当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています

【SAOアリシゼーション】第十三話④二百年の孤独…人間であるということ

saoリセリス

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

前回の続き…

【SAOアリシゼーション】第十三話③世界の調停者カーディナルの決断

血に塗れたアンダーワールドの終末こそが真の神たるラースが意図したもの…

“世界の調停者”であるカーディナルは長い時間をかけて考え抜いた末、”アンダーワールドを全てまとめて無に還す”という決断をします。

今回は、アニメのストーリーから少し離れてカーディナルの心情について書いてみたいと思います。



ほぼ全ての記憶を失ったカーディナル

saoカーディナル

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

アニメでは尺の関係などでカーディナルという人物のほんの一部分だけしか描かれていません。

しかし、原作では二百ページ弱という長い長いカーディナルとの会話の中に、彼女がこれまで行った行動や心情が散りばめられています。

まず、カーディナルには過去の記憶がほとんど存在しません…。

クィネラの魂を上書きされた女の子の魂が消滅し、その女の子の支配権を確立した時にはコピー元であるクィネラの記憶を持っていたカーディナル。

【SAOアリシゼーション】第十三話②カーディナルvsアドミニストレータ

しかし、大図書室に逃げ込んだ後、アドミニストレータを抹消するには恐ろしく長い時間がかかることを確信したカーディナルは自らの魂の整理を決断します。

なぜ魂の整理が必要なのかというと、魂のデータ容量には限界があるから。

【SAOアリシゼーション】第十三話①アドミニストレータの過ち

約百五十年分と言われる魂のデータ容量の限界…カーディナルにはまだ空きがあったものの、これから長期に亘るアドミニストレータとの戦いに備えてさらなる空き容量をつくる必要があったのです。

魂の整理は非常に危険な作業であり、コマンドひとつでそれまで鮮明に再生できた記憶が、跡形もなく消え去ってしまいます。

たくさんの人体実験をしてきたアドミニストレータでさえ、ハイリスクな記憶の直接編集には踏み切れず、表層的な記憶のみを消去するにとどまっていました。

その危険な、まるで綱渡りのような記憶の直接編集によってカーディナルは自らがクィネラであった頃の記憶の全てと、アドミニストレータとなってからの記憶の九十七パーセントを消去したのでした…。

「そうじゃ。おぬしに語って聞かせたクィネラの長い長い物語は、実はわしにとっても実体験ではなく、消去前に書き記しておいた知識でしかないのじゃ。わしはもう、産み育ててくれた親の顔も思い出せん。毎夜眠りについたベッドの温もりも、好物だった甘焼きパンの味も……言うたじゃろう、わしは人間的情緒の一切を持たぬと。記憶と感情のほぼ全てを失い、魂に焼き込まれた《狂ったメインプロセスを停止せよ》という命令にのみ従って活動するプログラム。それがわしという存在じゃ」

ソードアート・オンライン12アリシゼーション・ライジングより



少女が二百年の孤独の果てに求めたもの

sao カーディナルの望み

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

カーディナルは大図書室に籠りながら、シャーロットをはじめとする監視ユニットたちの眼を通して世界を見聞きし続けました。

決して触れることはできませんでしたが、カーディナルにとって監視ユニットを通して見る世界はとても美しく、人間たちは生の輝きに満ちているように見えたのでした。

もし、自分の魂に《メインプロセスの過ちを正すべし》という行動原理が焼き付けられていなければ…この体の主である家具職人の娘はこの美しい世界で平凡な一生を送り、いつか来る最期には家族に看取られて、いまわの際に幸福な生涯を追想することもできたはずと考えたこともありました…。

「なら……あんたにも、純粋なる貴族の血が流れているはずだ。己の利益と、欲望のみを追求する遺伝子が……。なぜあんたは、全てを投げ出し、逃げようとしなかったんだ?なぜこんな場所でたった一人、二百年も待ち続けたんだよ……?」

自らを心を持たない機械のように言い切るカーディナルでしたが、キリトはカーディナルの時折見せる表情や仕草から自分たちと同じ喜怒哀楽を持つ人間だと確信し問いかけます。

キリトの言うように、アドミニストレータでも追跡できないくらい遠くの辺境の村に逃げて平凡な女の子として恋をし、幸せのうちに老いて死ぬこともできたのですから。

カーディナルはにこりと笑い、自分の望みはアドミニストレータの排除と世界の正常化だけだと言いますが…

「……いや……違うかな……。わしにも……わしにも、欲望はある。たった一つ……。この二百年……どうしても知りたかったことが……」

sao カーディナルの200年

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

「……これが、人間であるということか」

二百年という気が遠くなるような長い長い孤独の日々…この少女は大図書室の中で本に囲まれながらたった一人で過ごしてきました。

長い時間の中であらゆる思索を重ね、世界を見聞きしてきたカーディナル。

人であった頃の全ての記憶を失った彼女が最後に知りたかったのは”他の人間との触れ合い”だったのです。

誰かと言葉を交わし、手を取り合い、魂の接触を感じること…それこそが”人間であるということ“。

sao カーディナル人間とのふれあい

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

「……あったかい……やっと……報われた……わたしの、二百年は……間違いじゃなかった……この温かさを知っただけで……わたしは満足……報われた、充分に……」

絶対的な力を持つアドミニストレータを排除するというほぼ不可能な目的を果たすために二百年という歳月を重ね、限りない絶望の中で言葉遣いすら変わってしまったカーディナルが、自分のことを”わたし”と言っていた小さな女の子に戻ったわずかな瞬間でした…。


アニメでは時間の関係でどうしても情報が少なく、カーディナルの内面を知ることが難しい内容でした。

原作を読んでいる人で、なおかつカーディナルのファンの方々は残念に思った回だったかもしれませんね。

アニメを見てカーディナルのことが好きになった人は原作小説の、特に地の文に注目してみてください。川原礫先生の繊細な心理描写が光っていて、よりカーディナルのことを深く知ることができると思います。

山田孝太郎 (著), 川原 礫 (原著), abec (イラスト, デザイン)

次回に続く…

【SAOアリシゼーション】第十三話⑤カーディナルの短剣と剣の記憶
【アニメSAOアリシゼーション】概要や感想記事まとめ

コメント