©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回のつづき…

突如としてエルドリエの額に現れた紫色の三角柱…
過去の記憶を失い、別人格になってしまった理由がその三角柱にあると予想したキリトは、エルドリエの記憶を揺さぶるために詰め寄ろうとします。
その時、キリトの右足の甲に目もくらむような激痛が走りました。
超長距離からキリトの右足を正確に射抜いたのは、かつてアリスを連れ去った整合騎士”デュソルバート・シンセシス・セブン”でした。
大図書室の賢者カーディナル
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驚異的な精密射撃でユージオとキリトを追い詰めるデュソルバート。
絶体絶命の二人は、いつか聞いた謎の声に導かれ空間に現れた光の扉に一目散に飛び込みます。
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「……探知されたな。このバックドアはもう使えん」
二人の目の前に立っていたのは、鼻に乗せた小さな丸眼鏡と大きな帽子が印象的な十歳そこそこの少女でした。
少女の言うままに通路を進み大きな扉を開けると…
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本棚と本のみで構成された途轍もない光景――超巨大図書室がそこにありました。
こういう日本ではなかなか見ることができない巨大で歴史のありそうな図書館に行ってみたいですね。
© 2000, 2019 SQUARE ENIX CO., LTD.
ゲームの世界でならファイナルファンタジー9の《隠者の書庫ダゲレオ》もとてもいい雰囲気で、一日どころか何日でもこもりたくなります。
現実の世界では、ブラジルにある”王立ポルトガル図書館”がとてもファンタジーっぽくて別名”幻想図書館”と言われている意味がよく分かりますね。
一面に広がる本の山を見れば誰もが驚くと思いますが、キリトやユージオもきっとそういう気持ちになったでしょう。
それでは話を戻します。
アンダーグラウンドの大図書室に収められているのは、この世界が創造された時よりのあらゆる歴史の記録と天地万物の構造式、そしてこの世界の人々が神聖術と呼ぶシステム・コマンドの全てでした。
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「わしの名は《カーディナル》。かつては世界の調整者であり、今はこの大図書室のただひとりの司書じゃ」
この世界の核心を知る者”カーディナル”との初めての出会いです。
クィネラとアドミニストレータ
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冷え切ったユージオが”風邪”のバッドステータスを課されないように風呂でしっかり温まってくるように指示したカーディナル。
しかし、これはキリトと二人だけになるためにユージオを隔離したカーディナルの策でした。
ここからカーディナルとキリトの長い話になります。
この会話の中でクィネラの話になるまでの要点は以下の通りです。
- カーディナルは仮想世界を制御するための自律型プログラム《カーディナル・システム》
- 現実世界と連絡する手段を持っているのは最高司祭だけ
- 今のカーディナルはシステム領域へのアクセスはできず、データ領域ですら参照できる範囲は微々たるもの
- この世界にライオスやウンベールなどの利己的な欲望を持った人間が存在している理由は、精神原型育成を担ったラーススタッフ(原初の四人)の中に一人、善ならざる者が存在したから

- 善ならざる者に育成された精神原型の子孫が現在の貴族や公理教会上級司祭などの支配階級
- 支配階級のトップに君臨しているのが公理教会最高司祭にして現在はシステム管理者でもあるアドミニストレータ(Administrator:管理者という意味)
- アドミニストレータはカーディナルの双子の姉のようなもの
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原初の四人がログアウトしてから数十年後、これまでアンダーワールドに存在した全フラクトライトの中で最大級の利己心と美しい容姿を併せ持った怪物が生まれます。
その名はクィネラ。
十歳にして剣や神聖術、歌や織物などあらゆる分野に天稟を示したクィネラに領主である父が与えたのが《神聖術の修練》というかつて存在したことのない天職でした。
飛び抜けた知性、忍耐心、洞察力を持っていたクィネラは神聖術(システム・コマンド)の解析を始めます。
そして、《ジェネレート》や《エレメント》《オブジェクト》などの言葉の意味を理解してさまざまな術を独力で編み出します。その中には対象にダメージを与える攻撃術も含まれていました。
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十一歳の時にキントビギツネ相手に攻撃術を試し撃ちして殺した結果、自分の権限レベルの値が上昇したのを確認したクィネラ。
彼女が次にとった行動はセントリア周辺の野獣ユニットの殺戮でした。
野獣ユニットの一掃→補充→一掃→補充というゲームのレベル上げと同じ行為を繰り返したクィネラは際限なく権限レベルを上げ、超上級神聖術を操るに至ります。
そして十三歳になったクィネラは奇跡のような神聖術の数々を利用して神の名を騙り、底無しの支配欲を完璧に満足させる行動に出ました。
その時生まれたのがセントラル・カセドラルであり、公理教会三百五十年の歴史の始まりだったのです。
強固な基盤を築いたクィネラが次に手をつけたのが自らの絶対的優位性維持。
まず行ったのは、全ての領主に貴族(爵子)の地位を与え自分に従わせること。
この施策によってこのアンダーワールドに封建制が生まれることになります。封建制とは君主の下にいる諸侯たちが土地を領有してその土地の人民を統治する社会・政治制度のことです。
さらに自分と同じように生物を殺してレベル上げを行い自分の権限レベルを超える存在が現れないように狩りや殺人を禁じる明文化された法を作りました。
第一項に公理教会への忠誠、第二項に殺人行為の禁止を記した法。これが禁忌目録の基です。
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その後、禁忌目録を編纂し、製本してあらゆる街や村に所蔵させたクィネラは絶対的な権力を確かなものにします。
しかし、神のごとき力を手に入れたクィネラですらどうにもできなかったのが天命の限界でした…。
五十、六十と老いるにつれてかつての美貌は見る影もなく、次第に歩くことすら覚束なくなっていきました。
すぐ近くに迫る絶対的な死を恐れながらもクィネラは諦めずにあらゆる音の組み合わせを試し、禁断のコマンドを呼び覚まそうと足掻き続けます。
そしてその時が来ました。
些細な怪我ひとつ、軽い病ひとつで全てが終わってしまう頃、クィネラはついに禁断の扉を開くことに成功します。
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「システム・コール!インスペクト・エンタイア・コマンド・リスト」
クィネラが開いた禁断の扉とは、この世界に存在するあらゆるシステム・コマンドの一覧が記された紫色の窓でした。
全システム・コマンドを操れるようになったクィネラがまず行ったのは自らの権限レベルを最上位にまで引き上げ、世界をコントロールするカーディナル・システムそのものへの干渉を可能にすること。
そして、カーディナルのみが持つあらゆる権限を全て自分に付加していきました。
その中には動的ユニットの天命操作も含まれており、その権限によって己の天命値を全回復させます。
さらに天命の自然減少を停止させ、容姿を回復させました。これによりクィネラは十代後半の輝くような美貌を取り戻します。
ここまでで満足していれば、クィネラはこの世界が終わるまで自己を保ちつつ欲望を満足させられていたのですが、彼女の際限ない欲望はそれを許しませんでした。
クィネラは自分と同じ権限を持つ者、カーディナル・システムそのものを排除しようとしたのです。
しかし、飛び抜けた知性を持つとはいえ所詮クィネラは科学文明とは縁がないアンダーワールド人。
管理者レベルの複雑なコマンド体系を一夜で理解できるはずもなく…クィネラはラースのエンジニア向けリファレンスの読解にしくじります。
誤った長文の神聖術を唱えた結果、クィネラはカーディナルと自らの魂を融合させてしまったのです。
カーディナル・システムの基本命令であり存在目的でもある《秩序の維持》。
《秩序の維持》を自らのフラクトライトに書き換え不可能な行動原理として焼きつけてしまったクィネラは”己が支配する人界を今のまま永遠に保つこと”のみを欲する人ならざる者になっていました。
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「私は支配者にして管理者、今日より私は公理教会最高司祭アドミニストレータである」
原作小説「アリシゼーション・ターニング」が終わり「アリシゼーション・ライジング」に突入です。
カーディナルとの会話はこの後も続きますが、十二話ではだいたい十分の一くらいにカットした内容になっていたので、次の十三話で説明回は終了でしょうか。
尺の都合やSAO=バトルと思っている人のことを考えればバッサリ切るしかないのですが、カーディナルの繊細な心理描写を切り捨てるのはもったいないというか寂しいというか…
カーディナルはSAOアリシゼーションという作品の中でも1、2を争う魅力あるキャラクターなので是非アニメだけではなく原作を読んでもらいたいです。
さて、第一クール終了まであと一話のアリシゼーション編の感想ですが、いろいろな意味で”頑張ってる”といった感じですかね。
もちろん原作の魅力を十分に引き出せているかというと否ですが、限られた尺の中でアニメ勢に少しでも分かりやすく伝えようという努力は見えます。
最初の期待が大きすぎたがゆえに序盤はたくさん批判してしまいましたが、今季放送中のサンデー漫画や瞬を女性に変更予定の聖闘士星矢に比べれば全然マシだということに気づきました。
新しい技術を試したり、監督が伊藤智彦さんから小野学さんに代わっているので今までのSAOとは全く別物だと頭を切り替えてからは楽しく見れています。
ここから物語は加速度的に面白くなっていくので、アニメがそれを十分引き出して素晴らしい作品になることを期待しています。
ただ、アニメだけを見てアリシゼーション編ってつまらないなと思わないで欲しいです…原作小説は何倍も面白いので!!
次回は「支配者と調停者」、楽しみですね。


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