第三話はセルカを探して辿り着いた”果ての山脈の洞窟内”でゴブリンの集団に遭遇するというところで終わりました。
「三つ数えたらあの四匹を体当たりで突破する。かがり火を倒すんだ」
キリトは恐怖で凍り付いてしまったユージオを落ち着かせ、作戦を伝えます。
そして、ゴブリンたちとの激しい戦闘が始まりました。
第四話「旅立ち」のあらすじと感想①
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
いちにいさんの掛け声とともに、キリトとユージオは走り出しました。
まずは前方の雑魚ゴブリンをタックルで倒し、相手の視界を奪うためにかがり火を倒しました。
ゴブリンたちが呆気にとられている間に剣を二本拾って一本をユージオに渡し、自分はゴブリン隊長を狙い突撃します。
迫りくる雑魚ゴブリンたちを片っ端から蹴散らし、一気にゴブリン隊長ウガチとの一対一の勝負に持ち込みました。
原作との相違点
スピード感のある良い作画でしたが、雑魚ゴブリンたちの体格が原作と比べて大きすぎるのが気になりました。
小説では、ゴブリンの身長はキリトの胸程度で、体格的にはキリトが有利だと描かれています。
キリトの身長が約165cmであることを考慮すると、原作に登場するゴブリンたちの身長は120cm程度と推測できます。これは小学校2~3年生の子供と同じくらいの身長に相当します。
この大きな体格差があるからこそ、キリトはゴブリンたちに対して勝算があると判断し、ユージオとともに突撃を決意するのです。
体格が自分より良く、武装した見るからに強そうなゴブリンが30匹以上いれば、普通は突撃などしないでしょう。
旧SAOの世界で「安全マージン」を何よりも大事にしていたキリトなら、なおさらそう考えるはずです。
それは雑魚ゴブリンだけではなく、隊長のウガチにも言えること。原作では、ウガチの身長はキリトと大差ないと書かれているのですが、アニメでは明らかに2メートル以上あるように見えます。
キリトの無双感を出すために、原作通りのゴブリンでは物足りないと判断されたのでしょうか…。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ウガチとの一騎打ちを優位にすすめるキリト。
キリトは片手剣の三連撃技「シャープネイル」を発動させ、ウガチの左腕を切り落とすことに成功します。
アニメでは第2話の残念なアニオリシーンでキリトが初めてこの世界にソードスキルが存在することを知るのですが、原作ではこのウガチとの戦闘シーンで初めてソードスキルが実装されていることを知ります。
――勝った!
そう確信すると同時に、俺は驚愕してもいた。
今の攻撃……片手剣三連撃技《シャープネイル》は、形だけをなぞったものではなく、正真正銘の本物だった。斬撃のさなか、刀身は赤い光の軌跡を宙に残し、俺の五体は不可視の力によって加速された。別の言い方をすれば、《ライトエフェクト》と《システムアシスト》。
つまり、この世界アンダーワールドには、ソードスキルが存在するのだ。小説「ソードアート・オンライン9アリシゼーションビギニング」
キリトは、ウガチに対して「シャープネイル」を発動できたにもかかわらず、青薔薇の剣でギガスシダーを切り倒そうとした際には、「シャープネイル」よりも難易度の低い初級技「ホリゾンタル」がなぜ発動しなかったのかを不思議に感じていました。
原作では、キリトがこの疑問を抱いていた点が描かれています。
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アニメではしっかりライトエフェクトが発生してるんですが…
青薔薇の剣でソードスキルが発動しなかった理由は、キリトの権限レベルが低く、青薔薇の剣を十分に扱えなかったためです。
これらは細かい点かもしれませんが、原作との差異が目立ち、全体的に雑な印象を受けますね。
昨日俺は、悪魔の樹ギガスシダーを切り倒すため、《青薔薇の剣》を用いて片手直剣用単発ソードスキル《ホリゾンタル》を放とうとした。シャープネイルより難易度の低い初期技――単なる水平斬りだ。なのに、システムは俺を助けてくれなかった。剣は光らず、体も加速せず、刃はまったく見当違いの場所を叩いて俺は無様にひっくり返った。
小説「ソードアート・オンライン9アリシゼーションビギニング」
ウガチとの死闘|キリトの感じた「本物の痛み」
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「シャープネイル」が決まり、勝利を確信したキリトでしたが、大ダメージをものともせずに反撃してきたウガチの一撃を左肩に受けてしまいます。
「痛すぎる…仮想世界でこんな痛み…ありえないだろ!」
斬り落とされた腕の切断面を力任せに握りつぶして止血するウガチ。
キリトは左肩の痛みをこらえてすぐさま起き上がり、突進してくるウガチと再度激しく斬り結びます。
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キリトは2連撃を叩き込みますが、ウガチの反撃の蹴りを食らって後方に吹き飛ばされてしまいます。
ユージオの窮地
「キリト―――ッ!!」
恐怖で硬直し、絶体絶命のキリトを助けようとしたのはユージオでした。彼は大声で叫びながら必死に武器を振り回し、ウガチを後退させます。
長年重い斧を操ってきただけあって、ユージオの一撃のスピードには目を見張るものがありますが、戦闘経験においては雲泥の差があります。
ウガチはしばらくの間、ユージオの抵抗を楽しむかのように防御に徹していましたが、やがて一声叫んでユージオの体勢を崩すと強烈な一撃を見舞います。
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ウガチの一撃を腹に受けたユージオは、大きく吹き飛ばされてキリトの横に落下しました。
ユージオの傷は、キリトのものよりも何倍も酷く、傷口からは恐ろしいほど大量の血が溢れ出ていました。
ユージオは、光を失いかけた緑色の瞳でまっすぐにキリトを見つめます。
幼き日々の記憶
「こ…子供の頃…約束したろ…。僕と、キリトと――アリスは、生まれた日も、死ぬ日も一緒…今度こそ…守るんだ」
その瞬間、キリトの視界に真っ赤な夕焼け空の下を歩く子供たちの姿が映し出されます。
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片手剣突進技「ソニックリープ」での勝利
――そうだ…俺も守れなかった。でも…。
キリトは右手を伸ばし、転がっていた剣の柄を握ります。
迫り来る蛮刀を弾き返すと、常人の域を超えた反射速度でウガチの攻撃を回避し続けます。
「俺は…剣士キリトだ!!」
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「ソードスキルソニックリープ!」
片手剣突進技「ソニックリープ」が発動。刀身がライトグリーンの光を放つと同時に、見えない手が背中を強く押します。
空気を切り裂く音が聞こえた瞬間、ウガチの巨大な首が高々と宙に舞い、地面に落下しました。
戦闘シーンは気合いが入っていたと思います。絵もよく動いていましたし、迫力がありました。
僕が一番気に入ったのは、ソニックリープを発動させた時に聞こえる低音のSE。(ドゥーン、ドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥーンと聞こえる)
この音がめちゃくちゃかっこよかったです。(ヘッドフォン推奨)
そういえば、ソニックリープといえば、第1期第8話でクラディールのアバランシュを迎撃し、武器を破壊した懐かしのソードスキルでしたね。
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
アニメの残念な点|キリトの痛みとの戦い
ただ、アニメには残念だと思う点もありました。
特に気になったのは「キリトが痛みと戦う描写」です。
アニメでは、強烈な痛みで顔を歪めながらも、迫り来るウガチに応戦するためにすぐに立ち上がります。しかし、原作の小説では、この痛みを “耐えられる限界を遥かに超えている” と表現しており、浅い呼吸を繰り返す以外に何もできない状態が長時間続くのです。
キリト自身も、なぜこれほどの痛みを感じるのかを考えています。
現実世界では、耐え難い痛みを感じた時に分泌されるはずの痛みを軽減する脳内物質や、失神するという防御機能が、仮想世界であるがゆえに働かないのではないかという仮説を立てます。
しかし、結論は “桐ケ谷和人” という人間自身が、リアルな痛みに全く慣れていないということでした。
現実世界では大きな怪我もしておらず、剣道もすぐに辞め、SAO生還後のリハビリでも最先端のトレーニングマシンと補助的投薬のおかげで、ほとんど痛みに悩まされることがなかったそうです。
VRにフルダイブするためのハードであるナーヴギアやアミュスフィアには、痛みを除去する “ペインアブソーバ機能” が搭載されていましたが、もしそれがなければ、アインクラッドでもはじまりの街から出ることすらできなかっただろうとも述べています。
原作では、アニメのようにウガチに応戦することもなく、一合たりとも打ち合えないまま諦めて死を待つだけだったキリト。
そんなキリトを助けようとしたユージオがウガチに斬られ、今にも事切れそうになったのを目の前にした時、大切な人を失う痛みに比べれば、こんな肉体的な痛みなどものの数ではないと痛みを克服するのです。
ここは、全く動けないほどの抗いがたい痛みを、もう二度と誰も失いたくないという強い想いで捻じ伏せる、迫真の演出にして欲しかったと思いました。
長くなったので一度ここできります。次はユージオを助けるシーンから。
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