©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回の続き…

STLの長い話が終わった後、キリトはラースに教えてもらった実験用仮想世界のコードネームを口にします。
そのコードネームは”アンダーワールド“。
アスナはそのコードネームも”児童小説のアリス”に関連しているのではないかと言います。
その理由は“不思議の国のアリス”の最初の私家版は”地下の国のアリス”であり、原題が”Alice’s Adventures Underground”だったから。

絵:ルイス・キャロル
“地下の国のアリス”の話の流れは”不思議の国のアリス”と概ね同じで”白ウサギを追ってウサギ穴に落ちた少女アリスが異世界に迷い込み様々な冒険をするという内容”です。
ちなみに”私家版”とは個人が営利目的ではなく自分のお金で出版する書物の事で、”原題”とは題名を改めたり翻訳する前の題の事。
営利目的でなかったのは、作者である”ルイス・キャロル”が知人の娘である”アリス・リデル”に送った手書きの本だったからです。
アリスという名前を聞いたキリトは何かを思い出しそうになりますが…。
もやもやした気持ちを抱えながら三人はダイシー・カフェを出ました。
二人の心
店の前で三人は別れ、キリトはアスナを家まで送っていく事になります。
アニメではキリトが不審な気配を察知していますが、小説ではシノンも粘つくような視線を感じていました…。
その後、二人が一緒に歩いているシーンになります。
アニメでは距離を置いていますが、小説では二人は手をつないで歩いています。
キリトと一緒に手をつないで歩いている間にアスナはいろいろな事を考えます。
旧SAOや須郷伸之に囚われていたALO、そしていつも自分の隣にはキリトがいてくれた事。
旧SAOの世界でキリトを殺めようとしたクラディールを自らの手で斬れなかった為に、キリトに重荷を背負わせてしまった時、「君だけは、何があろうと元の世界に還してみせる」と言ってくれた事。
そしてその時”何度でもキリトを守る、どんな世界に行こうとも“と強く思った事…。
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
このあたりの描写がアニメでは完全にカットされてしまっているのでとても残念です。
その後、痺れを切らしたかのように強めの語気(溜息もついている)でキリトに話す事を促すアスナ。
このアニメのシーンは絶対におかしいと思います。
小説では手の温もりを通して随分前からアスナはキリトが何か大事な事を打ち明けるべく逡巡している事を解っている描写があります。
けれども、アスナはそれを急かすような人間ではありませんし、心の中でこう囁いています。
“――ほら、大丈夫だよ、キリト君。いつだって、わたしはあなたの背中を守ってる。わたしたちは、世界最高のフォワードとバックアップなんだから。”と。
このあたりの演出にはとてもがっかりしました。
(アニメでは)アスナに促されたキリトは”次世代フルダイブ技術の研究の為にアメリカに行きたい“という事、そして”次の世界が生まれるところをどうしても見たい“という事を伝えました。
「うん、楽しいことだけじゃなく……つらいこと、哀しいこともいっぱいあったもんね。何のために、どこに辿り着くためにあの城に呼ばれたのか、確かめたいよね」
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
「……それを見届けようとしたら、何百年生きても足りそうにないけどな」
キリトはそう言った後、続けて”一緒にアメリカに来て欲しい“とアスナに告げます。
「もちろん、行くよ、一緒に。きみの行く所なら、どこにだって」
このシーンはよかったと思います。
アスナはキリトに言われる前から”キリトと一緒にいたい”という想いを胸の内に暖めていたので、お互いの気持ちが一緒だった時の驚きと嬉しさが同居した表情は素晴らしかったと思いました。
“きみの行く所なら、どこにだって”。ここは大きな伏線になるので丁寧に作ったのかもしれませんね。
たとえこれから、どんな世界をどれだけの年月旅しようと、二人の心が離れることは絶対にない、強くそう確信した。いや、二人の心は、もうとっくに結びついていたのだ。崩壊するアインクラッドの上空で、虹色のオーロラに包まれて消えたあの時から――もしかしたら、それより遥か以前、暗い迷宮の奥深くで孤独なソロプレイヤー同士として出会った瞬間から。
ソードアート・オンライン アリシゼーション ビギニングより
ラフコフ最後のひとり
アスナの自宅から程近い小さな公園の前に差し掛かった時、背後から甲高い男の声が聞こえました。
「あーすみませぇん。あのー駅はどっちのほうですか?」
アスナが男に道を教えようとした瞬間、キリトはぐいっとアスナの肩を引きました。
「おまえダイシー・カフェのそばにいたな」
「やっぱ、不意打ちは無理か」
「ヘイ、ヘイ、そりゃあないよキリトさん……って、あっちじゃいつもマスク被ってたっけな」
その瞬間キリトは男の正体に気づきました。
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
男の正体は、殺人ギルド”ラフィン・コフィン”のメンバーで、リーダーのPoHや赤目のザザと一緒に行動していた”ジョニー・ブラック”こと”金本敦”でした。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
旧SAO時代の愛剣エリュシデータの柄があった場所を無意識に掴むキリトですが、当然ながらそこは何もない空間でした。
目の前に何度も命のやりとりをした殺人鬼がいたとしたらその時の記憶が蘇っても無理はないのかもしれません。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
剣を持っていない事を揶揄されたキリトは金本に尋ねます。
「おまえだって、得意の毒武器はないんだろ?」
「あるよー、毒武器あるよぉー」
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
金本が取り出したのは、”死銃事件”で何人もの人間を死に至らしめた筋弛緩剤”サクシニルコリン”の入った注射。
キリトは注射を見た瞬間、後ろに右手を突き出し、アスナに逃げるよう促します。
しかし、鋭い圧搾音が聞こえた瞬間、アスナの目に凄絶な光景が…。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトが右手で握った傘の石突は金本の太腿深くまで刺さり、金本が持った死銃はキリトの左肩に押し当てられていたのです。
同時に倒れる二人。
アスナの悲壮な叫び声で第一話は終わります。
とてもとても長い第一話でした。
小説約180ページ分を48分で表現するという無謀な挑戦だったと思いますが、スタッフの方たちは苦心しながら頑張って作りあげたと思います。
ただ、作画に関しては動きのある部分はよかったと思うのですが、顔の表情等細かい部分は少しがっかりしました。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
全体的に表情に乏しかったうえに、シーンに似つかわしくない表情のまましばらく静止していたり…。
前作のソードアート・オンラインⅡでは顔の表情等にとても力を入れて作っていたと思うので、かなり落ちたなという印象。
©2014 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAOⅡ Project
SAOⅡの十四話のシノンと子供の会話なんて二人の表情だけで泣いてしまうくらい素晴らしかった。
最近のアニメは派手な戦闘シーンだけをもって”作画が良い”と言われがちですが、僕は顔の表情等細かな部分に気を配っている作品の方が好きですし、素晴らしいと思います。
いろいろと愚痴ってしまいましたが、トータル的にはとても面白かったです。
金本を担当している逢坂良太くんの演技なんかも気合い?が入っていてとても面白かったですし。
逢坂くんにしては随分なチョイ役だなと思いましたが、そういえば一期のジョニー・ブラックから彼だったので当たり前の配役なんですよね(笑)良いものを見られました!
作品のラストではOPも流れましたね。とても素晴らしかったと思います。
皆好きなシーンがあったと思うのですが、僕が気に入ったシーンはここです。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
これから毎週アリシゼーションが見られると思ったらワクワクが止まりません。
第二話のタイトルは”悪魔の樹”。本当に楽しみです。


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