前回のつづき…
ユージオの天職である”一日二千回ギガスシダーを叩く事”を終わらせ、二人はユージオの村「ルーリッド村」に帰ることにしました。
第二話「悪魔の樹」のあらすじと感想③
村への帰り道、ユージオはキリトに様々な話をしました。
その内容は、前任の”ギガスシダーの刻み手”であるガリッタ老人の斧打ちの腕前や、村の同年代の少年たちがユージオの天職を楽なものだと考えていることへの不満など。
キリトはこの世界が何を目的にして作られたのか、そして運用されているのかを疑問に思いながらユージオの話を聞いていましたが、その内物置小屋のような建物に到着しました。
「鍵かけなくていいのか?」
「なんで?」
「なんでって?盗まれたり…」
「大丈夫だよ。盗みをしてはいけないって禁忌目録に書いてあるじゃないか」
ここで、この世界の少し奇妙な点が明らかになります。
“禁忌目録”に違反するような事は100%起こらない。だから誰一人盗みを働く者などいない。
僕たちの世界でも、当然ながら法律で盗みをすることは禁じられています。しかし、それでも万引きや窃盗は後を絶ちません。
これが、この仮想世界と現実世界の大きな違いなのかもしれません。
残念なアニメオリジナルシーン
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトとユージオがルーリッド村に到着すると、村の入口に一人の若者が立っていました。
その若者の名前はジンク。彼はユージオと同い年で、村を守る”衛士”という天職に就いています。
「おい、ユージオ!そいつは誰だ?」
「彼はキリト。どうやらベクタの迷子みたいで…」
ジンクは、ユージオからキリトが”ベクタの迷子”であることを聞くと、疑わしそうな目でキリトを見つめました。
「おまえ、本当に記憶がないのか?天職も忘れちまったのか?」
「ふん…どうせ大した天職じゃなかったんだろ? そこのユージオと同じで…何の意味もない無駄な仕事をしてたんだろうぜ」
「剣士…俺の天職は剣士かな」
ジンクにユージオの事を馬鹿にされたキリトは、不敵な笑みを浮かべながら自分の天職は”剣士”だと言い放ちました。
すると、ジンクはキリトに向かって、天職が剣士なら腕前を見せてみろと言い、自分の剣を差し出します。
剣を手渡されたキリトは、プロレスラーの胴体ほどの太さがある丸太に向かって剣を振るいました。すると、丸太は一刀のもとに上下真っ二つに切り裂かれたのです。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトの剣技に、ジンクとユージオは驚きを隠せません。
「ジンク、もういいだろ…キリトを村に入れるよ」
ここで注目すべきは、このシーンが原作小説には登場しない、アニメオリジナルのシーンだということ。
正直なところ、僕はこのアニオリシーンの追加には失望しました。
アニメの脚本家は、このアニオリシーンを追加することで、視聴者を盛り上げようとしたのかもしれません。
しかし、小説では、ジンクがユージオからキリトが”ベクタの迷子”であることを聞いた後、このようなつまらないやり取りは一切ありません。ジンクは、すんなりとキリトを村に入れてくれるのです。(これはジンクだけでなく村人全員)
中にいたのは、ユージオと同い年だというジンクという若者で、当初こそ俺を胡散臭そうな眼で見ていたものの、《ベクタの迷子》だという説明を拍子抜けするほどアッサリと受け入れて俺が村に入るのを許した。
小説「ソードアート・オンライン9 アリシゼーション ビギニング」
ここは冒頭の物置小屋のシーンと同様に、全く人間と同じように考え、話すユージオや村人たちなのに、根幹の部分に”禁忌目録”という強大な何かがあって、それに強く縛られているという、奇妙で少し不気味な感覚を表現するのに必要なシーンだと思うのです。
シーンをカットするだけなら問題ありませんが、キリトを面白おかしく描写するためだけにこのような変更を加えてしまうのは、非常に残念です。
ルーリッド村の教会で出会った人々
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
村に入ることができたキリトは、ユージオに連れられて丘の頂上に建つ教会へと向かいます。
二人がノックをすると、現れたのは厳格という言葉を人型に具現化したような風貌の修道女、シスター・アザリヤでした。
小説では、キリトがシスター・アザリヤを一目見た時、「小公女セーラ」に登場するミンチン先生を連想してしまったと描写されています。
©NIPPON ANIMATION CO., LTD.
「小公女セーラ」が放送されたのは昭和の時代なのに知っているなんて、キリトは結構な世界名作劇場ファンなのかもしれませんね(笑)
キリトの予想に反して、シスター・アザリヤは厳格ながらも優しい人物でした。
あっけなく受け入れてくれたどころか、食事まで付けようと申し出てくれたのです。(食事内容は揚げた魚に茹でたジャガイモ、野菜スープ)
教会でキリトの世話をしてくれたのはセルカという小さな女の子でした。
外見は年端もいかない子供ですが、賢そうな雰囲気があり、大人びた印象を受けます。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「えーと…他に解らない事ある?」
「大丈夫。いろいろありがとう」
キリトが導き出した仮説
キリトは、セルカから渡された毛布と枕をシーツの上に移動させ、ベッドにごろりと転がりました。
長い一日の疲れから、すぐにでも寝入ってしまいそうな状態でしたが、キリトにはまだ頭を整理する必要がありました。
キリトの頭に浮かんだ考察をまとめると、以下のようになります。
- この世界は現実世界ではない
- 村人たちはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)ではない
- 村人全員がテストプレイヤーとしてログインできるほどのSTLの台数があるとは考えにくい
- ユージオの話によると、この世界は内部時間で300年以上が経過しており、ユージオ自身も少なくとも6年はここで過ごしている
これらの事実から、キリトは次のような仮説を導き出しました。
- ユージオたちはこの世界で一から育った存在
- おそらく、生まれたばかりの人の魂をコピーして仮想世界内で成長させた、いわば人工フラクトライト
これらは物語の非常に重要な部分なんですが、あっさり言っちゃった感じですね。
小説ではかなりぼかした表現になっており、この事実がはっきりと言葉にされるのはもう少し後になります。
俺の思考の片隅には、すでにひとつの答えが浮かびつつあった。だが、それを言葉にするのはどうにも恐ろしかった。もし仮に、俺の考えていることが可能なのだとしたら――ラースという企業は、神の領域の遥か奥深くにまで手を突っ込んでいる。
小説「ソードアート・オンライン9 アリシゼーション ビギニング」
小説ではいろいろな仮説を立てて答えを導き出そうとしているんですが、結構ややこしいのでこのくらいスピーディーなほうが話の筋が掴みやすいかもしれませんね。
キリトの頭には他にもさまざまな疑問が浮かびますが、頭の中だけでは答えを知る事はできません。
キリトは、眠りに落ちる間際に、央都に行ってこの世界の存在理由を見極めたいと強く思うのでした…。
第二話はユージオとの出会いの部分にかなり時間を割いた印象ですね。
とても大事なシーンなのでよかったと思いますが、村の入り口でのジンクとの絡みは全く必要のないエピソードだったと思います。
作画に関しては前回よりもよかったなと思いました。
特に風景は、この世界の美しさを僕たちに感じてもらう為に頑張ってくれたのかなと。
次回のタイトルは”果ての山脈”です。楽しみですね。
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