前回のつづき…

現実世界ですら経験した事のない猛烈な痛みを克服し、ゴブリンの隊長であるウガチを倒したキリト。
他の雑魚ゴブリンを威圧して散らした後、すぐさま傷ついたユージオの元に向かいます。
すでに意識はなく今にも事切れそうなユージオの天命をチェックするキリトでしたが、おそろしい程の速度で激減する数字に驚愕。
原作小説ではおよそ二秒に1ポイント減ると書かれていますが、アニメでは一秒に10ポイントは減っていますね。
ステイシアの窓を開いた直後のユージオの天命が244くらいだったのでアニメなら二十五秒で0になる計算になります。ちょっと適当すぎですね。
ちなみにこのシーンでは原作小説でも文章に間違いがあります。
生命力――デュラビリティ・ポイントの表示は、【244/3425】となっていた。しかも、現在値がおよそ二秒毎に1という恐ろしいペースで減少していく。つまり、ユージオの命が尽きるまで、あとわずか二百四十秒――八分しかないということだ。
小説「ソードアート・オンライン9アリシゼーションビギニング」
244ポイントが二秒毎に1減っているので、残り四百八十八秒=八分でユージオの命が尽きる計算に。原作は二百四十四秒=八分となっているので、秒数の部分が誤っていますね。
最初読んだ時、一瞬自分の頭がおかしくなったのかと焦りました(笑)
キリトを救う黄金色の幻
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
即座に一刻の猶予もないと状況だと察したキリトは気を失っているセルカを起こしユージオの治療をするように言います。
「……無理よ……こんな傷……あたしの神聖術じゃ……」
「無理でもやってみるんだ!君はアリスの妹なんだろ!?」
「ユージオは君を助けにきたんだ、セルカ!アリスじゃない、君を助けるために!」
キリトの懸命な説得にセルカは覚悟を決めます。
彼女の瞳には数秒前までの怖れや躊躇いの色はもうありませんでした。
ユージオを助けるためにセルカが出来る手段は危険な高位神聖術を試すことだけでしたが、それにはキリトの力が必要で、さらにもし失敗した時はキリトもセルカも命を落とす可能性があるとの事。
「その時は俺の命だけで済むようにしてくれ。――いつでもいいぞ」
セルカは強い光を湛えた瞳でキリトをまっすぐに見つめ頷きました。
「――トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、ライト・ハンド・セルフ・トゥ・レフト!!」
セルカが唱えたのは人から人へと天命を移動させる神聖術。
もう少し詳しく説明すると、セルカが導線兼ブースター係となってキリトの天命を引き上げた上でユージオに移動させる神聖術です。
原作では”トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、ライト・トゥ・レフト”なのですが、アニメでは”ハンド・セルフ”という言葉が追加されています。
天命の移動がすすむにつれてキリトの全身を強烈な寒気が包み始めます。
「き……キリト……まだ、だいじょうぶ……?」
「問題ない……もっと、もっとユージオにやってくれ!」
キリトはセルカの問いかけに即座に答えましたが、すでに視力をほとんど失いつつあり右手と右足の感覚も消失していました。
アニメではカットされていますが、この時キリトが思っていたのは”ユージオの命が救われるなら、どんな痛みにだって耐えてみせるし、この世界に於ける命を失っても構わない”という事でした。
その理由はもし自分が死んでもユージオの命さえ助かれば、さきほどのゴブリン集団が闇の国の先兵でこれから侵略が激化したとしても対策をとってくれるはずだから。
仮想世界内の出来事であり実際の人間が被害を受けるわけではないのに馬鹿らしい事を考えるなと思う人も多いかもしれませんが、キリトは昔からそういうキャラクターでした。
旧SAOでもNPCを囮に使ってフィールドボスを攻略しようとするアスナと激しく対立した事がありましたね。
「ボスがNPCを殺している間にボスを攻撃、殲滅します」
「NPCは岩や木みたいなオブジェクトとは違う!彼らは…」
「生きている……とでも?あれは単なるオブジェクトです。たとえ殺されようとまたリポップするのだから」
「俺はその考えには従えない」
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
「気をつけたほうがいいよ。あの人も僕とは違う意味で……現実じゃないとこで生きてる感じがするから……」
ユウキもマザーズロザリオ編でこう言っていましたが、キリトと仮想世界の関係性は僕たちが考えているよりも深いという事でしょうね。
では、話を戻します。
自分の命を全て費やしてでもユージオを助けたいと願うキリトでしたが、目の前にあったのは絶対的な死の予感でした。
恐ろしいくらいに孤独で…たまらなく寒い…。
その感覚は、仮想世界アンダーワールドにおける魂の擬似的な死は現実の肉体すら殺すのではないかと思えるくらいでした。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
凍てつく暗闇の中で魂の死を迎えつつあったあったキリトは両肩に誰かの手を感じました。
凍りついた体の内部を優しく溶かしていく暖かい手…。
(……きみは、誰……?)
キリトが声にならない声で尋ねると、泣きたくなるほど懐かしく思える声が聞こえました。
「キリト、ユージオ…待ってるわ、いつまでも…セントラル・カセドラルのてっぺんで、あなたたちをずっと待ってる…」
黄金色の光は激しく、そして優しく輝きキリトの体の隅々まで染み渡った後、行き場を求めて左手から溢れ出していきました…。
アニメではこの部分(セルカが神聖術を使ってからギガスシダーのところまで)を約一分で演出しています。
かなり重要なシーンなのですが…カットの嵐でしたね(笑)
いろいろと言いたい事はありますが、後にもっと納得できないシーンがあるのでここはもういいです。
またここで一回切ります。次は村に戻ったところから。


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