前回の続き…
第三話「果ての山脈」のあらすじと感想②
神器「青薔薇の剣」
ユージオがあまりの重さに息も絶え絶えになりながら持ってきた青薔薇の剣を、キリトが抜刀します。
「この剣の素材、なんだ?」
「普通の鋼じゃないよね。銀とも竜の骨とも違う。だから神器じゃないかなって…」
“神器“というのは、神様の力を借りて強力な神聖術師が形にしたもの、あるいは神様が直接創り出した器物のことを指します。
このルーリッド村に存在する神器は、”教会の鐘”とユージオが持つ青薔薇の剣の二つだけです。
キリトは重い剣が好き?
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトはユージオに、現在のギガスシダーの天命を調べるように言いました。
ステイシアの窓に映ったギガスシダーの天命は232,315。
ユージオは不安そうにしていましたが、キリトにはこの重い剣を振るう自信がありました。
旧SAO世界においても、キリトが好んでいたのは重量のある剣。
一期七話「心の温度」では、リズベットがおすすめした剣を「軽い」と文句を言ったあげく、折ってしまうシーンがありましたね(笑)。
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
キリトが重い剣を好んでいた理由は、手数で勝負する速度重視の武器よりも、全てを込めた一撃で敵を粉砕する手応えに魅せられていたから。
旧SAOで最後の相棒となった剣たちは、入手時点ではこの青薔薇の剣と大差ない手応えがあったそうです。
エリュシデータは見るからに重そうでしたが、リズが打ったダークリパルサーも同じくらい重かったのでしょうか。
キリトによると、重い剣は力で振るのではなく、重心の移動がミソだそうです。
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
キリトの挑戦と失敗
キリトは、ワールドシステムの根幹が違うため、旧SAOと単純に同一視はできないものの、少なくとも体捌きのイメージは可能だと考えました。
そこで、単純な右中段水平斬り”ホリゾンタル”をイメージして剣を振ります。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
このシーンで少し気になったのが、剣のライトエフェクト。
第二話の残念なアニオリシーンでもライトエフェクトが発生していましたが、それはジンクに借りた剣だったので、特に問題はありません。
このシーンでキリトが使っていたのは青薔薇の剣なので、本来ならライトエフェクトが出るはずがないのですが…。
まあ、アニメアリシゼーションは設定がかなりいい加減なので、細かいことを気にしたら負けですね。
さて、キリトの打ち込みの結果は残念ながら失敗に終わりました。
彼は幹の切れ目を狙いましたが、剣を使いこなせなかったため、目標から大きく外れた樹皮に激突してしまったのです。
キリトは強烈なキックバックで後ろに吹き飛びました。
「言わんこっちゃない!」とキリトを心配するユージオ。
しかし、幹の方を見た瞬間、ユージオは絶句します。
「嘘だろ…たった一撃で、こんな…」
青薔薇の剣は刀身を半分近くもギガスシダーの樹皮に食い込ませ、空中に静止していたのです。
キリトはすぐにギガスシダーの天命を確認するようユージオに言いました。
ユージオは急いでステイシアの窓を出して確認しましたが、数字は232,314。先程からたった1しか減っていなかったのです。
ユージオの挑戦と新たな発見
残念な結果に驚いたキリトでしたが、ユージオは切り込んだ場所が悪かったと言いました。
皮ではなく切れ目の中心に当たっていれば、天命はもっと減ったはずだと彼は説明します。
「俺は駄目でも、ユージオならどうだ?」
キリトは自分よりも力がありそうなユージオに、青薔薇の剣を使うことをすすめました。
ユージオはためらいましたが、キリトは剣を振るうコツを教えてやると言って食い下がります。
「じゃあ一回だけ」
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトは、ユージオがいつも使っている斧を例に出してアドバイスしました。
ユージオはゆっくりと剣を後ろに引き、わずかな溜めの後、猛烈なスピードでスイングを開始します。
キリトも驚くほど見事な体重移動の技術で打ち込んだユージオでしたが、切れ目の上側を叩いてしまったため、真後ろに吹き飛ばされてしまいました。
それにしても、この真剣な表情のユージオはなかなか格好良かったですね。
結局、二人とも青薔薇の剣を扱うことができませんでしたが、キリトは自分のステータス数値が、青薔薇の剣を扱うために必要な数値に届いていないことに気づきました。
キリトの “Object Control Authority” は38で、青薔薇の剣の “Class” は45でした。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトは、レベルを45まで上げれば、青薔薇の剣を使いこなすことができるはずだと推測します。
しかし、その方法については見当もつきませんでした…。
セルカの悩みとアリスの過去
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ルーリッド教会の風呂場は、素焼きのタイルを敷き詰めた床に大きな銅製のバスタブを埋め込んだ造りになっています。湯を沸かすには、外壁に設えたカマドで薪を燃やす仕組みです。
銅製のバスタブは日本ではあまり見かけませんが、海外の高級ホテルなどに稀に置いてあるのを目にします。
アニメを見る限りでは、和風でも洋風でもなく、独自に進化した風呂の形といったところでしょうか。
一日の労働で疲れた体を癒やしながら、キリトは央都に行く方法や公理教会、アリスのことなどに思考を巡らせていました。
「あれ、まだ誰か入ってるの?」
声をかけてきたのはセルカでした。
ゆっくりしてもいいけれど、出る時にはきちんと浴槽の栓を抜くようにと言い、そそくさと去っていくセルカに、キリトはドア越しに呼びかけました。
「あ…セルカ。ちょっと訊きたい事があるんだけど」
二人は、現在キリトの部屋になっている客間で話をすることになりました。
キリトが聞きたかったのは、セルカの姉であるアリスのことでした。
セルカはキリトにたくさんの話をしました。
アリスが整合騎士に連れていかれてから、ユージオが全く笑わなくなってしまい、安息日でも家に閉じこもるか森に出掛けるかで、いつも一人ぼっちだということ。また、村人が自分とアリスを比べるのがたまらなく辛いということなど。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
話をしているうちに、セルカの中の感情が溢れ出してしまいます。
しっかりしていて大人びているとはいえ、セルカは12歳そこそこの少女です。無理もありません。
「…ごめんなさい、取り乱したりして」
「い…いや、その。泣きたいときは、泣いたほうがいいと思うよ」
キリトは我ながらこの台詞はどうなのかと思いつつも、セルカにありふれた優しい言葉をかけました。
「…うん、そうね。なんだか、少しだけ楽になったわ。人の前で泣いたのは、ずいぶん久しぶり」
セルカはキリトの言葉を聞き、小さく微笑んで素直に頷きました。その時、鐘楼から九時を知らせる和音が聞こえてきました。
「そろそろ戻らないと」と言って、セルカは立ち上がりました。
部屋を出ようとする前に、セルカはどうしてアリスが整合騎士に連れていかれたのかをキリトに尋ねました。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「ええと…果ての山脈を抜けて闇の国に入ってしまったからって」
セルカは理由を聞いて何事かを考えているようでしたが、一瞬だけ微笑んで部屋から出ていきました…。
失踪したセルカを探して果ての山脈へ
翌日、五時半の鐘が鳴ると同時に目を覚ましたキリトは、顔を洗うために井戸に向かいました。
桶に数杯分の水をタライに移して顔を洗っていると、シスター・アザリヤに声をかけられます。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「キリトさん、セルカを見ませんでしたか?」
シスター・アザリヤは、朝から姿が見えず礼拝にも来なかったセルカを探していたようです。
何やら胸騒ぎがしたキリトは、セルカを探しに行くことにします。
途中でユージオに会い、シスター・アザリヤがセルカを探していること、そして昨夜セルカにアリスが整合騎士に連れ去られたのは果ての山脈を越えて闇の国の土に触れたからだと話したことを伝えました。
二人は、もしかしたらセルカは果ての山脈に向かったのではないかと推測し、急いで後を追いかけることにしました。
道の途中、ユージオは雑草が踏まれた跡を見つけ、しばらく前に子供がこの道を通ったことを確信します。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
天命が大きく減らない程度の速度で走ること2時間余り、二人は果ての山脈の洞窟に辿り着きました。
アニメでは描写が乏しかったですが、この時キリトは不自然なほどのエリアの切り替わりと、こんなに近くに世界の果てがあることに驚きました。
そして、何の障害もない一本道をたった2時間半の早足で辿り着いてしまう位置に禁断の地を設定しているということに放心します。
まるで住民が闇の国に近づいてしまう事態、もしくは闇の国の住民による侵入を意図的に引き起こそうとしているのでは…キリトの頭にはそんな考えが浮かびました。
ユージオの神聖術とシステムコール
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「システムコール。ジェネレート・ルミナス・エレメント。アドヒア」
ユージオが呟くと、握っていた草穂の先端が青白く光りました。
「ゆ、ユージオ…いまのは?」
キリトは、ユージオが神聖術を使ったことよりも、発した言葉に驚きました。そして、その言葉の意味が分かるのかとユージオに尋ねますが、ユージオは全く理解していないようでした。
この場面でユージオが唱えた言葉は、第一話でアリスが唱えたものと同じですが、小説ではこの場面でユージオが唱えたのは「システム・コール!リット・スモール・ロッド」となっています。
この改変には何らかの意図があるのでしょうか。少し気になりますね。
果ての山脈の洞窟でゴブリンに遭遇
二人は真っ暗な洞窟を進んでいきます。
もしセルカが闇の国に入ってしまった場合、整合騎士が来る前にキリトがセルカを連れて逃げるというような話をしている時、「きゃあああ」という女の子の悲鳴が聞こえました。
二人は悲鳴が聞こえた方向に全力で走り続け、ドーム状の空間にたどり着きます。
そこにいたのは、胸ほどの身長で、がっしりとした横幅のある猫背気味の体躯、異様なまでに長い腕と鋭い爪を持つ、慣れ親しんだRPGにはほぼ必ず登場する低級モンスター “ゴブリン” でした。数はおよそ30匹ほど。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトは、談笑しているゴブリンたちの奥に、粗末な台車に乗せられ荒縄で縛られているセルカを見つけました。
「セルカ!」
ユージオはセルカを見つけると大声で叫んでしまい、ゴブリンに気づかれてしまいます。
「おい、見ろや!また白イウムの餓鬼が二匹も転がりこんできたぜぇ!」
人間の気配に気づいたゴブリンたちはざわめき立ちます。さらに奥からは、他のゴブリンとは明らかに違う巨大な体躯の、指揮官とおぼしき一匹が近づいてきました。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「男のイウムなんぞ連れて帰っても売れやしねぇ。面倒だ、ここで殺して肉にしろ」
あっけにとられ固まってしまうユージオに、キリトは何度も声をかけますが、反応はありません…。
第三話はギガスシダーを切り倒す糸口になるかもしれない青薔薇の剣や、セルカの話等、小説約80ページ分が詰め込まれました。
いろいろ細かい部分はカットされていましたが、きれいにまとめられていたなという印象です。
次回のタイトルは「旅立ち」。
ゲーム内での痛みと戦うキリトやユージオ。二人の激しい戦闘シーンが楽しみですね。
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