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【SAOアリシゼーション】第一話④空想技術こそSAOの真骨頂

ダイシー・カフェ キリト、アスナ、シノン

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

前回の続き…

【SAOアリシゼーション】第一話③アニオリGGOとダイシー・カフェ

三人(アスナは後で合流)はエギルの店”ダイシー・カフェ”で待ち合わせし、シノンの話を聞く事になります。

シノンの話は早々に終わるのですが、ここから本作品の核となる空想技術”ソウル・トランスレーター“等の難解な話が続きます。

アニメではこのダイシー・カフェでの時間をわずか10分程度で描いていますが、小説ではなんと60ページ以上を費やしているのです。

短い時間で複雑かつ難解な技術を説明する必要があったので、脚本家も大変だったとは思いますが、話の内容が前後したりしてキャラクターが言いたい事が僕たちに誤って伝わっている可能性が考えられるシーン等もありました。

それでは僕なりに理解している事を補足として入れながら書いていきたいと思います。



シノンの頼みごと

“ソウル・トランスレーター”について書く前に…まずはシノンがキリトやアスナを呼び出した理由について語るシーンから見ていきましょう。

シノンがキリトを呼び出した理由はBOB(バレット・オブ・バレッツ:GGOの最強者決定バトルロイヤル大会の事)の事についてでした。

簡単にいうと、シノンはBOB第一回、第四回大会で優勝した”サトライザー”というプレイヤーを倒す為にキリトに協力を仰ぎたかったのです。

シノンはBOB大会で優勝した経験もある程の強プレイヤーでしたが、サトライザーには手も足も出ず完敗した模様。結果、第四回大会では準優勝でした。

アニメではシノンがサトライザーの強さについて「行動を完璧に先読みされて、超接近戦に持ち込まれて、銃を構える暇もなく死亡」と語っています。

これはシノンだけではなく、他のベテランプレイヤーも同様。

小説ではさらに詳しく書かれており、まずは他のプレイヤーが当然のように武装しているなかサトライザーは”軍隊格闘術”スキルを頼りに素手でスタート。

軍隊格闘術といえばロシアの”システマ”や”コマンドサンボ”、アメリカの”アメリカ陸軍格闘術”、イスラエルの”クラヴ・マガ”等が有名ですね。近接戦闘で相手を殺傷する事を目的とする危険な格闘術です。

その軍隊格闘術スキルで最初のターゲットを不意打ちによって倒し武器を奪うと、同じ要領で次々とプレイヤーたちを倒し、最終的には驚異的な先読み能力によってシノンにも圧勝して優勝。

シノンはサトライザーの先読み能力をデータや経験に基づいた予測などではなく、プレイヤースキルの範疇を越えた…他人の心そのものを読み取る力…と評しています。

シノンの考えでは、ベテランプレイヤー程データや経験を頼りに特定のパターンに当てはまった行動をとってしまい、そこをサトライザーに読まれているので、セオリーにない行動をするキリトならサトライザーの裏をとれるかもしれないという事でした。

アニメではシノンに協力を依頼されたキリトは何も言わずに了承した感じになっていますが、小説では依頼を聞いた瞬間仰け反るキリトに対して例の貸しを持ち出して追い打ちしています。

キリトにエクスキャリバーを渡すシノン

©2014 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAOⅡ Project

シノンの貸しといえばもちろんこれ。ALOのイベントでシノンのおかげで手に入れた聖剣エクスキャリバーの事です。

この話を持ち出された時点で勝負ありですね。

それからシノンはキリトだけではなくアスナにも協力を依頼しており、アスナもそれに了承しました。

この三人のシーンで印象的だったのは…

キリト心電図モニター心拍数HR63

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

アスナがキリトに埋め込まれた生体センサーのデータをアプリで共有しているシーン。

HR63とありますが、これは”heatrate”心拍数の事です。

小説では脈拍と書いてあったのでP(pulse)ではと思いましたが、基本的に同数値になるので問題はないのかもしれません。

この生体センサーデータでは心拍数(HR)と体温(Temp)が分かるようです。

「キリト君の心臓が動いてるって思うと、こう……ちょこっとトリップしちゃうって言うか……」

このアスナのセリフは少しあぶない人みたいですね(笑)

ただ、僕はやっぱり旧SAO世界初期の少し尖がったアスナが好きですね。もちろん今のアスナが本当のアスナだとは思いますが。



ソウル・トランスレーションテクノロジー

ソウル・トランスレーター(Soul TransLator)

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

ここからの話題は、キリトがここ数日間していたアルバイトの話へと移ります。

シノンがどうせ新しいVRMMOのαテストだろうとキリトに問いかけると、キリトはテストしているのはゲームアプリではなく、新型フルダイブ・システムのBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)そのものだと答えます。

BMIとは脳波等、あるいは逆に脳への刺激等の手法によって脳とコンピューター等とのインタフェースをとる機器等の総称です。

簡単にいえばキリトたちの世界のナーヴギアやアミュスフィア、メデュキュボイドのようなハード面ですね。

この新型BMIを開発しているのは”ラース“という企業との事。

“ラース”と聞いて僕が連想するのは鋼の錬金術師に登場する”キング・ブラッドレイ”ですが、アスナは”不思議の国のアリス”の続編である“鏡の国のアリス”の中の”ジャバウォックの詩”に出てくる空想上の生き物を連想したようです。

小説では「RATH、と書いて《ラース》」と書かれているのでそれなら合点がいきます。憤怒のラースの綴りは”wrath”なので。

 夕火あぶりの刻、粘滑ねばらかなるトーヴ
 遥場はるばにありて回儀まわりふるま錐穿きりうがつ。
 総て弱ぼらしきはボロゴーヴ、
 かくて郷遠さととおしラースのうずめき叫ばん。
 
 『我が息子よ、ジャバウォックに用心あれ!
  喰らいつくあぎと、引き掴む鈎爪!
  ジャブジャブ鳥にも心配るべし、そしてゆめ
  燻り狂えるバンダースナッチの傍に寄るべからず!』
 
 ヴォーパルのつるぎぞ手に取りて
 尾揃おそろしき物探すこと永きに渉れり
 憩う傍らにあるはタムタムの樹、 
 物想いに耽りて足を休めぬ。 
 
 かくてぼうなる想いに立ち止まりしその折、 
 両のまなこ炯々けいけいと燃やしたるジャバウォック、 
 そよそよとタルジイの森移ろい抜けて、 
 めきずりつつもそこに迫り来たらん! 
 
 一、二! 一、二! 貫きて尚も貫く 
 ヴォーパルのつるぎが刻み刈り獲らん! 
 ジャバウォックからは命を、勇士へは首を。 
 彼は意気踏々いきとうとうたる凱旋のギャロップを踏む。 
 
 『さてもジャバウォックの討ち倒されしはまことなりや? 
  我がかいなに来たれ、赤射せきしゃ男子おのこよ! 
  おお芳晴かんばらしき日よ! 花柳かな! 華麗かな!』 
 父は喜びにクスクスと鼻を鳴らせり。 
 
 夕火あぶりの刻、粘滑ねばらかなるトーヴ
 遥場はるばにありて回儀まわりふるま錐穿きりうがつ。
 すべて弱ぼらしきはボロゴーヴ、
 かくて郷遠さととおしラースのうずめき叫ばん。

引用:wikipedia-ジャバウォックの詩

詩は”ジャバウォック”と呼ばれる正体不明の怪物が名前のない主人公によって打ち倒されるという内容で、アスナ曰く、ラースは豚という説と亀という説があるとの事です。

ルイス・キャロル (著), 河合 祥一郎 (翻訳)

そのラースが次世代型のフルダイブ機を発売するのかとシノンが問うと、キリトは現行のフルダイブ技術とはかなり別物と答えます。

次にシノンはキリトがプレイしていた世界についてどのようなものだったのかを聞きますが、キリトが放った言葉は「知らないんだ俺。機密保持のためなんだろうけど、そのマシンが作るVRワールド内部の記憶は、現実世界には持ち出せないんだ」でした。

その事を聞いて驚くアスナとシノンは一斉に様々な質問をキリトにぶつけます。

「じゃあ、大本のところから解説しようか。問題の……”ソウル・トランスレーションテクノロジー“について」

ここから本作の根幹をなす空想技術”ソウル・トランスレーター“の解説が始まります。

フラクトライト

「二人とも、人間の心ってどこにあると思う?」

キリトは誰しも一度は考えた事がある疑問をアスナとシノンに問いました。

シノンは脳と答えますが、キリトは脳=脳細胞の塊と表現し、さらに脳細胞のどこに”“は存在するのかと続けます。

答えあぐねるシノンに、脳細胞を含めた細胞にはその構造を支える骨格があり、その名称が”マイクロチューブル“と呼ばれている事、さらにマイクロチューブルはその名前のとおり超微細な中空の管になっていて、その中は空っぽではなく封じ込められているものが存在するとキリトは話します。

封じられているものは”光””光子の揺らぎ”。そしてラースによればそれこそが人間の心との事

アスナはその”光”の集合体が人間の魂なのかと問いますが、キリトはうなづいた後にその人間の魂かもしれないものをラースでは”フラクトライト“と呼んでいると答えます。


皆さんはこの短い説明で”フラクトライト”について理解できましたか?

この部分に関してはとてもよくまとまっていて、深く理解しようとしなければすんなり頭に入ってくると思います。

アニメは様々な人が見るので基本は簡単にそして簡潔に分かるように作りますから。

けれど、小説ではこれこそがソードアート・オンラインだと言わんばかりに深く説明してくれています。

ちなみに“フラクトライト”は”Fluctuating Light”の略

脳の説明の部分では、細胞核や細胞体、樹状突起や軸索等、生物の授業を思い出させる用語の数々を持ち出したり、”人間の心”と類似性があるからと”インターネット”を例に出して説明してみたりと、なんとか僕たちに理解してもらおうとしてくれているのがよく分かります。

さらに”マイクロチューブル”の中に”人間の心”があるという部分はSAOのオリジナルではなく一応の根拠を提示しています。

それは”量子脳力学“と呼ばれる理論。

小説ではイギリスの学者が提唱したと書かれていますが、今年亡くなった天才科学者”スティーヴン・ホーキング”氏と共に”ブラックホールの特異点定理”を証明し、”事象の地平線”の存在を唱えた”ロジャー・ペンローズ“氏の事だと思います。

「脳で生まれる意識は宇宙世界で生まれる素粒子より小さい物質であり、重力・空間・時間にとらわれない性質を持つため、通常は脳に納まっている」が「体験者の心臓が止まると、意識は脳から出て拡散する。そこで体験者が蘇生した場合は意識は脳に戻り、体験者が蘇生しなければ意識情報は宇宙に在り続ける」あるいは「別の生命体と結び付いて生まれ変わるのかもしれない。」

ペンローズ氏が臨死体験の関連性について述べている上の文章を読めば”人の心はマイクロチューブル内にある”ような気がします。

生まれ変わりについても少し触れていますが、死の後は完全な無ではなく宇宙に意識が有り続けると考えれば恐怖が和らぐ気がしますね(笑)

僕は完全な文系なので”量子学”についてはほとんど分からなくて、「量子が原子より小さい事」「量子は粒子性と波動性を併せ持つ存在」くらいの知識しかありません。

理系の方にとっては初歩の初歩の知識かもしれませんが、この部分を理解する為だけに何回も読み返しましたよ。

とにかくこのフラクトライトの部分は完全な空想ではなくペンローズ氏が提唱した量子脳力学を参考にしていると思われます。



ソウル・トランスレーター

「フラクトライトを読み取る機械が、ソウル・トランスレーターってことなのね。でもそれって逆もできるんじゃないの?」

フラクトライトについてある程度理解できたアスナの疑問はソウル・トランスレーター(以下STL)の技術的な部分へと移ります。

ちなみにシノンはアスナ程は理解できていませんでした。さすがは元攻略組の参謀格だっただけの事はありますね。

アスナは、アミュスフィアを例に出し、STLもアミュスフィアと同様に接続者の魂(アミュスフィアは脳)に情報を書き込む事ができるのではとキリトに聞きます。

「STLはフラクトライトに短期的な記憶を書き込む事で、見せたいものや聞かせたい音の情報を与える。ニーモニックビジュアルデータっていうらしい」

「俺、ごく初期のテストダイブ中の記憶ならあるんだけど。違ったよ、全然違った。アミュスフィアが作るVRワールドとは。俺は最初、そこが仮想世界だとは分からないくらいだった」

キリトが説明するとアスナは不安そうにキリトに問います。

「でもそれは…本当に安全なものなの?私怖いよ。そのアルバイトの話を持ってきたのは総務省の菊岡さんなんでしょ…」

アスナはキリトの話を聞き、STLの安全性とアルバイトをキリトに紹介した菊岡の事を不安に思っているようです。

キリトは菊岡の事を気の許せないところがあると評しながらも、フルダイブ技術が一体どこに向かっているのかを知りたい、STLには何かある予感がすると語ります。

その後、STL最大の目玉機能”フラクトライト・アクセラレーション(FLA)“の話をして長い長いSTLの説明が終わります。


小説ではこのSTLの技術的な部分と”ニーモニック・ビジュアル”についての説明で約20ページを費やしています。

それくらいここは難解で複雑な部分なんですが…。

それをアニメではたった一分半で説明しようとしています(笑)

アニメの構成って本当に大変なんだなと改めて思いました。

それと、フラクトライトの項でも書いたと思いますが、この部分も深く理解しようとしなければすんなり頭に入ってきます。脚本家の言葉の取捨選択が上手なのかもしれませんね。

ただ1点、キリトが「俺、ごく初期のテストダイブ中の記憶ならあるんだけど。違ったよ、全然違った。アミュスフィアが作るVRワールドとは。俺は最初、そこが仮想世界だとは分からないくらいだった」と話した後にアスナが「でもそれは…本当に安全なものなの?私怖いよ」と答えるシーン。

僕には、アスナは”STL内が仮想世界だと分からないくらいだった”とキリトが言った事に対して”私怖いよ”と反応しているように見えました。

小説ではSTLの技術的な事を説明した数ページ後から”ニーモニック・ビジュアル”の説明が始まるのですが、”STLの記憶の書き込み”と”ニーモニック・ビジュアル”を一つの会話にしてしまった事、そして小説の中の重要な会話をカットした事でこの部分が違和感の塊になってしまったと思います。

「もしかして……それは、魂の中の記憶に対しても可能なの? キリト君、さっき言ったよね。ダイブ中の記憶が無いって。それってつまり、ソウル・トランスレーター……STLは、記憶の消去や上書きもできるってことなの?」

重要な会話はこれ。STLは映像や音を接続者に見せたり聞かせたりするだけではなく、接続者の記憶の消去や上書きもできるのではないかという部分です。アスナはこの部分に恐怖を感じていたのです。

「でも、わたし……怖いよ、キリト君。記憶を操作されるなんて……

その後にこの会話文があるのでこれは間違いないでしょう。

大長編をたった4クールで完結させようとすれば、どうしてもカットしなければならない部分が出てくるのは理解できますが、カットする事で内容が変わってしまうのは残念ですね…。

それではSTLや”ニーモニック・ビジュアル”、”フラクトライト・アクセラレーション”についての補足ですが…

まずSTL”ソウル・トランスレーター”は”ソウル→魂”と”トランスレーター→変換や翻訳”となるので”魂を変換(翻訳)する装置”で、人間のフラクトライトが保持している膨大なデータを、人間が理解できる言葉に翻訳して読み取ると同時に、人間の言葉で描かれた情報を再翻訳して書き込むという機能があります。

“ニーモニック・ビジュアル”は人のフラクトライト(意識)が保持するデータを完全な形で接続者のフラクトライトに書き込む事で、アミュスフィア等が脳に見せるポリゴンデータとは全く違う、意識レベルに於いては本物と同じものを見せたり聞かせたりできる技術です。

“フラクトライト・アクセラレーション”は、意識の中心部にある思考クロック(1秒間に計算する回数の事)を加速させて仮想世界に同期し、仮想世界内の基準時間をも加速させる事で実際のダイブ時間の数倍の時間を仮想世界で体験できるようにする技術です。

もっと分かりやすく説明したいところですが、このあたりは小説を実際読んでもらわないと深くは理解できないと思います。小説ではかなり詳しくそして分かりやすく説明してくれているので、何度か繰り返し読めば十分理解できるかなと。


SAOのアニメは小説に描かれている専門的な事や繊細な描写の多くをカットし、ライト層にもとっつきやすくてキャッチーな作品になるように作られています。

そうする事でこれほどまでの人気を獲得できたのだと思いますが…。

でもやっぱりSAOの真骨頂は”小難しい空想技術”。他の凡庸な量産型”主人公最強作品”や”ハーレムもの”とは一線を画す点はそこだと思うんです。

だから時間を使ってでももう少し詳しく説明して欲しかったです(ライト層には切られるかもしれないけど…)。でも放送前から多分バッサリいかれるんだろうなとは思っていました(笑)

個人的には物語の後半に結構カットできる部分があると思うんですよね。そこをがっつりカットしてもらって、このSTLの解説やカーディナルとの会話あたりは力を入れて欲しいなと。

それでは、次はいよいよ第一話のラストです。

【SAOアリシゼーション】第一話⑤金本の襲撃
【アニメSAOアリシゼーション】概要や感想記事まとめ

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