©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
リーナとゴルゴロッソのそれぞれの傍付き錬士を経て進級したキリトとユージオの2人は、高等錬士の内上位12人の上級修剣士に無事任命されます。
そして、キリトにはロニエ・アラベル、ユージオにはティーゼ・シュトリーネンという2人の傍付き錬士が付くことになりました。
ここまでが前回第八話のお話でした。それでは、第九話「貴族の責務」の感想や補足などを気ままに書いていきたいと思います。
第九話「貴族の責務」のあらすじと感想①
剣に込める思いの重要性とユージオの決意
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
――この世界では、剣に何を込めるのかが重要なんだ。
ユージオにアインクラッド流の剣術を教える時、キリトはよくそう口にしました。
また、相手の秘奥義とこちらの秘奥義を競り合わせた時、最後は “剣に込められた思いの強さ” が戦いの行方を左右するのだとも語っていました。
ウォロ、ゴルゴロッソ、リーナ先輩、ライオス、ウンベールはそれぞれ、剣に込める思いが異なります。
ウォロは名家の誇りと重責を、ゴルゴロッソは鍛え上げられた鋼の肉体から生み出される自信を、リーナ先輩は研ぎ澄まされた技の冴えを、そしてライオスやウンベールは上級貴族の自尊心を、それぞれ剣に込め、重さに変えているのです。
――僕は何を剣に込めればいいんだろう。
貴族でも剣士でもないユージオが持っているものは、ルーリッドの森で何年もの間ギガスシダー相手に斧を振るった経験と、8年前に公理教会に連れ去られた幼馴染のアリス・ツーベルクを取り戻したいという強い思いだけでした。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ライオスとウンベールの挑発
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
初等錬士の頃は、混み合う大修練場や野外稽古場で剣を振るっていましたが、上級修剣士になった今は状況が変わりました。
寮に隣接する専用修練場が与えられ、時間を気にすることなく好きなだけ練習に打ち込めるようになったのです。
ユージオは、日課である “丸太への左右からの上段斬り合計400本” を済ませると、手ぬぐいで額に浮かぶ汗をぬぐいました。
「おや、ユージオ修剣士は丸太を叩いただけで型の稽古はしないようだぞ」
「聞けばユージオ殿はどこぞの田舎で木こりをしていたそうな。丸太相手の技しかご存知ないのかもしれませんな」
主席上級修剣士のライオス・アンティノスと次席のウンベール・ジーゼックが、聞こえよがしに言いました。
第八話の「上級貴族は決して平民に何かを売ったりは~」の部分でもそうでしたが、この二人は本当に煽るのが上手いですね(笑)
アニメでは特に触れられていませんが、ライオスたちはユージオとキリトが二人でいる時には、以前のようにちょっかいを出さなくなりました。
その理由は、自分たちが引きちぎったはずのゼフィリアを復活させたキリトを気味悪がっていたから。
剣の練習はいつもは二人で行っていたのですが、あいにくこの時はキリトが翌日の学科試験の勉強のために部屋に籠っていました。
――いつもながら、キリトがいない時だけずいぶん元気だね、ライオス君。
ユージオは、ライオスとウンベールのわざとらしいやり取りを聞きながら、胸中でそう言い返しました。
「これはしたり。そのような事情があるのなら、同じ寮で修練する者として、せめて型のひとつなりとも教示差し上げるべきだったかな」
「どうかな、ユージオ殿。ライオス殿のお言葉に甘えて、指導を受けていっては?このような機会、二度とはないぞ」
普通の世界ならこんな馬鹿馬鹿しい会話に付き合う必要はありませんが、このアンダーワールドでは事情が異なります。
こんな風に話しかけられたとしても、無視して歩き去ってしまえば “逸礼行為” に該当してしまうのです。
もっとも、逸礼行為に該当したとしても、同じ上級修剣士を懲罰の対象にすることはできません。しかし、学院管理部に苦情を出されては面倒なことになります。
ユージオはそれらも考慮して、ひとこと「お気遣いなく」と言って立ち去ろうとしました。しかし、学院で一番目と二番目に強いライオスとウンベールの力を、来月の検定試合の前に知っておきたいと考え直したのです。
検定試合の重要性と整合騎士への道
検定試合についてはアニメでは完全にカットされているので、少し説明しましょう。
上級修剣士になるには、まず一年次最後の総合試験で、120人いる初等錬士の中で上位12人に入る必要がありました。
もちろん二人は1位と2位の独占を目指したのですが、教官相手の検定試合、型の演武、神聖術の試験の結果、ユージオは5位、キリトは6位に終わってしまったのです。
ユージオの目標である整合騎士になるには、人界最高峰の剣技大会である「四帝国統一大会」での優勝が必要不可欠でした。
そのためにも、まずは学院を序列1位と2位で卒業し、「帝国剣武大会」の出場権を獲得しなければならなかったのです。
年4回行われる「検定試合」が、その序列を決める重要な機会となります。
上級修剣士は検定試合で相手に勝てば序列が上がるシンプルな方式が採用されているため、是が非でも負けられない真剣勝負なのです。
ユージオとウンベールの立ち合い
「それではお言葉に甘えて、一手ご教授願えますでしょうか」
「次席たるウンベール・ジーゼック殿の高貴なる剣を、我が身に直接ご指導頂ければと」
このシーンは少し複雑なんです。
ユージオが一手ご教授と言った時、原作でのウンベールのセリフは以下の通り。
「もちろん構わんとも!それでは早速、そこで型を披露してみたまえ。そうだな、まずは簡単なところから、《猛炎の型・三番》あたりを……」
ライオスとウンベールは、ユージオの剣の型を指導してやるつもりでした。間違いなくユージオの型を馬鹿にするつもりだったでしょうが、一応見てあげるというのが人工フラクトライトらしい対応ですね。
それに対してユージオは、型の講評ではなく試合形式での指導を希望し、なおかつ相手としてウンベールを指名しました。
「……なんだと?」
ウンベールの顔に浮かんだのは、ユージオの真意を探るような疑念と、獲物を爪でなぶるかのような猛獣の残忍さでした。
ウンベールの秘奥義「雷閃斬」とユージオの対応
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「よかろう。我が剣技をユージオ修剣士に披露しようではないか」
ウンベールは腰帯に差していた白金樫の木剣を大仰な動作で抜き放ちました。
「では、参るぞ!ハイ・ノルキア流の真髄……その身を以て学ぶがよい!」
ウンベールは両足を前後に大きく開き、右手だけで握った剣を肩に担ぐようなモーションをとります。
直前の言葉に反して、彼が放とうとしているのはノルキア流の秘奥義「雷閃斬(ライセンザン)」でした。
ウンベールが両手持ちで上段から放つハイ・ノルキア流秘奥義「天山烈波(テンザンレッパ)」を使わなかったのは、単に出し惜しみをしているだけのようです。
ウンベールの秘奥義に対し、ユージオは全く動揺を見せずにアインクラッド流の「スラント」で対抗しました。
ユージオが放ったスラントは、ウンベールの雷閃斬と空中で激しく衝突。
ここからは単純な力比べになり、どちらかの剣が数センチでも押し戻された時点で秘奥義が終了し、弾き飛ばされてしまいます。
――力比べになれば、僕の方が上だ!
ギガスシダー相手に毎日重い斧を2000回も振り、学院に入ってからもゴルゴロッソに鍛えられたユージオは、腕力では負けていないという意を強くします。
ユージオは、上級貴族が「田舎剣術」と蔑むバルティオ流の腕力と臨機応変のアインクラッド流を併せ持つことで、どんな状況からでも鍔迫り合いに持ち込める自信がありました。
ゴルゴロッソとキリトの指導によって磨かれた力と技があれば、相手が高等貴族であろうと決して負けはしないと確信を胸に、ユージオはウンベールを押し込んでいきます。
上級貴族の自尊心が生み出す力
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「平民が……調子に……乗るな!」
その瞬間、ほとんど消えかかっていたウンベールの剣の光が、どす黒い色合いを帯びて復活しました。
――この力は何だ!?
今まで押し込んでいた距離を一瞬で取り返され、逆に押し込まれるユージオ。
キリトが言っていた《自尊心の生み出す力》を目の当たりにし、日々の鍛錬をくつがえすほどの威力に驚きます。
引き分けに終わった因縁の対決
――技を切り替えるんだ!
ユージオは右手首を返し、ウンベールの剣を右側面で受けながら、アインクラッド流の「バーチカル」を発動します。
ユージオ自身も知らなかった秘奥義から秘奥義への繋ぎに目を剥くウンベール。
ユージオが放ったバーチカルの威力は凄まじく、ウンベールは体ごと浮かび上がり、後方へ3メートル以上も吹き飛ばされてしまいました
「そこまで。この立ち合いは引き分けとする」
ユージオが追撃すれば確実に一本取れる状態でしたが、ライオスの声で動きを止めました。
ユージオ対ウンベールの立ち合いは、ユージオが優勢ながらも引き分けという結果に終わったのです。
次回につづく…
コメント