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【天気の子】印象に残ったセリフやシーン、感想など

2016年の「君の名は。」から約3年、新海誠監督による長編アニメーション映画『天気の子(てんきのこ)』がついに公開されました。

本当は7/19の公開日に見たかったんですけど、仕事の都合で見られず一日遅れでの鑑賞となりました。

マチアソビ 天気の子

今年の映画の中では、伊藤智彦監督の「HELLO WORLD」と並んで注目していた作品で、マチアソビで告知看板を見たときにはワクワクしたものです。

それでは、僕の「天気の子」に対しての感想や評価について書いていきたいと思います。ネタバレもありますので、まだ映画を見ていない人はご注意ください。



総合的な感想

天気の子カタログ

「あの光の中に、行ってみたかった」
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。 

映画『天気の子』公式サイトより引用

新海作品といえば、やはり圧倒的な映像美。これに関しては今作も多くのアニメファンの期待に十分応えるものだったと思います。

ただ、物語の序盤印象的だったのは強烈な商業主義の臭い…。序盤~中盤にかけて鬱陶しいくらいに企業名や商品が主張してくるので、それが気になって物語の内容があまり頭に入らないくらいでした。

この作品は約束されたヒット作なので、制作側は利益の最大化を狙い、企業もPR戦略として有効だと判断した事でこのような形になったと思いますが…。

なによそれ、稼げるって。最初に大事なのは面白いと思えるかどうかでしょ? つまんない大人になりそう

──夏美

 

さて、肝心のストーリーについてですが、一言でいえばかなり”守りに入った”内容だったと思います。

「君の名は。」の大ヒットを受けて注目される次回作、今後アニメ映画のスタンダードになるためにも失敗は許されない中で新海監督はバーディーは狙わずパーを選択したのかな、と。

構成に関しても”RADWIMPSの歌&ダイジェスト”をふんだんに入れる「君の名は。」で成功した「映像+音楽の手法」を取り入れており、新鮮味はありませんでした。

目新しいところは全くなかったけれど不満点も特になく、映像美や劇伴によって良作(60~70点くらい?)には仕上がっていると感じました。

ラーメン屋にラーメンを食べに行ったら、きちんとラーメンを出してくれたという感じですかね。最近はラーメンを食べに行っても蕎麦やカレーを出すような制作陣が多いので、その点はさすがだなと思いました。

 

声優陣の演技については良くもなければ悪くもなくといった感じで、プロ声優を使わないアニメ映画にありがちな”映像よりも声優の下手さが気になってぶち壊し”という事はなかったと思います。

公開前に注目されていた夏美役の本田翼さんの演技は想像していたより全然良く、心に様々な思いを抱えた複雑なキャラクター夏美を本田さんは十分演じきれていたように感じました。

小栗旬さんの低めで落ち着きのある声質や枯れた感じの演技も良かったですね。僕はテレビドラマや邦画をあまり見ないので小栗さんという方がどのような役者さんなのか全く知らなかったのですが、哀愁漂う41?歳の中年男を見事に表現しているなと感心しました。

2000人以上のオーディション参加者から抜擢されたと話題になった主人公森嶋帆高(もりしま ほだか)役の醍醐虎汰朗さんとヒロイン天野陽菜(あまの ひな)役の森七菜さんについては良くも悪くも普通。「君の名は。」の神木隆之介さんと上白石萌音さんを基準に考えると厳しい評価になるかもしれませんね…。

総合的な感想としては、お金を出して何回も見たいとは思いませんが一度は見ておいて損はない作品だと思います。



印象に残ったセリフやシーン

街はひたすらに、巨大で複雑で難解で冷酷だった。でもさ、帰りたくないんだ……絶対。

伊豆諸島の一つ「神津島(こうづしま)」に住む高校1年生「森嶋帆高」は、東海汽船の大型客船さるびあ丸?に乗って10時間以上の船旅を経て都内に到着。ちなみに帆高は値段が安い(6510円)二等船室のチケットを購入しています。

神津島

神津島には約850世帯、2000人の人々が生活しています。教育施設は保育園、小学校、中学校、都立高等学校がそれぞれ一校ずつ。帆高は東京都立神津高等学校に通っていたのでしょうね。

そんなほのぼのとした島から、人口900万人を超える東京都区部で生活していく事になる帆高。10代半ばの少年は巨大都市東京の全てに困惑しつつも必死に生きていこうとするのでした。


 

「君、家出少年でしょ?」 「あ、うん、まあ……」 「せっかく東京に来たのに、ずっと雨だね」 ねぇ、今から晴れるよ

(お母さんが目を覚まして、青空の下をまた一緒に歩けますように──)

少女がそう強く願った事で手に入れた力は、たくさんの人の心を晴れやかにしていきます。

「──私、好きだな。この仕事。晴れ女の仕事。私ね、自分の役割みたいなものが、やっとわかった──」

後に少女はこの力の代償と自らの残酷な運命を知る事になるのでした…。


 

付き合う前はなんでもはっきり言って、付き合った後は曖昧にいくのが基本だろ?

「天気の子」天野凪

©2019「天気の子」製作委員会

ヒロイン天野陽菜の小学生の弟凪(なぎ)。

非常に大人びた性格で、様々な場面で帆高を助けてくれるイケメン小学生。豊富な恋愛経験に裏打ちされた的確なアドバイスで帆高の尊敬を得て、年下ながら”センパイ”と呼ばれるようになります。

女の子たちの評価も非常に高いようで、”元カノ”の佐倉カナちゃん(小学五年生 cv:花澤香菜)は凪の事を以下のように評しています。

そうだ、凪くんならばどんな時も大丈夫。彼は誰よりも苦労人なくせに、誰よりも優しくて、そして誰よりも頭が良い。それを一番良く知っているのは、私だ。

小説「天気の子」より引用

カナちゃんと”今カノ”の花澤アヤネちゃん(小学四年生 cv:佐倉綾音)とのやり取りも面白いので気になる方は是非小説を読んでみてください。

小説「天気の子」

小説「天気の子」は主人公やヒロイン以外のキャラクターの内面についても丁寧に描かれているし、村上春樹さんに影響を受けているだけあって非常に読みやすい文体になっています。

凪のセリフ自体が印象に残っているわけではありませんが、個人的にこのキャラクターかなり気に入ってます。吉柳咲良さんの声もよくマッチしていたと思います。


 

「大丈夫ですか?」 「はあ? なにがです?」 「いや、あなた今、泣いてますよ」

「天気の子」須賀圭介

©2019「天気の子」製作委員会

逃走した帆高の足取りを追うために須賀を訪ねた中年刑事安井。

短い会話の最後に須賀の頬をつたう涙が印象的だったシーンですが、なぜ須賀が泣いているのか分からなかったという人も多いはず。

須賀は安井の話から帆高が全てを犠牲にしてでも陽菜を助けようとしている事を知り、事故で亡くした妻の明日花(あすか)と娘萌花(もか)との幸せだった過去を思い出します。須賀の会社の名前は「K&Aプランニング」でしたが、「Keisuke:けいすけ」と「Asuka:あすか」が由来なんでしょうね…。

そして自分と帆高を重ね、帆高のように全てを放り投げてまで会いたい人、全てを敵に回しても会いたい誰かがいるのかと自問するのでした。

もし、もう一度明日花に会えるとしたら自分もきっと──

そのあたりの感情が涙となって溢れだしたのだと思います。

最終盤、警察に自首するよう説得していたにもかかわらず警察に捕まった帆高を須賀が助けるシーンがありますが、帆高の行動に”大人”としての須賀が感化されたわけではなく、かつての自分自身と帆高を重ねての行動だったのではないでしょうか。

その他、「人間歳取るとさあ。大事なものの順番を、入れ替えられなくなるんだよな」というセリフも印象に残っています。




あの夏の日。あの空の上で僕たちは、世界の形を決定的に変えてしまったんだ。

「天気の子」帆高と陽菜

©2019「天気の子」製作委員会

世界を犠牲にしても目の前の大事な人を取る事ができるのかという、多くのアニメやゲームの主人公たちが悩んできた選択に対して、ほとんど悩まずに答えを出す帆高。

新海監督がインタビューで「『君の名は。』の次ですから、興行的にも超メジャーなものになります。であれば、多くの人々の価値観が対立するような映画を作りたい。見てくれた誰かと誰かの価値観と価値観がぶつかるような映画でなければいけない、とも考えました」と語っていたように、この帆高の決断については賛否両論あるでしょう。

音楽を担当されたRADWIMPSの野田洋次郎さんも製作報告会見で「新海さんらしいなと思いつつ、意外性もあったんです。僕はわかりやすくマスに向けた物語を描かれるのかなと思っていたですが、すごく攻めている。この物語はきっと賛否を巻き起こすという展開が見えたし、だからこそ、新海監督のことがいっそう好きになったんです。自分のやりたいことに対して、物凄く正直な方。驚かされたし、嬉しかったです」と思いの丈を述べていました。

僕的には、両方を得る事ができないのなら、単純に目の前にいる大事な人を守る事を選べば良いと思いました。世界が救われても一番大事な人を救えなければ意味なんてないですから。”帆高の考える世界”には陽菜が絶対必要だったのでしょう。

主人公がこういう難しい選択を突き付けられているとき、いつも思い浮かぶのはテイルズオブシリーズで僕が一番好きなキャラクターロイド・アーヴィングのセリフです。

「目の前の人間も救えなくて世界再生なんてやれるかよ!」

やっぱりロイドはかっこいい…


 

雲龍図

天気の子 雲龍図

©2019「天気の子」製作委員会

最後は須賀と夏美が取材に行った神社の天井に描かれていた八百年前からある「雲龍図(うんりゅうず)」。

雲龍図は、龍が雲の間を飛ぶ様子を描いたもので禅宗の法堂の天井によく描かれています。龍は仏の教えを助ける八部衆のひとつで龍神と呼ばれている事から、法の雨(仏法の教え)を降らすという意味や火災から護るという意味が込められているそうです。

これまでたくさんの雲龍図を見ましたが、僕の知っている雲龍図はどれも龍が真ん中にどっしりと描かれているものばかりだったので最初見たときには驚きました。鯨がいますもんね。

映画を見ている最中も妙にこの絵が気になっていたんですが、スタッフロールの雲龍図のところで「山本二三」という文字が見えた気がするんです。

山本二三(やまもと にぞう)さんといえば、男鹿和雄(おが かずお)さんなどと共にスタジオジブリを支えた日本を代表する美術監督。特に”雲”の描き方には定評があり迫力のある独特の雲は「二三雲」と呼ばれています。

山本さんご自身もツイッターで背景美術に少し関わっていると「天気の子」を紹介されていたので、雲龍図でなくてもどこかの背景を描かれているのは間違いなさそうです。

さいごに

もっともっといろいろな事を書きたかったのですが、2時間近い作品のシーンを全て思い出すのは不可能…。頭の中にぼんやりとは残っているんですけど文字にするのは無理でした。

個人的名言&名シーンのまとめはこちら↓

【天気の子】個人的名言&名シーン!一言感想ネタバレ有

それにしても、こういうオリジナルの長編アニメ映画をつくるのは本当に難しいですよね。短い時間の中でキャラクターや世界観の説明をしつつ本筋へと移行しなければならず、それができなければ視聴者を置き去りにしてしまうので全く意味が分からない作品になってしまいます。

けれども、この作品は「君の名は。」同様「RADWIMPSの音楽+ダイジェスト」という手法を用い、説明部分を簡潔に、そしてスタイリッシュに表現してスムーズに本筋へ移行しているので非常に分かりやすい作品になっていると思います。

 

自分の生活に密接したものを表現したいという監督の思想からか、今作もスマホやPC等のデジタル的な要素が盛り沢山ですが、個人的には宮崎アニメのように何十年経っても色褪せない作品をつくってもらいたいという思いがあります。

今作も興行収入百億円超えを狙えると思うので、次の作品はこれまで以上に多くのものを背負う事になってしまうと思いますが、置きにいくような保守的な作品ではなく「秒速5センチメートル」のように見るものに強烈な何かを焼き付けるような作品を期待したいですね。

ブログ仲間のセシ子さんの感想漫画はこちら!

【ネタバレ有】話題のアニメ映画「天気の子」の感想漫画

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