前回のつづき…

高位神聖術と黄金の光のおかげで、なんとかユージオを助けることに成功したキリトとセルカ。
アニメではカットされていますが、その後キリトはユージオに肩を貸し、隊長ゴブリンであるウガチの首を携えてルーリッド村まで帰ります。
そして、村長をはじめとする村人たちにゴブリンのことを話した後、疲れた足を引きずりながら教会に戻りました。
第四話「旅立ち」のあらすじと感想③
キリトとユージオ、再びギガスシダーに挑む
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
翌朝、二人はいつも通りギガスシダーのもとへ向かいました。
「傷の具合はどうだ、ユージオ?」
「うん、丸一日休んだら、もうすっかり治ったみたいだよ」
キリトは、瀕死の状態にあったユージオが “キリトとアリスとはずっと昔から友達だった” と言ったことや、黄金の光について尋ねますが、明確な答えを得ることはできませんでした。
「さて、仕事しないと」
キリトはそうつぶやくと、木に立てかけてあった革袋に手を伸ばします。
「俺はこれでいく」
竜骨の斧を渡してきたユージオを制して、キリトは青薔薇の剣を片手で持ち、二度三度素振りをしました。(この素振り…もう少し格好よくできなかったものか)
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「――セィッ!!」
短い気合いとともに放たれたのは、片手剣単発のソードスキル “ホリゾンタル” 。
巨木に命中した瞬間、痛烈な衝撃音が轟き、周囲の梢でさえずっていた鳥たちが一斉に飛び立ちました。
あれほど堅牢を誇っていた “悪魔の樹” の幹には、端から端まで長く、そして深い斬り跡が残されていました。
このシーンは、あまりにもオーバーな演出ですね(笑)
原作では、ここまで深く斬られていませんし、幅も広くありません。
ユージオの決意と剣の修行への懇願
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
信じられない光景を目の当たりにしたユージオは、呆気にとられます。
「ユージオにも振れると思うぜ」
そう言って、キリトは青薔薇の剣をユージオに手渡しました。
「キリト、僕は……僕に剣を教えてくれ!僕はアリスを連れ戻したいんだ!」
ユージオはしばらく剣を見つめた後、強い光を宿した目でキリトを見つめ、語りかけました。
「……この6年間、ずっと、ずっと後悔してた。なんで僕はアリスを助けられなかったんだろうって」
「……僕は強くなりたい。もう、二度と、同じ間違いを、繰り返さないために。なくしたものを……取り戻すために。だから、僕は剣士になりたいんだ」
涙を流しながら自分の今の気持ちを打ち明けたユージオに対して、キリトはさまざまな思いを呑み下し、答えます。
「解った。教えるよ、俺の知る限りの技を。――でも、修行は辛いぞ」
キリトは、片頬に浮かべていた笑みを悪戯っぽいものに変えながら、右手を優しくユージオに差し出しました。
「望むところだよ」
ユージオは差し出された手を強く握り返し、口許を少しだけ緩めながら、力強く答えました。
「そういえば、君の剣術の流派はなに?」
「俺の剣は……アインクラッド流だ!」
悪魔の樹ギガスシダー、ついに切り倒される
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
その後、キリトがユージオに修行をつけているシーンに移ります。
キリトは、ギガスシダーの天命が残り僅かになったことを確認すると、ユージオに最後の一撃を見舞うよう促します。
「――セアァ!」
ユージオは渾身の力を込めて、キリトに教わりながら何度も何度も繰り返し練習した “ホリゾンタル” を放ちました。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
雷が十発立て続けに落ちたかのような凄まじい破壊音を轟かせながら、“悪魔の樹”と呼ばれた巨樹ギガスシダーはゆっくりと倒れ込みました。
「夢みたいだよ……こんな日が来るなんて」
「運命なんて信じてなかった。でも……キリト、僕はずっと待っていたんだ。この森で六年間、君がやってきてくれるのを」
「ああ、俺もきっと、お前に会うために、この森で目覚めたんだ、ユージオ」
キリトがユージオに語りかけると同時に、視点が上空へと移動し、舞台は村へと切り替わります。
残念なアニメ演出|ストーリーやセリフの解釈
個人的に、第四話で最も重要なのはこのシーンだと思っているのですが、皆さんはどのような印象を受けたでしょうか。
原作を知っている人と、初めてこの作品に触れる人とでは、大きく意見が分かれると思うのですが、僕はこのシーンが本当に酷いと感じました…。
まずは、ユージオがキリトに剣を教わりたいと懇願するシーンについてです。
おそらく時間的な制約からか、ユージオは割とあっさりと自分の決意を語り、キリトもそれに応えますが、原作ではユージオの激しい「葛藤」が描かれています。
なぜ葛藤が生まれるのかというと、ユージオをはじめとする人工フラクトライトたちは、僕たちとは異なる一つの「特性」を有しているからです。
それは、意識(フラクトライト)に書き込まれた上位規則には絶対に逆らえないということ。
それゆえ、ユージオはアリスを央都まで探しに行きたいという渇望を抱きつつも、6年間ずっとそれを押し殺し、自分が生きている間には絶対に倒せないギガスシダーに向かって、ひたすら斧を振るい続けてきたのです。
原作では、キリトに剣を教えて欲しいと言った後も、ユージオは以下のような弱気な発言をします。
- 剣の修行をするのは通常、衛士や衛兵の天職を与えられた人間だけであり、木こりである自分が修行することは、何かの規則に違反するのではないか?
- 《複数の天職を同時に兼務すること》は禁じられているため、剣の修行をすることで自分の天職を疎かにしてしまうかもしれない
魂に刻まれた不安や恐怖と戦いながらも、初めて運命を自分の意思で切り拓こうとしているユージオ。
そんなユージオをキリトも心の底から応援し、ユージオもそれに応えようとするのです。
俯き、体を震わせるユージオを無言で見詰めながら、俺は内心で懸命に語りかけた。
――頑張れ、ユージオ。諦めるな、自分を縛るものに負けるな。一歩……最初の一歩を踏み出すんだ。お前は、剣士なんだから。小説「ソードアート・オンライン9アリシゼーションビギニング」
魂の中の葛藤に打ち勝ち、大きな一歩を踏み出すユージオの姿をもっと熱く演出して欲しかったですね…。
アニメでは、その後ギガスシダーをあっさりと切り倒し、”キリトを6年間ずっと待っていた” というシーンに入りますが、ここが第四話で僕がどうしても納得できないところです。
アニメでは、キリトが剣を教えることを約束した後、ユージオは「望むところだよ」と答え、すぐに修行のシーンに切り替わります。
しかし原作では、「望むところだよ」の後に、「それが僕の……ずっと、ずっと望み続けてきたものなんだ」というセリフが続き、その直後に「僕はずっと、君を待っていたんだ」のセリフが登場します。
これは、アニメとは異なり、ギガスシダーを切り倒す “前” 、ユージオ自身の決意が固まった時点でのセリフなのです。
「望むところだよ。ああ、本当に、それが僕の……ずっと、ずっと望み続けてきたものなんだ」
もう一度下を向いたユージオの顔から、透明な雫が二つ、三つと零れ、木漏れ日を受けて美しく煌めいた。俺が驚く暇もなく、ユージオは一歩踏み出すと、額をどすんと俺の右肩にぶつけた。ごくかすかな囁き声が、触れ合う体を通して響いた。
「いま……今、解ったよ。僕はずっと、君を待っていたんだ、キリト。この森で六年間、君がやってきてくれるのをずっと待ってた……」
「――――ああ」
俺も、声にならない声でそう応じると、青薔薇の剣を握ったままの左手でユージオの背中を優しく叩いた。
「……俺もきっと、お前に会うために、この森で目覚めたんだ、ユージオ」
無意識のうちに発したその言葉こそが確かな真実なのだと、俺は強く感じた。小説「ソードアート・オンライン9アリシゼーションビギニング」
6年もの長い間、さまざまな想いを抱えつつも、魂に刻まれた掟や規則に縛られ、何も行動を起こすことができなかった自分を変えてくれたキリト。
そんなキリトに対して、涙ながらに発した感謝の言葉が「僕はずっと、君を~」なのだと思います。そこにギガスシダー云々は関係ありません。
アニメでは、ギガスシダーを倒した “後” に、爽やかかつ何かをやり遂げたような表情で「僕はずっと待っていたんだ~」と描いています。
そこからは、キリトのおかげでギガスシダーを切り倒すことができたという感謝の気持ちが、大きなウェイトを占めているように感じられました。
原作とアニメでは、セリフはほとんど同じでも、話の内容は全く異なります。
ストーリーをどう解釈するかは、読み手によって変わるのかもしれませんが、僕はこのアニメのシーンはとても残念だと感じました。
第一話のキリトとアスナのシーンでも感じたことですが、今回新しく監督になった小野学氏は、戦闘シーンなどの派手な演出は得意かもしれません。
しかし、キャラクターの繊細な心理を汲み取り、表現するのが苦手(というか、重視していない)という印象を受けます。

これまで監督を務められていた伊藤智彦氏は、キャラクターの表情や心の動きを的確に表現されていただけに…。
伊藤智彦氏にSAOの監督を最後までやり遂げていただきたかったです。
愚痴が長くなってしまったので、ここで一旦区切ります。次回は第四話のラストについて取り上げます。


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