フェイスレスがエレオノールを抱えて飛び去ったあと屋敷にやってきた仲町サーカスの団員たち。
勝との再会を喜ぶ暇もなく混沌とした状況に困惑する彼らの周囲で、突然人々が息を荒げて苦しみだしました。
第21幕 銀色の女神
デウス エクス マキナ
「おわかりの通り僕が病を与えた。治す術は君たちにはないよ。」
公共の電波をジャックして人々に語りかけるフェイスレス。
フェイスレスは古代ギリシャの悲劇詩人エウリピデスの作品になぞらえて、「物語の結末を告げる女神」を使い世界中にゾナハ病をまき散らしていました。
銀色の女神には実体はなく、この姿は虫型オートマータ「アポリオン」の集合体。
埃のように小さいアポリオンが人々の体内に入ってゾナハ病を引き起こしているわけです。
気持ちわる…
神話における『アポリオン』は蝗害(イナゴやバッタの大量発生によって起こる災害)を神格化したものであると考えられているため、からくりサーカスのアポリオンは虫の形をしているんですね。
漫画では銀色の女神が登場したこの辺りから新章『デウス エクス マキナ(機械仕掛の神)』編がスタートします。
『デウス エクス マキナ』とは演劇などで用いられる演出技法のひとつで、めちゃくちゃな状況を神のような絶対的な力で強引に収束させる展開を指す言葉。
サーカスや舞台を題材にして、あらゆるところにモチーフを散りばめてきたこの作品にぴったりなタイトルですね。
おそらく藤田先生は舞台の演出技法としてではなく、そのまま『機械仕掛の神』という直接的な意味で「デウス エクス マキナ」というタイトルにしたのでしょう。
カットされていなければ最終盤にタイトル回収のセリフがある…はず。
ギイvsクピディアー
「このままフェイスレスを追うぞ、勝。」
ジャックオーランタンに乗って上空へと昇った勝を追いかけてきたギイとリーゼ。
原作のギイはこの時ロンドンにいたのでリーゼは別の方法で勝のあとを追っていくんですが、アニメ版ではギイに同行を申し出たようです。
それにしても、ギイの後ろにいるリーゼの表情…。作画もうちょっと頑張って(笑)
あとここの場面、リーゼがどうやって浮いてるのか謎だ…。
そんな3人のもとにやってきたのはなかなか奇抜なデザインの自動人形クピディア―。
「さすが伝説の200体人形破壊者のギイ。よく、我がクピド・アローをかわしたな。」
なんとCV神谷浩史。
出番1回だけなのに…!
いやぁクピディア―がまさかこんなところに登場するとは。いろいろ驚きです。
まあこのアニメそんなのばっかりなんですけどね。
「ギイ、お前はぼくの次に美しい。君をオートマータにしてコンビを組みたかった。」
傷が治り切っていないためあっさり撃墜されてしまったギイはクピディア―から雑な勧誘を受けます。
いや、ほんとはここはもっとくどいやり取りをしてるんですよ。
フェイスレスからもらった情報をもとにこれまでのギイの感情の動きを考察したりしながらクピディア―はかなり本気でギイを仲間に誘っていました。
会話ももっと多かった。
しかしこのアニメにはそんなことをおしゃべりしてる暇は無いのだ。
「鳴海!不思議だな。そろそろ君が現れるんじゃないかと思っていた。」
ほんとに不思議だな!
間一髪のところでギイを助けたのは14話でいつの間にかいなくなっていたはずの鳴海。
なんで鳴海がこんなところ(黒賀村の林?の中)に…。さすがに違和感が仕事しすぎる。
クピディア―、結構派手に登場したのにサクッと鳴海にやられてしまいました。
う~ん、クピディア―との対決は原作ではギイがちゃんと自分で決着をつけるんですが…
本来いないはずのところに鳴海を登場させるためにこうなったのか。
クピディア―との戦いめちゃくちゃかっこいいから原作通りの展開で見たかったです。
指先まで美しいギイとオリンピアがどーんと見開き。
このポーズ、顔の角度まで最高。
その美しさに思わず見とれてしまってクピディア―はギイに敗れるという神展開なのです。
見たかったなぁ…。
アニメ版はギイの活躍が少なくて残念。
ジョージと阿紫花
「音楽家気取りのマヌケ人形…私たちに音楽は無理なのさ。
なぜかって…?私もおまえも──ただのメトロノームさ!!」
鳴海とギイが向かったゾナハ病研究所ではゾナハ病の治療マシン『ハリー』を巡ってすでに戦いが始まっていました。
ジョージと戦っていたのはコントラバスの形をしたオートマータ、バス・ナッシュ。
バトルの展開がやけに早い…(笑)
まあテンポは良いんですけどね。ちょっと駆け足過ぎて場面のつながりとか会話の意味とか伝わりにくくないですか…?
「教えなせえよ。あんた、いってぇ何をやりたかったんで?」
ジョージが阿紫花を迎えに来る場面をカットしてるからこの阿紫花のセリフも意味分からんでしょ。
これは研究所に来る前、協力を仰ぐため阿紫花のもとを訪れたジョージが「人間だったころは人並みにやりたいことがあった」という話をしていたところから出たセリフなんです。
サハラでひどい目に遭ったからほんとは乗り気じゃなかった阿紫花が、「ジョージのやりたかったこと」に興味を持ったことで協力する気になったという経緯がありました。
そこを踏まえての「いってえ何をやりたかったんで?」ってセリフなんだけど…前の場面をカットしてしまうとなんだか阿紫花がジョージをバカにしてるセリフみたいに聞こえますね。
この二人はサハラ編の時からいろいろと粋なやりとりをしてるので結構面白いのになぁ。全然拾ってもらえない。
滑稽な最古の3人
「フランシーヌ人形がとっくの昔に消えてるのも知らずに、ニセ人形にうやうやしく仕えていたとかな…面白いんだよ、おまえ達は。『滑稽』さ。」
サハラ以来、久々の登場となった最古の人形たち。
パンタローネとアルレッキーノはそのまま修理されたけどコロンビーヌは小さくてかわいい姿になりました。
なんでコロンビーヌだけ小さくなったのか、その理由は藤田先生曰く「フェイスレスは気まぐれ。同じデザインにはしないだろうなと思った」からだそうです。
まあコロンビーヌは特に原作では勝とのやりとりが多いからバランスとるためってのもありそうですけどね。
さてそんな最古の3人、この辺りからちょっと立ち位置が変わってきます。
悪逆非道な行いをしていた彼らですが、何も知らずに主を失い滑稽だと笑われる姿はちょっぴり不憫…。
機械人形ならではの一途さとそれゆえの不憫さですね。
しかしそんな彼らに存在意義を取り戻す運命の出会いが!
「フ…フランシーヌ様!!」
フランシーヌそっくりのエレオノールと対面し、驚きの声を上げる最古の三人。
話がややこしくなってきていよいよ物語も佳境です。
コメント