©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回の続き…
200年にわたる孤独の日々を耐え抜いてきたカーディナルは、キリトたちとの出会いによって、長年の望みであった “他の人間との触れ合い” を経験することができました。
前回は物語の流れから少し離れ、カーディナルの内面に焦点を当てて書きました。今回は再び物語の本筋に戻り、ストーリーの補足を中心に説明していきたいと思います。
第十三話「支配者と調停者」のあらすじと感想⑤
カーディナルが見出した理想の協力者キリト
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自らの護衛として整合騎士を完成させ、強固な守りを築いたアドミニストレータに対抗するため、カーディナルは協力者を探しました。
カーディナルが求める協力者の条件は二つ。
一つは、禁忌目録を破れるほどの高い違反指数を持つこと。もう一つは、直接戦闘能力および神聖術行使権限が整合騎士に匹敵することでした。
しかし、この条件を満たす人物を見つけることは容易ではなく、さらに有望な候補者を発見しても、その人物が整合騎士に連行されてしまうことが何度もあったのです。
結局、キリトに出会うまでの長い間、条件に合う協力者はただの一人も得ることはできませんでした。
仮に条件を満たす協力者が見つかったとしても、カーディナルにはさらに大きな障害を克服する必要がありました。
その障害とは、“アドミニストレータによる魂に対する攻撃” でした。
天命に対する攻撃は、適切な装備や神聖術の使用によって防御することができます。しかし、フラクトライトそのものへの攻撃は別問題でした。
もし記憶を引き裂かれてしまえば、どれほどの剣の達人であっても、また神聖術の使い手であっても、戦い続けることは不可能です。
カーディナルは、その問題の解決法を数十通りも捻り出しましたが、どれもいま一つ確実性に欠けていました。
そんな中、彼女は衝撃的な情報を入手します。
アドミニストレータが世界各地に配置した妨害オブジェクトの一つ、《倒せない巨樹》が、たった二人の若者によって倒されたというのです。
この驚くべき出来事の詳細を確認するため、カーディナルは監視ユニットのシャーロットを現地に派遣しました。
カーディナルは、シャーロットの目を通してキリトの行動を観察し、彼が “野良犬に残飯を与えている” 場面を目にした時、大きな衝撃を受けました。この行為が、禁忌目録にまったく縛られていないことを示していたからです。
さらなる観察を続けるうちに、カーディナルは重要な結論に達します。
それは、キリトは “外部の世界からきた人間” であるという事実でした。この発見は、カーディナルにとって状況を一変させる可能性を秘めていました。
さしものアドミニストレータといえども、STLを通してキリトの魂を攻撃することはできません。その理由は単純で、そのようなコマンド自体がシステムに存在しないからです。
キリトは、アドミニストレータによる魂への攻撃を受けつけない唯一の人間でした。まさに彼こそが、カーディナルが200年もの間、ただひたすらに待ち望んでいた理想の協力者だったのです。
シンセサイズの秘儀の解除方法
カーディナルは、キリトに伝えるべき重要な情報を開示しました。
その後、二人はユージオが待つ歴史書の回廊へと戻りました。そこで三人は集まり、今後の具体的な行動計画について詳細な話し合いを始めることになったのです。
三人はそれぞれの思惑を抱えつつも、アドミニストレータを倒すという共通の目標に向けて協力することを決意しました。
この話し合いの中で、カーディナルは重要な情報を二人に開示しました。それは整合騎士を造り出すための神聖術、《シンセサイズの秘儀》を解除する方法でした。
その解除方法は以下の通りです。
- 整合騎士の過去の記憶を揺さぶり、魂に挿入された《敬神(パイエティ)モジュール》を除去する。
- モジュールが挿入されていた場所に、本来存在した記憶の欠片を戻す。この記憶の欠片は、カセドラル最上階にあるアドミニストレータの居室から奪還する必要がある。
カーディナルの髪から生成された特別な短剣
カセドラル最上階に辿り着くまでには、整合騎士との戦闘は避けられないでしょう。しかし、ユージオはアリスが現れた場合、彼女と戦うことはできないと告げました。
この状況を考慮し、カーディナルはユージオに小さな短剣を手渡しました。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
この短剣は、世界最高の権限を持つカーディナルの髪の毛から生成された特別なものです。
この短剣自体にはほとんど攻撃力がありません。しかし、これで刺された者とカーディナルの間には切断不可能な経路が形成されます。
その結果、カーディナルが使用するあらゆる神聖術が、対象に必ず命中するようになるのです。
作戦は次のようなものでした。ユージオがアリスの体に短剣を刺すと同時に、カーディナルが神聖術を発動します。これにより、シンセサイズ解除の準備が整うまでアリスを眠らせることができます。
カーディナルは同様の短剣をもう一本用意していました。こちらはもちろんアドミニストレータ用で、キリトに託されることになりました。
武装完全支配術習得に必要な剣の記憶
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道中で戦うことになるであろう整合騎士たちは、強力な「武装完全支配術」を使用します。
カーディナルは、これに対抗するためには、キリトとユージオもまた完全支配術を習得する必要があると伝えました。
完全支配術の術式はカーディナルが組み上げてくれることになりました。しかし、その前提として剣の持ち主が、愛器の解き放たれた姿を強く想起する必要がありました。
この要求に応えるため、キリトとユージオはそれぞれの剣に秘められた記憶、存在の本質に触れようとします。二人は心の眼を開き、深い集中状態に入っていきました…
アニメでは約30秒程度の簡潔な表現に留まっていますが、原作ではキリトの愛剣 “黒いの” の前世である “悪魔の樹” ギガスシダーの悲しみがより深く描かれています。
他の木々たちと触れ合いたい一心で枝を、そして根を伸ばしても、相手に触れる前に必ずその命を奪ってしまう。それがギガスシダーに秘められた悲しい記憶でした…。
ユージオもまた、自身の剣の記憶に触れる体験をしました。彼が見たのは、果ての山脈の最高峰に存在していた「永久氷塊」の記憶でした。
いざ、セントラル・カセドラル最上階へ
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「ユージオ……そしてキリトよ。世界の命運は、そなたら二人に託された。地獄の業火に包まれるか……虚無に沈むか、あるいは……第三の道を見出すか。わしはもはや、告げるべき全てを告げ、与えるべき全てを与えた。あとはただ、信じる道を行けばよい」
全ての準備を整えたユージオとキリトは、愛剣が保管されているであろうセントラル・カセドラル三階の武器庫を目指すのでした。
原作小説の約200ページに及ぶ長い説明回が、ここで終わりました。
僕は原作小説の中でも、人工知能の説明が書かれている《アリシゼーション・ランニング》と、カーディナルがアンダーワールドについて説明する《アリシゼーション・ターニング》《アリシゼーション・ライジング》が特に気に入っています。
アニメは、一般的に説明回が好まれない傾向にあるので、これらの話はバッサリカットされましたが、SAOアリシゼーションという作品を深く理解するには、これらの説明は非常に重要です。
今までアニメでしかSAOを知らない人は是非読んでみてください。
次回の第十四話「紅蓮の騎士」からは、オープニングテーマがASCAさんの “RESISTER” に、エンディングテーマがReoNaさんの “forget-me-not” に変わるみたいなので楽しみですね!!
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