前回のつづき…

黄金色のアリスの幻影のおかげでなんとかユージオを助ける事に成功したキリトとセルカ。
アニメではカットされていますが、その後キリトはユージオに肩を貸し隊長ゴブリンであるウガチの首を携えルーリッド村まで帰ります。
そして村長をはじめ村人たちにゴブリンの事を話した後、疲れた足を引きずりながら教会に戻りました。
ギガスシダーの最期
軽くなった青薔薇の剣
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
翌朝、二人はいつもどおりギガスシダーのもとへ。
「傷の具合はどうだ、ユージオ?」
「うん、丸一日休んだら、もうすっかり治ったみたいだよ」
キリトは瀕死のユージオが”キリトとアリスとはずっと昔から友達だった”と言った事や黄金色の幻影について尋ねますが、明確な答えを得る事はできませんでした。
「さて、仕事しないと」
キリトはそうつぶやくと木に立てかけてあった革袋に手を伸ばします。
「俺はこれでいく」
頑張ってと竜骨の斧を渡してきたユージオを制して、キリトは青薔薇の剣を片手で持ち二度三度素振りをしました。(この素振り…もう少し格好よくできなかったものか)
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「――セィッ!!」
短い気勢とともに放たれたのは片手剣単発ソードスキル”ホリゾンタル”。
巨木に命中した瞬間、痛烈な衝撃音が轟き、周囲の梢でさえずっていた鳥たちが一斉に飛び立ちました。
あれだけ堅牢を誇っていた”悪魔の樹”の幹には、端から端まで長く、そして深い斬り跡が残されていました。
このシーンはあまりにもオーバーな演出ですね(笑)
原作ではここまで深く斬られていませんし幅も広くありません。
ユージオの想い
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
信じられない光景を目の当たりにしたユージオは呆気にとられます。
「ユージオにも振れると思うぜ」
そう言って、キリトは青薔薇の剣をユージオに渡しました。
「キリト、僕は……僕に剣を教えてくれ!僕はアリスを連れ戻したいんだ!」
ユージオはしばらく剣を見つめた後、強い光を宿した目でキリトを見つめ語りかけました。
「……この六年間、ずっと、ずっと後悔してた。なんで僕はアリスを助けられなかったんだろうって」
「……僕は強くなりたい。もう、二度と、同じ間違いを、繰り返さないために。なくしたものを……取り戻すために。だから、僕は剣士になりたいんだ」
涙を流しながら自分の今の気持ちを打ち明けたユージオに対して、キリトはさまざまな思いを呑み下し答えます。
「解った。教えるよ、俺の知る限りの技を。――でも、修行は辛いぞ」
キリトは片頬に浮かべていた笑みを悪戯っぽいものに変えながら右手を優しくユージオに差し出しました。
「望むところだよ」
ユージオは差し出された手を強く握り返し、口許を少しだけ緩めながら強く答えました。
「そういえば、君の剣術の流派はなに?」
「俺の剣は……アインクラッド流だ!」
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
その後、キリトがユージオに修行をつけているシーンに移ります。
キリトはギガスシダーの天命が残り僅かになった事を確認すると、ユージオに最後の一撃を見舞うよう促します。
「――セアァ!」
ユージオは渾身の力を込めて、キリトに教わりながら何度も何度も繰り返し練習した”ホリゾンタル”を放ちました。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
雷が十発立て続けに落ちた以上の凄まじい破壊音を轟かせながら“悪魔の樹”と呼ばれた巨樹ギガスシダーはゆっくり倒れ込みました。
「夢みたいだよ……こんな日が来るなんて」
「運命なんて信じてなかった。でも……キリト、僕はずっと待っていたんだ。この森で六年間、君がやってきてくれるのを」
「ああ、俺もきっと、お前に会うために、この森で目覚めたんだ、ユージオ」
キリトがユージオに語りかけると同時に視点が上空へと移動し、舞台は村へと移ります。
ストーリーの解釈
個人的に第四話で最も重要なのはこのシーンだと思っているのですが、皆さんはどのような印象を受けたでしょうか。
原作を知っている人と初めてこの作品に触れる人で大きく意見は分かれると思うのですが、僕はこのシーンが本当に酷いなと思いました…。
まずはユージオがキリトに剣を教わりたいと懇願するシーン。
時間的な問題なのかユージオは割とあっさり自分の決意を語りキリトもそれに応えますが、原作ではユージオの激しい葛藤が描かれています。
なぜ葛藤が生まれるのかというと、ユージオを始めとする”人工フラクトライト”たちは僕たちと違う一つの特性を有しているから。
それは意識(フラクトライト)に書き込まれた上位規則には絶対逆らえないという事。
それゆえにユージオはアリスを央都まで探しに行きたいという渇望を抱きつつも六年間ずっと押し殺し、自分が生きている間には絶対倒せないギガスシダーに向かってひたすら斧を振るってきたのです。
キリトに剣を教えて欲しいと言ってからも以下のような弱気な発言をします。
- 剣を修業するのは普通、衛士や衛兵の天職を与えられた人間だけで木こりである自分が修行する事は何かの規則に違反するのでは?
- 《複数の天職を同時に兼務すること》は禁じられており、剣の修行をすることで自分の天職を疎かにすることになるのかもしれない
魂に刻まれた不安や恐怖と戦いながらも、初めて運命を自分の意思で切り拓こうとしているユージオ。
俯き、体を震わせるユージオを無言で見詰めながら、俺は内心で懸命に語りかけた。
――頑張れ、ユージオ。諦めるな、自分を縛るものに負けるな。一歩……最初の一歩を踏み出すんだ。お前は、剣士なんだから。小説「ソードアート・オンライン9アリシゼーションビギニング」
そんなユージオをキリトも心の底から応援し、ユージオもそれに応えるのです。
魂の中の葛藤に打ち勝ち、大きな一歩を踏み出すユージオの姿をもっと熱く演出して欲しかったですね…。
アニメではその後ギガスシダーをあっさりと切り倒し、”キリトを六年間ずっと待っていた”というシーンに入りますが、ここが第四話で僕がどうしても納得できないところです。
アニメではキリトが剣を教える事を約束した後、ユージオは”望むところだよ”と答えてすぐ修行のシーンに切り替わります。
しかし、原作では”望むところだよ”の後に”それが僕の……ずっと、ずっと望み続けてきたものなんだ”というセリフが続き、その後すぐに”僕はずっと、君を待っていたんだ”のセリフになります。
これはアニメとは違ってギガスシダーを切り倒す前、自分の決意が固まった時です。
「望むところだよ。ああ、本当に、それが僕の……ずっと、ずっと望み続けてきたものなんだ」
もう一度下を向いたユージオの顔から、透明な雫が二つ、三つと零れ、木漏れ日を受けて美しく煌めいた。俺が驚く暇もなく、ユージオは一歩踏み出すと、額をどすんと俺の右肩にぶつけた。ごくかすかな囁き声が、触れ合う体を通して響いた。
「いま……今、解ったよ。僕はずっと、君を待っていたんだ、キリト。この森で六年間、君がやってきてくれるのをずっと待ってた……」
「――――ああ」
俺も、声にならない声でそう応じると、青薔薇の剣を握ったままの左手でユージオの背中を優しく叩いた。
「……俺もきっと、お前に会うために、この森で目覚めたんだ、ユージオ」
無意識のうちに発したその言葉こそが確かな真実なのだと、俺は強く感じた。小説「ソードアート・オンライン9アリシゼーションビギニング」
六年間という長い間、さまざまな想いを抱えつつも魂に刻まれた掟や規則に縛られ何も行動を起こす事ができなかった自分を変えてくれたキリト…。
そんなキリトに対して涙ながらに発した感謝の言葉が「僕はずっと、君を~」だと思うのです。そこにギガスシダー云々は関係ありません。
アニメではギガスシダーを倒した後に、爽やかかつ何かをやりきった表情で「僕はずっと待っていたんだ~」と描いています。
そこからはキリトのおかげでギガスシダーを切り倒す事ができた感謝のようなものが大きなウェイトを占めているように感じられました。
原作とアニメでセリフはほとんど同じでも話の内容は全く異なります。
ストーリーをどう解釈するのかは読み手によって変わるのかもしれませんが、僕はこのアニメのシーンはとても残念だと思いました。
第一話のキリトとアスナのシーンでも感じた事ですが、今回新しく監督になった方は戦闘シーン等派手な演出は得意かもしれませんが繊細な心を表現するのが苦手なのかな(というか重視していない)という印象を受けます。

これまで監督を務められていた伊藤智彦氏はキャラクターの表情や心の動きを的確に表現されていただけに…。
伊藤智彦氏に最後までSAOの監督をやりきっていただきたかったですね。
愚痴で長くなってしまったのでまたここできります。次回は第四話のラスト。


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