©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回のつづき…
エルドリエの額に突如として現れた紫色の三角柱。
キリトは、エルドリエが過去の記憶を失い、別人格になってしまった理由がその三角柱にあると推測。そこで、エルドリエの記憶を呼び覚ますために、詰め寄ろうとします。
そのとき、キリトの右足の甲に目もくらむような激痛が走りました。
キリトの右足を超長距離から正確に射抜いたのは、かつてアリスを連れ去った整合騎士 “デュソルバート・シンセシス・セブン” でした。
第十二話「図書室の賢者」のあらすじと感想②
光の扉の向こうにあった大図書室
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驚異的な精密射撃で、ユージオとキリトを追い詰めるデュソルバート。
絶体絶命の状況に陥った二人は、かつて聞いた謎の声に導かれ、空間に突如現れた光の扉めがけて一目散に飛び込みました。
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「……探知されたな。このバックドアはもう使えん」
ユージオとキリトの前に現れたのは、小さな丸眼鏡と大きな帽子が印象的な10歳前後の少女でした。
二人は少女の案内に従って通路を進み大きな扉を開けると、本棚と本のみで埋め尽くされた途轍もない光景が。
そこは、超巨大図書室でした。
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日本ではなかなか目にすることができない、巨大で歴史を感じさせる図書館に行ってみたいものですね。
ゲームの世界であれば、ファイナルファンタジー9に登場する「隠者の書庫ダゲレオ」もとても素晴らしい雰囲気で、一日どころか何日でも滞在したくなります。
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現実世界では、ブラジルにある「王立ポルトガル図書館」が非常にファンタジックな雰囲気を醸し出しており、”幻想図書館” という別名の意味が良く理解できます。
一面に広がる本の山を目にすれば、誰もが驚きを隠せないでしょう。
キリトとユージオも、きっと同じような感動を覚えたに違いありません。
大図書室の司書カーディナル
話を本題に戻しましょう。
アンダーグラウンドの大図書室に収められているのは、この世界が創造された時から現在に至るまでのあらゆる歴史の記録、天地万物の構造式、そして、この世界の人々が神聖術と呼ぶシステム・コマンドの全てでした。
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「わしの名は《カーディナル》。かつては世界の調整者であり、今はこの大図書室のただひとりの司書じゃ」
この世界の核心を知る者 “カーディナル” との運命的な出会いでした。
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カーディナルは、冷えきったユージオが “風邪” のバッドステータスを受けないように、風呂でしっかりと体を温めてくるよう指示しました。
しかし、これはカーディナルがキリトと二人きりになるために、ユージオを巧妙に隔離する策だったのです。
ここからは、カーディナルとキリトの長い対話が始まります。
クィネラの話題に移るまでの会話の要点は、以下のようにまとめられます。
- カーディナルは、仮想世界を制御するための自律型プログラム《カーディナル・システム》
- 現実世界と連絡する手段を持っているのは最高司祭のみ
- 現在のカーディナルは、システム領域へのアクセスが不可能であり、データ領域についても参照できる範囲は極めて限定的
- ライオスやウンベールのような利己的な欲望を持った人間がこの世界に存在しているのは、精神原型育成を担当したラーススタッフ(原初の四人)の中に、一人の “善ならざる者” が含まれていたため
- 善ならざる者によって育成された精神原型の子孫が、現在の貴族や公理教会上級司祭などの支配階級を形成
- 支配階級のトップに君臨しているのは、公理教会最高司祭であり、現在はシステム管理者でもあるアドミニストレータ(Administrator:管理者を意味する)
- アドミニストレータは、カーディナルにとって双子の姉のような存在
クィネラの誕生と並外れた才能
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原初の四人がログアウトしてから数十年後、アンダーワールドに今までに存在したフラクトライトの中で、最大級の利己心と類稀な美貌を兼ね備えた、一人の怪物のような存在が誕生しました。
その名は、クィネラ。
クィネラは10歳にして、剣術や神聖術、歌唱や織物など、あらゆる分野で並外れた才能を示しました。
領主である彼女の父親は、クィネラにこれまでに存在したことのない天職、《神聖術の修練》を与えたのです。
クィネラは、抜きん出た知性、忍耐力、そして洞察力を持っていました。彼女は、これらの能力を活かして神聖術(システム・コマンド)の解析に着手します。
やがて、クィネラは「ジェネレート」や「エレメント」、「オブジェクト」といった言葉の意味を理解し、その知識を基にして様々な術を独力で編み出していきました。それらの術の中には、対象にダメージを与える攻撃術も含まれていたのです。
クィネラの権限レベル上げと支配の始まり
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11歳の時、クィネラはキントビギツネを相手に攻撃術の試し撃ちを行い、その結果、キントビギツネを殺してしまいました。
この出来事を通して、クィネラは自分の権限レベルの値が上昇したことを確認したのです。
次に彼女がとった行動は、セントリア周辺に生息する野獣ユニットの殺戮でした。
クィネラは、野獣ユニットを一掃し、補充されたユニットをまた一掃するという、ゲームでのレベル上げと同じような行為を繰り返し行いました。この行動により、彼女は際限なく権限レベルを上昇させ、ついには超上級神聖術を操るに至ります。
そして、13歳になったクィネラは、奇跡のような神聖術を駆使して神の名を騙り、底知れない支配欲を完全に満たすための行動を開始しました。
この時、セントラル・カセドラルが建設され、公理教会の350年に及ぶ歴史が幕を開けたのです。
禁忌目録の制定と配布
強固な基盤を築き上げたクィネラが次に着手したのは、自らの絶対的な優位性を維持することでした。
彼女がまず行ったのは、全ての領主に貴族(爵子)の地位を与え、彼らを自分に従わせること。
この施策によって、アンダーワールドに「封建制」が生まれることになります。封建制とは、君主の下にいる諸侯たちが土地を所有し、その土地に住む人民を統治する社会・政治制度のことを指します。
また、クィネラは自分と同じように生物を殺してレベル上げを行い、自分の権限レベルを超える存在が現れることを防ぐため、狩りや殺人を禁止する明文化された法律を制定しました。
この法律の第一項には公理教会への忠誠が、第二項には殺人行為の禁止が定められています。これが、「禁忌目録」の基礎となったのです。
クィネラ、老いへの恐怖と禁断の扉
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その後、クィネラは禁忌目録を編纂し、製本して、あらゆる街や村に配布・所蔵させました。この行為により、彼女の絶対的な権力は揺るぎないものになったのです。
しかし、神のような力を手に入れたクィネラでさえ、どうにもできなかったものがありました。それは、“天命の限界” です。
50歳、60歳と歳を重ねるにつれ、かつての美貌は影を潜め、次第に歩くことすら困難になっていきました。
目前に迫る「絶対的な死」の恐怖にさいなまれながらも、クィネラは諦めることなく、あらゆる音の組み合わせを試し、禁断のコマンドを呼び覚まそうと足掻き続けました。
そして、ついにその時が訪れたのです。
ほんの些細な怪我や軽い病気でさえ、全てが終わってしまう頃、クィネラは遂に禁断の扉を開くことに成功したのでした。
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「システム・コール!インスペクト・エンタイア・コマンド・リスト」
クィネラが開いた禁断の扉とは、この世界に存在する全てのシステム・コマンドの一覧が記されている、”紫色の窓” でした。
天命の操作とカーディナル・システムとの融合
全てのシステム・コマンドを自在に操れるようになったクィネラが真っ先に行ったのは、自らの権限レベルを最上位にまで引き上げ、世界を制御するカーディナル・システムそのものへの干渉を可能にすること。
そして、クィネラはカーディナルのみが持つあらゆる権限を自分自身に付加していったのです。
その権限の中には、動的ユニットの天命操作も含まれていました。クィネラはその権限を用いて、自らの天命値を完全に回復させたのでした。
さらに、クィネラは天命の自然減少を停止させ、自らの容姿を回復させたのです。この行為により、彼女は10代後半の輝くような美貌を取り戻すことに成功しました。
もし、ここまでの達成で満足していれば、クィネラはこの世界が終わるまで自己を保ちながら、欲望を満たし続けることができたはずです。
しかし、彼女の際限ない欲望がそれを許しませんでした。
クィネラは、自分と同等の権限を持つ存在、つまりカーディナル・システムそのものを排除しようとしたのです。
しかし、抜群の知性を持っていたとはいえ、所詮クィネラは科学文明とは縁がないアンダーワールド人。
彼女はラースのエンジニア向けリファレンスの読解に失敗し、誤った長文の神聖術を唱えてしまいました。その結果、自らの魂をカーディナルと融合させてしまったのです。
公理教会最高司祭アドミニストレータの誕生
カーディナル・システムの基本命令であり、同時に存在目的でもあるのが、《秩序の維持》です。
クィネラは、この《秩序の維持》を自らのフラクトライトに書き換え不可能な行動原理として焼きつけてしまいました。
その結果、彼女は “自分が支配する人界を今のまま永遠に保つこと” のみを欲する、人ならざる存在へと変貌を遂げていたのです。
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「私は支配者にして管理者、今日より私は公理教会最高司祭アドミニストレータである」
原作小説「アリシゼーション・ターニング」が終わり、「アリシゼーション・ライジング」に突入しました。
カーディナルとの会話はこの後も続きます。しかし、第十二話ではその内容が原作の約10分の1にカットされていたため、説明回は次の第十三話で終了するのではないでしょうか。
尺の都合や、SAOといえばバトルやハーレムと思っている人のことを考慮すれば、カーディナルとの会話をバッサリとカットするのはやむを得ない判断かもしれません。
とはいえ、カーディナルの繊細な心理描写を切り捨ててしまうのは、もったいないというか、寂しいというか…。
カーディナルはSAOアリシゼーションという作品の中でも1、2を争う魅力的なキャラクターなので、アニメだけでなく、ぜひ原作小説も読んでもらいたいです。
さて、第一クールの終了まであと1話となったアリシゼーション編の感想ですが、いろいろな意味で “頑張ってる” という印象を受けます。
原作の魅力を十分に引き出せているかというと否ですが、限られた尺の中で、アニメ視聴者にできるだけ分かりやすく伝えようという制作陣の努力は見て取れます。
最初の期待が大きすぎたがゆえに、序盤はたくさん批判してしまいましたが、今季放送中のサンデー漫画や瞬を女性に変更する予定の聖闘士星矢と比べれば全然マシだということに気づきました。
また、本作では新しい技術が試されており、監督も伊藤智彦さんから小野学さんに代わっています。これまでのSAOシリーズとは全く異なる作品だと認識を改めてからは、楽しんで視聴できるようになりました。
これからの原作の展開は加速度的に面白くなっていきます。アニメ制作陣には、原作の魅力を十分に引き出し、素晴らしい作品に仕上げていってほしいと期待しています。
次回は「支配者と調停者」、楽しみですね。
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