当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています

【SAOアリシゼーション】第五話③ラースの目的と二種類の人工知能

前回のつづき…

【SAOアリシゼーション】第五話②ラースにつながる謎解きの過程

 

アニメでは改変&カットされてとてもシンプルかつ単調にストーリーが進行していますが、原作ではオーシャン・タートルに辿り着くまでに紆余曲折あります。

現在三人+ユイが導き出した答えは以下のとおりです。

  1. キリトをさらった目的…仮想世界内での能力に利用価値がある
  2. キリトをさらった組織…STLを開発したラース
  3. キリトの居場所…国内かつ電波遮断区画にいる可能性が高い
  4. ラースの正体…ネット上に全く情報が存在しない謎の企業
  5. ラースにつながる手がかり…ダイシー・カフェでキリトが発言した”アリス”という言葉の”頭字語”。”Artificial(アーティフィシャル) Labile(レイビル) Intelligence(インテリジェンス)”=《高適応性人工知能》。

前回は謎解きの過程の中で”高適応性人工知能”という言葉が登場したところまでを書きました。



人工知能開発への二つのアプローチ

saoトップダウン型AIの最高峰ユイ

©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project

アスナは”人工知能”とはそもそもどういったものなのかをユイに問います。

「わたしにそれを聞きますか、ママ。それは、ママに向かって《人間とは何か》と聞くようなものです」

ユイは珍しく苦笑いのような表情を浮かべながらアスナに答えました。

このあたりのやりとりはアニメではばっさり切られていますが、本当に面白くて読み応えがありますよ。

ユイが言うには明確に”これが人工知能である”と定義することは不可能との事。

その理由は”真正の人工知能というものは、いまだかつてこの世界に存在したことがない”からというものでした。

ユイの答えに戸惑う三人。なぜならユイ=人工知能(AI)と考えていたからです。

ここから三人の生徒への”人工知能講座(初級編)byユイ先生”が始まります。

アニメではこの人工知能に関する説明がカットされていましたが、非常に重要な部分ですので後々語られると思われます。

トップダウン型人工知能

まずは”トップダウン型人工知能“ですが、これは既存のコンピュータ・アーキテクチャ(主にハードウェアにおける基本設計や設計思想のこと)上で、単純な質疑応答プログラムに徐々に知識や経験を積ませることによって最終的に本物の知性へと近づけようというものです。

ユイを含めて現在人工知能と呼ばれているもののほぼ全てがこのトップダウン型人工知能ですね。

トップダウン型人工知能で有名なものといえば、高度なもの(性能の意味で)なら将棋電王戦で佐藤天彦名人を破った将棋AI”Ponanza”、身近で手に入れやすいものでは”Amazon Echo”や”Google Home”等のAI搭載スマートスピーカーが挙げられます。

トップダウン型人工知能は高度な計算や言葉の受け答えが可能なので表面的には人間と同じ《知性》を持っているように見えます。

しかし、その《知性》は人間のそれとは完全に異なるもので、簡単にいえば”Aと聞かれたらBと答える”というプログラムの集合体でしかないとユイは言います。

現状の人工知能の概要については松尾豊氏の「人工知能は人間を超えるか」という書籍がおすすめ。

人工知能という難しい内容を平易に解説しているので初めての本にうってつけだと思います。

それと、人工知能と聞いてFF12のガンビットシステムをイメージした人も多いかもしれませんが、あれは”シーケンス制御”によるものなので少し異なります。

シーケンスは設定したルーティンワークに従った行動しかとれませんが、人工知能はさまざまな事象や結果から総合的に判断して行動することができるのです。

少し脱線してしまいましたが、ユイの行動を例にとると以下のようになります。

アスナに『人工知能とは何か』を問われる
→ユイは《苦笑》と分類される表情のバリエーションを表現し説明

ユイが《苦笑》の表情を選択した理由は、キリトが自分自身に関する問いを投げかけられた時にそのような表情で反応することが多いから。

ユイがさまざまなものを見聞きし、経験的に学習した結果が行動につながっているだけということです。

裏を返せば、トップダウン型人工知能は学習していない入力に関して適切な反応ができない=現状では真に知能と呼べるレベルには達していないとユイは言います。



ボトムアップ型人工知能

「ボトムアップ型は、わたしの知る限り、思考実験の域を出ないまま放棄されてしまったアプローチです。もし実現すれば、そこに宿る知性は、わたしとは本質的に違う、ママたち人間と真に同じレベルにまで達しうる存在となるはずなのですが…」

小説「ソードアート・オンライン10アリシゼーション・ランニング」

アリシゼーション編にとって最も重要な言葉の一つである”ボトムアップ型人工知能“。

アニメ第五話ではカットされていましたが、必ず説明があると思いますのでここでは触れません。

端的にいえば、トップダウン型人工知能とは違って人間と同じ創造性や適応性を持つ真なる人工知能がボトムアップ型人工知能です。

ここでピンときますよね。

高度な適応性を持つ人工知能…

“Artificial(アーティフィシャル) Labile(レイビル) Intelligence(インテリジェンス)”=《高適応性人工知能》。

原作を読んだことがある人はみなぞわっとした感覚を味わった瞬間ではないでしょうか。

ラースとは

ラースの本当の目的

ユイの発した”適応性”という言葉からアリスの頭字語の一部であるA.L.I(高適応性人工知能)を連想した三人はラースの本当の目的について話し合います。

アスナはキリトがダイシー・カフェで”STLは目的ではなく手段なのではないか”と言っていたことを思い出します。

人の魂そのものの構造を解析することによって、ボトムアップ型人工知能を創り出す…。

つまりラースの本当の目的は”次世代VRインターフェースを開発することではなく、人工知能を開発すること”だと三人は結論付けるのです。



菊岡とラースの関係性

saoオーシャンタートル

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

偽の救急車やヘリコプターまで使用してキリトを拉致したラースという組織。

その資金力や組織力は単なるベンチャー企業の枠を超えていました。

ここで初めて話題に上がるのが総務省の菊岡誠二郎です。

キリトにSTLのアルバイトを紹介したことから察するに、菊岡とそのバックの総務省はラースとつながっていると三人は推測。

国家的規模の極秘計画にキリトが巻き込まれているということは最早自分たちや、更に言えば警察ですら手が届かない領域なのではないかとアスナは無力感に打ちのめされます。

「元気を出してください、ママ。このアルヴヘイムでママを探していたときのパパは、ただの一度も諦めたりしませんでしたよ」

「今度はママがパパを探す番です!」

sao 囚われのアスナ

©2014 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAOⅡ Project

「……ありがとう、ユイちゃん。わたし、諦めたりしないよ。国が敵だって言うんなら……国会議事堂に乗り込んで総理大臣を締め上げてやるわ」

ユイの言葉に励まされ攻略魂に火が付くアスナ。

ここから熱いアスナと冷静沈着なシノン、中庸な直葉のバランスのとれた三人組は国家予算を突破口に海洋研究目的という名目で竣工された自走式メガフロート”オーシャン・タートル”へ辿り着くのです。


ここからの流れはアニメも原作もよく似たもので、アスナは神代凛子とコンタクトをとって凛子の助手であるマユミ・レイノルズに扮しオーシャン・タートルに乗り込みます。

sao神代凛子と茅場晶彦

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

特に気になったことはありませんが、茅場と凛子のピロートークの登場時期が前後しているのと茅場のセリフを多少補完していた部分は悪くないかなと思いました。

アニメ版のカット&改変祭りで一気に駆け抜けていく展開も悪くはないと思いますが、ゆっくりとそれでいてスマートに推理しながら解決への糸口を探っていく原作の魅力はやはり代えがたいものがあると思います。

アニメしか見ていない人は是非原作を見て欲しいですね。

山田孝太郎 (著), 川原 礫 (原著), abec (イラスト, デザイン)
【SAOアリシゼーション】第六話①魂の複製(コピー)の構造的欠陥
【アニメSAOアリシゼーション】概要や感想記事まとめ

コメント