©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回の続き…

少女の支配権を確立し、アドミニストレータを消滅させるために攻撃を仕掛けたカーディナル・サブプロセスでしたが、《肉体への適応》という弱点を突かれ命からがら大図書室に逃げ込むことに。
アドミニストレータと戦い実質的に敗れたカーディナルは、以来二百年ひたすら観察と思案のみを積み重ねることになります…。
最古の整合騎士ベルクーリ・シンセシス・ワン
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大図書室に逃げ込んだカーディナルは、次第に小さな女の子の肉体にも慣れ、神聖術だけではなく、間接・直接戦闘においてもアドミニストレータとの差はほぼなくなりました。
さらに、大図書室の性質を活かした奇襲攻撃も可能と判断し、前回の惨めな敗走を挽回してアドミニストレータに逆襲の一撃を見舞う方策を練ります。
しかし、アドミニストレータはカーディナルの企てを的確に察知し、速やかに対抗策を講じました。
それは、カーディナルにも対抗し得るほどの権限と装備を持った忠実な護衛をつけること。
アドミニストレータは紫色の三角柱のオブジェクト《敬神(パイエティ)モジュール》を対象の額中央に埋め込むことで、己と教会に絶対の忠誠を誓い、人界の現状維持のみを目的として行動する超戦士を作りだしたのです。
その超戦士こそが、世界のあらゆる乱れを正し、整合性を保ち、万物を教会の支配のもとに統合する者《整合騎士(インテグレータ)》でした。
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そして、忠実な護衛第一号として選ばれたのは、《不世出の剣士》と呼ばれながら教会の支配を嫌って仲間たちとともに辺境に流れ、自ら村を開拓した豪傑ベルクーリでした。
ベルクーリは物語の序盤によく出てきた昔話の中の人物で、数々の武勇譚を残した英雄でしたね。

最古の整合騎士《ベルクーリ・シンセシス・ワン》が誕生した瞬間です。
ラースの負荷実験
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その後、アドミニストレータがベルクーリ以外にも数名の整合騎士を完成させたことで、カーディナルの奇襲が成功する確率は限りなく低下してしまいました。
カーディナルが取れる唯一の策は”協力者を得ること”。
協力者の条件は、禁忌目録を破れるほどの高い違反指数を持ち、直接戦闘能力及び神聖術行使権限が整合騎士に及ぶことでしたが、そう容易く見つかるはずもなく…。
カーディナルは協力者を探すため、全世界に監視ユニットを放ちます。
その中のひとつが約二年間キリトの髪の中を定位置にしていた最古の蜘蛛型監視ユニット《シャーロット》だったのです。
僕がアリシゼーション編で、カーディナルに次いで二番目に好きなシャーロットがついに姿を現しました。
シャーロットは優しくて思いやりがある大好きなキャラクターです。
原作小説ではアニメでカットされたザッカリア剣術大会編の冒頭部分に、シャーロット視点でのちょっとした話がありますが、彼女の優しさが伝わってくる素敵なシーンなので未読の方は是非。
カーディナルは二百年以上もシャーロットらを使って、特異な事象の噂話をキャッチしては、その発生源の人間を観察させることを延々と繰り返しましたが、上手くはいきませんでした…。
時間が経過する毎にアドミニストレータは着々と守りを固め、カーディナルはそれに反比例するように望みを失っていきます。
自らの魂の核に焼き付けられた《メインプロセスの過ちを正せ》という行動原理を恨み、生の輝きは去り、言葉遣いすら変わってしまう徒労の日々を過ごす中で、カーディナルはあることを考え続けました。
なぜ、この世界を作った外界の神たちは、偽りの神アドミニストレータの専横を放置しているのかと…。
何百年にも亘る時間と、カーディナル・システムに内蔵されたデータベースからカーディナルが推測したのは“真の神たるラースはこの世界の人間たちの幸福な営みなど望んでいない”ということでした。
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人間たちの幸福を望んでいないどころか、巨大な万力でゆっくり締め上げて、人間たちがどのように抗うのかを観察するためにのみこのアンダーワールドは存在するのではと…。
カーディナルの推測どおり、ラースはこの世界の住民の幸福など望んでいません。
ラースの目的は”人を殺せるAIを作ること”であり、そのためにこれまでも幾度となく《過負荷試験》を行っています。

カーディナルは近年、人界の辺境地帯で起こった流行り病や危険な獣の跋扈、作物の不作などは《負荷パラメータ》の増大が引き起こした現象であると結論付けていました。
そして、これらの負荷実験の最終フェーズが訪れるとも。
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カーディナルの言う最終フェーズとは、人界の外《ダークテリトリー》の闇の怪物たちが人間たちの領土に攻め入り、暴虐の限りを尽くすことです。
アドミニストレータも当然そのことを知っていましたが、自らと整合騎士のみで闇の怪物たちを撃退できるとタカをくくっていました。
しかし、カーディナルはそれを不可能だと言い切ります。
理由は人界側の絶対数が少なすぎるというものでした。
本来、ラースの計画では人間界にも闇の怪物たちに対抗し得る強力な軍隊が編成され、現在のような見かけ倒しではない実戦的な剣法や集団戦術が編み出されるはずだったのです。
しかし、圧倒的な力を持つ整合騎士が絶え間なく侵入してきていたゴブリンたちを一掃していたことで、本来経験値を得られるはずだった一般民たちがまったく戦闘を経験しないまま数百年が経過してしまいました。
その結果、安寧という名の停滞に浸り、剣士たちは型の見映えばかりを追求し、軍隊の指揮官になるはずの貴族たちは贅沢にうつつを抜かし怠惰な生活を送ることに…。
これでは強力な闇の怪物を相手にまともに戦うことなどできません。
カーディナルの出した結論
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「わしは……わしは、世界の終末を仕組んだラースを、そんな神を断じて認めぬ!」
カーディナルは、たとえキリトたちが協力してくれてアドミニストレータを倒したとしてもこの世界が辿る運命は変えられないと言います。
大量の血に塗れた世界の終末こそラースが意図したもの…
それを知ったカーディナルは長い時間をかけて考え抜いた末決断します。
アンダーワールドを、人界も、ダークテリトリーも、全てまとめて無に還すと…。
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カーディナルの計画はアドミニストレータを排除してカーディナル・システムとしての権限を回復した後、ライトキューブ・クラスターに保存されている全て(人界・ダークテリトリー問わず)のフラクトライトを削除しようというものでした。
カーディナルは人界だけではなく、”世界”の調停者。
カーディナルはダークテリトリーの怪物たちが望んで怪物になったわけではなく、人間と同じフラクトライトに殺戮と強奪の行動原理を付加されてラースにより作られた存在であることも当然理解していました。
闇の軍団が人界に攻め込んでも、逆に人界側がダークテリトリーに攻め込んだとしても、結果は血まみれの結末…それは、世界の調停者であるカーディナルにとって耐えがたい苦痛。
そして、それを仕組んだラースを許すことができなかったのです。
もちろん、いきなりこのような破滅的な最期を望んだわけではなく、人界とダークテリトリーが無血融和し、この世界そのものがラースの手から永遠に逃れ、独自の歴史を綴ることが最上の道という理想は持っていました。
しかし、それが実現不可能な絵空事だということもカーディナルは十分理解していたのです…。
次回につづく…


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