©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトとユージオは、エルドリエを援護すべく駆け付けた整合騎士デュソルバートの攻撃により、危機的状況に陥ります。そんな二人を救ったのは、カーディナルと名乗る小さな女の子でした。
この賢者カーディナルは、二人に対してこの世界の全てについて語り始めます…
第十三話も第十二話と同様、多くの内容がカットされた回となりました。
一話にまとめる必要があったとはいえ、もう少し工夫の余地があったのではないか、とも思いますが、最善をつくした結果なのでしょうね…。
では、アニメで省略された部分の補足を中心に、いつも通り気ままに書いていきたいと思います。
第十三話「支配者と調停者」のあらすじと感想①
支配者アドミニストレータの施策と影響
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
アドミニストレータは、アンダーワールドの人々を永遠に無知で素朴な、教会の忠実な信者にするために、以下の施策を実行しました。
- 大貴族四人を皇帝の座に就け、人界を東西南北の四帝国に分割。
- 央都セントリアを東西南北に分断する「不朽の壁」を神威をもって一瞬で出現させる。
この行為には以下の二つの目的がありました。
a) カーディナル・システムの力を住民に見せつけ、巨大な畏怖を刻み込む
b) 心理的障壁と物理的障壁によって、民の移動と交流を制限し、情報の伝達経路を教会が掌握することで人心をコントロールする - 開拓民らの居住地域を制限するために、以下のような大型地形オブジェクトを配置。
・割れない巨岩
・埋められない沼
・渡れない激流
・倒せない巨樹 など
アドミニストレータの施策により、アンダーワールドには平和ではあるものの停滞した時代が続きます。
その結果、民衆は徐々に進取の気性を失っていき、貴族たちは怠惰な生活に耽るようになりました。
さらに、かつての剣士たちが磨き上げた剣技は、型にこだわるだけの見世物の演武に成り下がったのでした。
アドミニストレータに起こった異変
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
クィネラがアドミニストレータとなってから70年後、彼女は自らに異変が起きていることを自覚します。
短時間ではありますが意識が途絶えたり、数日前の記憶を思い出せなくなったりすることがあり、さらには使い慣れたはずのシステム・コマンドを忘れてしまうなど、看過できない現象が次々と起こり始めたのです。
アドミニストレータが直面したのは、記憶を保持するための領域の容量、言い換えれば魂のデータ容量(魂の寿命)の限界でした。
これは天命や容姿の回復のように操作できるステータス数値ではなく、まさに避けることのできない絶対的な寿命のようなものだったのです。
如何なアドミニストレータでも、この問題は解決不可能に思われました。しかし、彼女はやがて、ある悪魔的な解決方法を思いつくのでした…。
シンセサイズの秘儀と女の子の魂の強奪
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
およそ200年前、一人の女の子が家具職人の家庭に生まれました。彼女はランダムパラメータの偶然の結果として、周囲の人々よりもわずかに高い権限レベルを持っていたのです。
その女の子は、権限レベルの高さゆえに教会に見出され、修道女見習いとして神聖術を学ぶことになりました。そしてある日、彼女はアドミニストレータによってセントラル・カセドラルの最上階にある居室へと連れてこられます。
アドミニストレータの目的は、この女の子のフラクトライトに、自らの思考領域と重要な記憶を上書き複写すること。
これは、記憶容量に余裕のある若い魂を乗っ取り、複製が完了したことを確認してから、摩耗した自身の現在の魂を破棄するという、周到かつ慎重な計画だったのです。
アドミニストレータは、綿密に計画し準備した “魂と記憶の統合” を意味する悪魔の儀式、「シンセサイズの秘儀」によって、ついに女の子のフラクトライトの強奪に成功しました。
しかし、女の子に乗り移り、それまでの自分を処分しようとした瞬間、予期せぬ事態が起こりました。
同等の権限を持つ神が二人存在するその一瞬こそが、アドミニストレータの計画における致命的な欠陥だったのです。
カーディナル・サブプロセスの覚醒
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「わしは……わしは、その時をひたすらに待っておった……七十年の長きにわたってな!」
カーディナル・システムの特徴は、人間による修正やメンテナンスを必要とせずに長時間稼働できることにあります。
この特徴を実現するため、システムは以下の二つのコアプログラムを有しています
- メインプロセス:世界のバランスを制御する機能
- サブプロセス:メインプロセスのエラーを訂正する機能
クィネラが誤って自らの魂に刻み込んでしまったのは、二つの重要な命令でした。
一つはカーディナル・メインプロセスに与えられた「世界を維持せよ」という命令、もう一つはカーディナル・サブプロセスに与えられた「メインプロセスの過ちを正せ」という命令です。
これら両方の命令が、意図せずしてクィネラの魂の一部になりました。
結論から言えば、現在キリトと会話をしているカーディナル、すなわちその小さな女の子の姿をした存在は、実はメインプロセスのエラー訂正機能を担う「カーディナル・サブプロセス」だったのです。
サブプロセスは、クィネラとの融合後に人格を持つようになり、以来70年間、クィネラの “影の意識” として存在し続けてきました。
この状態は人間でいう多重人格に似ており、サブプロセスの思考が表面化できるのは、アドミニストレータの意識がわずかに緩む瞬間だけでした。
アドミニストレータの過ちとサブプロセスの反抗
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「サブプロセスであるわしは、奴の心の奥底でこう考えていたこの女の《過ち》を正さねばとな」
アニメでは全く触れられていませんが、カーディナル・サブプロセスがどうしても許せなかった「過ち」というのは、アドミニストレータが “自らの手で直接プレイヤーに危害を加えたこと” を指します。
原作における、キリトとカーディナルの会話は以下のように展開されています。
「ならば問うぞ。かつて別の世界でおぬしの知っていたカーディナル・システムは、ただの一度でも、自らの手で直接プレイヤーを害したか?」
「い……いや、それはなかった。確かに、プレイヤーの究極の敵ではあったけど……理不尽な直接攻撃はなかったよ、すまない」
ソードアート・オンライン12アリシゼーション・ライジングより
カーディナル・サブプロセスが最も許せなかったのは、アドミニストレータが自ら定めた禁忌目録に疑問を抱いたり、反抗的な態度を示す人々に対して、死をも上回る残酷な刑罰を科したことです。
アドミニストレータは、住民の不可視パラメータの一つを利用していました。
それは「違反指数パラメータ」と呼ばれるもので、法や規則を順守する度合いを発言や行動の分析によって数値化したものです。
彼女は、この値が高い者を選び出し、フラクトライトを直接操作するという危険な術式の実験台にしたのです。
この冷酷な人体実験の犠牲となった住民の多くは悲惨な結末を迎えました。彼らは人格そのものを喪失し、ただ呼吸をするだけの存在へと成り果ててしまいました…。
サブプロセスは、アドミニストレータという存在自体が巨大なエラーであると判断。そのため、幾度となくアドミニストレータを消去しようと試みたのです。
その方法として選んだのは、自ら命を絶つことでした…。
サブプロセスは、思考プロセスの表面に浮上できたわずかな時間を利用して、以下のような壮絶な行為を試みました。
塔最上階からの飛び降り:3回
心臓へのナイフ刺突:2回
神聖術による自己攻撃:2回
しかし、これらの試みはいずれも失敗に終わりました。
自らを消滅させようとするサブプロセスの行動を危険視したアドミニストレータは、自身に精神的動揺がある時にのみサブプロセスが表面化することに気づき、自らのフラクトライト内にある、情緒を司る情動回路を封鎖(魂の一部を破壊)します。
この行動の結果、サブプロセスは魂の片隅に完全に封じ込められてしまいました。
そして、記憶を上書きされた少女の中で再び目覚めるまでの長い間、表面に現れることができなくなってしまったのでした。
次回につづく…
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