のファンがサインを求めにやってくるシーン。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
サインくらいスペシャルサンクス!!!
このセリフがツボ過ぎて。
露伴先生、素敵です。
しかもサイン欲しがってるのは音石と玉美。(二人とも4部に出てくるキャラクター)
なかなかおもしろい一コマでした。
掲載時期
2008年(ジャンプスクエア1月号)
富豪村
『富豪村』は、漫画編集者の「泉京香」が別荘の購入を計画するお話。
25歳の時にとある村の土地を買った人はみんな大富豪になったという話に興味を持った露伴先生は泉京香の別荘購入に同行して取材を試みます。
このエピソードでは「マナー」が非常に重要なカギを握っていて、そのマナーによって露伴先生たちは命の危機にまでさらされるという非常に緊張感のあるストーリー展開になっています。
なんだかこちらまで試されているような気持ちになって妙にドキドキしてしまうお話でした。
『富豪村』は4部DVD、Blu-rayの全巻購入特典としてOVA化され、その後OVAコレクターズエディション内にも収録されました。
印象的なシーン
『富豪村』で気になったのは唐突に始まる冒頭の体操のシーン。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
何かの伏線なのかな?と思いきや、特に意味はありません。
露伴先生が執筆前のルーティンにしているストレッチをただ披露してくれただけです。
その謎の空気感がまたいいんです。
ちなみにこの体操は4部のアニメ最終話にも追加されていました。
露伴先生といえばこの体操というイメージです。
さらに印象的だったのは露伴先生と泉京香のやりとり。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
見てください、この露伴先生の表情を。最高に面白い顔してる。
それでまたこの泉京香のキャラが濃くて…
彼女に振り回されてる露伴先生がすごく好きです。
荒木先生は、決して自分の周りの編集者を彼女のモデルにしたわけではないとちょっぴり言い訳っぽく語っていましたが…実際のところはどうなんでしょう?
掲載時期
2012年(週刊少年ジャンプ45号)
密漁海岸
『密漁海岸』は杜王町に店を構える料理人トニオ・トラサルディーが露伴先生を伴って「ヒョウガラ列岩」と呼ばれる場所へ特別なアワビを採りに行く、というお話です。
タイトルからもわかる通り方法は密漁。
トニオさんは4部本編にも登場するスタンド使いですが、本来は密漁しようなんて言い出すようなタイプの人ではないのでまさかの提案に驚きました。
そういえば4部アニメのオープニングでトニオさんがアワビらしきものを持っていたのはこのエピソードとのつながりを意識したものだったのかも。
しかし『岸辺露伴は動かない』は4部ではなく8部『ジョジョリオン』と隣り合わせた世界らしいので作中のアワビが生息している「東方一族の私有地」というのもおそらく4部ではなく8部の東方家のことだと思われます。
そんなところに密漁に行くなんて何か起こりそうな気しかしない。
印象的なシーン
『密漁海岸』で印象的だったのは、露伴先生がトニオさんに密漁の本当の理由を聞いてから改めて協力してくれる気になったシーン。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
露伴先生ほんとにツンデレ。
好奇心だけだがな…なんて言ってるけど無言の2コマがそうじゃないことを物語っています。
やむにやまれぬ理由があると知って協力する気になりながらも「別にそんなんじゃないんだからね!」と天邪鬼っぷりを披露するのも忘れない。
めんどくさいけどいい人なんです。
物語ラストの穏やかな微笑も素敵でした。
密漁に同行することを承諾するときの「だから気に入った」のセリフもいかにも偏屈の露伴先生らしくていいですね。
「だが断る」の反対語っぽくなってるところもおもしろい。
掲載時期
2013年(週刊少年ジャンプ46号)
岸辺露伴グッチへ行く
『岸辺露伴グッチへ行く』は露伴先生がイタリアフィレンツェ郊外にあるグッチの工房へおばあちゃんの形見であるボストンバッグを修理してもらいに訪れるというお話。
このエピソードは1巻のラストに収録されてはいますが『岸辺露伴は動かない』シリーズとはまた別の位置づけになるようです。
コミック誌ではなくファッション誌の別冊付録として掲載されていただけあって中身の雰囲気がほかのエピソードとはちょっと違いますね。
ヘブンズ・ドアーを使えばどうにかなるのでは…という場面もあるんですが、そこは掲載誌の読者層に配慮した構成ということで…。
それにしても「スタンドバッグ」とは…。
便利なようで使いどころがものすごく難しそう。
印象的なシーン
『岸辺露伴グッチへ行く』で印象的だったのはとにかくオシャレな露伴先生。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
あまりにもスタイリッシュすぎてセリフとポーズに違和感がありまくりなんですが、こんな感じでグッチのファッションをアピールしたイラストが随所に盛り込まれています。
ファッションデザインは全てデザイナー、フリーダ・ジャンニーニさんのものを正確に描き起こしているんだとか。
違和感なく着こなせちゃう露伴先生もすごい。
せっかくなので雑誌掲載時と同じ全編フルカラーで見たいイラストですね。
掲載時期
2011年(SPUR10月号)
岸辺露伴は動かない 2巻
望月家のお月見
『望月家のお月見』は、露伴先生の近所に住む家族、望月家(仮)の家系にまつわるエピソード。
代々一人の例外もなく中秋の名月に死亡している望月家の人々ですが、その日にどこにも出かけず家族でお月見をすれば死を免れる…という不思議なお話です。
この望月家の人たちってなんだか既視感あるな~と思ったら、【ジョジョリオン】の東方家とリンクするような存在として描かれているんですね。
お父さんを中心に家族でガヤガヤやってる感じが東方家とすごく似てる。
この回は露伴先生がはじめにちょこっとしか登場しないのでそこが少し残念です。
ラストのオチは納得50%、拍子抜け50%。
印象的なシーン
『望月家のお月見』で印象的だったのは月からやってきた謎の生き物(?)
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
こいつは一体…?
【岸辺露伴は動かない】シリーズに出てくるのは妖怪だったり神だったり怨霊めいたものばかりで敵のスタンドというのは出てきてないので、このキャラもそうではないんだろうけど見た目はすごくスタンドっぽい。
ウサギのようなネズミのような…それでいて何だか妙におじさんっぽくてすごくインパクトがありました。
丸いしっぽとかついてても全ッ然かわいくないところが「これぞジョジョ」って感じがして好きです。
掲載時期
2014年(少年ジャンプ+9月22日配信号)
月曜日 天気-雨
『月曜日 天気-雨』は露伴先生が雨の日の駅で遭遇したおかしな事故(事件?)のお話です。
駅構内でスマホを持った人々が前を見ずに次々ぶつかってくるという現実世界でも起こり得そうな問題が描かれているところが大変興味深く、これは近年の歩きスマホに対するアンチテーゼかと思いきや…オチが思ってもみないところにおさまって驚きました。
オチは斜め上のところから来たんですが、きっと荒木先生も駅構内でスマホばっかり見て歩いてる人々の様子が気になっていたのかもしれません。
そんな社会問題も荒木先生の手にかかればこんなに不気味で異常な雰囲気になるんですね。
ちなみに荒木先生は電車内では人が履いてる靴をじっと観察してるそうです。
そういうキャラクター普通にジョジョに出てきそう。
このエピソードはヘブンズ・ドアーも出てくるし露伴先生がちゃんと活躍してくれるので気に入ってます。
印象的なシーン
『月曜日 天気-雨』で印象的だったのは、4部本編とはちょっと雰囲気の違う露伴先生。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
女性や子供をさりげなく助けたりしてなんだかすごく「ヒーロー」してる。
やっぱり【岸辺露伴は動かない】シリーズでは主人公ですからね!
特にこの回は主人公感が強かったと思います。
変わり者だけどちゃんと普通の倫理観も持ち合わせてる人なんだってところが見られて嬉しいです。
掲載時期
2016年(ジャンプスクエア1月号)
D・N・A
『D・N・A』は露伴先生が山岸由花子(4部本編に登場するキャラクター)の知人から「普通ではない」特徴を持った娘、真央のことについて相談を受けるというお話です。
少女漫画誌用に描かれたためか、ほかのエピソードと違って雰囲気も柔らかくハッピーエンドで終わる珍しい作品。
真央ちゃんの身体的特徴の謎については最後まで詳しく明かされなかったので非常に気になります。
しっぽは「心の形」ということで結論が出たけど足元が濡れる理由って何だったんだろう…?
お父さんとの特徴的な類似点を作るためだけの設定だったのかな。
ジョジョではこんな風に何だったのかわからないままの設定がしばしば転がっています。
それがジョジョ。
印象的なシーン
『D・N・A』で印象的だったのは由花子さんの登場シーン。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
誰?
由花子さんと言えばあのきゅっと上がった細眉とスッと通った鼻筋がチャームポイントだったのに。
眉が太くて鼻が丸い…。
パッと見、ホントに誰なのかわかりませんでした。
野球の話をしてる露伴先生のことを「キャライメージ変わったわ」なんて言うんですけどあなたのほうこそ。
口調以外はほぼ別人です。
荒木先生は時代に合わせて絵柄を変えてきたそうなのでこれも致し方なしという所なんでしょうか。
この頃になると露伴先生の顔も『懺悔室』の時とは全然違いますが…そういう所を比較しながら見るのもおもしろいかもしれません。
掲載時期
2017年(別冊マーガレット9月号)
ザ・ラン
『ザ・ラン』は体づくりに情熱を燃やす俳優志望の男「橋本陽馬」と露伴先生の対決を描いたエピソードです。
対決の内容は、徐々に加速する設定のトレッドミルで走り時速25㎞に達した瞬間一つしかないリモコンを操作して先に自分のマシンを停止させた方が勝ちというもの。
ただのゲームのつもりで始めたはずが、橋本陽馬のすさまじい執念で追い詰められる露伴先生。
これは負けず嫌いをこじらせてる露伴先生の性格も災いしたというほかないですね。
このエピソードも『富豪村』や『六壁坂』と同じくOVA化されていて、作中では二人がベンチプレスで競い合っているシーンなどが追加されていました。
BGMにも煽られて、二人が意識し合ってる様子がわかりやすく描かれています。
そういえば、ミカちゃんがつけてたネックレスを後半では陽馬がつけているんですが…(前半ではつけてなかったのでおそろいってわけではないと思う)
ほんとに何の説明もなくしれっと。
これは陽馬はミカちゃんを憎んでいたわけではないということですよね…?
陽馬のサイコっぽさが強調されつつ複雑な心情を表してる描写だと思いました。
印象的なシーン
『ザ・ラン』で印象的だったのは冒頭の露伴先生の反省シーン。
ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS
「自分の性格に」「非がある」!
露伴先生が素直にそんなセリフを!
何事かと思いました。橋本陽馬おそるべし。
無言で頭を抱えたりしてるあたりにも心の底からの激しい後悔の念がうかがえます。
だけど冷静に自分のことを分析してるところは露伴先生らしい。
掲載時期
2018年(週刊少年ジャンプ13号)
OVAコレクターズエディション
ここまでに紹介したエピソードの中から
- 懺悔室
- 富豪村
- 六壁坂
- ザ・ラン
以上の4つはOVA化され、『岸辺露伴は動かない コレクターズエディション』として販売されています。
各話で声を当てられてる高橋広樹さん(若い男)中原麻衣さん(泉京香)種崎敦美さん(大郷楠宝子)内山昂輝さん(橋本陽馬)も役柄にぴったりはまってて個人的には全く違和感なし。
4部のアニメ本編とは違って作画もいいし、オリジナルのOP/EDテーマもすごくかっこいいので一見の価値アリです。
露伴先生の登場が多い『密漁海岸』や『月曜日 天気-雨』も映像化してほしい。
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