©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回の続き…

死闘の中、自分自身にダメージを負ってでもキリトを打ち倒す覚悟を決めたファナティオは《リリース・リコレクション》(記憶解放術)を唱えます。
解放された天穿剣は八方に光を発射し、敵味方、そして使い手のファナティオにも破壊的なダメージを与えていきます。
アニメでのキリトはまだまだ元気そうでしたが、原作ではファナティオの攻撃を受け続けたことで天命が尽きる寸前まで追い込まれていました…。
ユージオの武装完全支配術
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
今だ――今しかない!
キリトからの合図はありませんでしたが、ユージオの理性と直感はその瞬間を逃しませんでした。
天穿剣に全ての者の注意が向き、発動の隙が大きいユージオの《武装完全支配術》を止められる人間が誰もいなくなった一瞬の時間…
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「エンハンス……アーマメント!!」
逆手に持ち替えた青薔薇の剣を、全身の力を込めて大理石の床へと突き立てるユージオ。
その瞬間、剣から迸る氷結波が破裂音を伴いながら前方へと伸びていき、周囲にいる全ての者を呑み込んでいきます。
「咲け――青薔薇ッ!!」
氷結波はユージオの叫びに呼応するように無数の氷の蔓を作りだし、整合騎士たちの自由を奪って最後には無数の氷の薔薇を咲かせました。
咲いた薔薇からは白い凍気が撒き散らされますが、この凍気の源は捕えた者の天命。
ユージオの武装完全支配術は、氷の薔薇に全身から天命を吸い出される間は縛めを破るだけの力が出ないという拘束向きの術式でした。
ユージオは”整合騎士アリスの動きを止めるという目的”のためだけに術の性質を決定したのです。
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然しものファナティオもこの氷の拘束からは逃れられずに完全に動きを止めます。
この場面、アニメでは氷の中で俯いた感じで描写されていますが、原作小説の挿絵は真っ直ぐにこっちを見るファナティオの姿が描かれています。
アリシゼーション・ライジング/イラスト:abec
SAOが人気作品になった大きな理由のひとつにabec(BUNBUN)さんのイラストの存在があったと思いますが、アニメの十三から十六話にあたる原作小説『アリシゼーション・ライジング』には印象的なイラストが多数掲載されているのでアニメだけではなく是非小説もチェックしてみてください。
「キリト……待ってて、すぐ治癒術を……!」
ファナティオの動きが止まったことを確認したユージオは術を止め、キリトの治療を行おうとします。
止まらないファナティオ
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「だめだ、技を止めるな!あいつはこれくらいじゃ倒れない……」
鮮血を吐き出しながらもユージオに完全支配術を継続するよう指示するキリト。
キリトは生死を分ける戦いのなかで、ファナティオという人間を深く理解したのかもしれませんね。
その後、すぐさま武装完全支配術の詠唱に入るキリトですが、原作ではこの時点で立っているのもやっとの重症で血を吐き出しながら術式を唱えているという描写になっています。
一刻も早く治療をしなければ命すら危うい状態ながら、回復よりもファナティオへの止めに全精力を注ごうとするキリト。
その様子を見たユージオはそこまで焦らなくても氷の檻はそう簡単に破れやしないと考えていました。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
しかし、全身を幾重にも氷の蔦に巻き取られ、完全に動きを封じられたファナティオが攻撃してきたのです。
「お前に……お前らに、正義なんかない!」
ユージオは涙を流しながら両手にいっそう力を込めてファナティオの動きを封じようとしますが、止めることができません。
アニメではユージオがいきなり正義云々を叫びますが、原作ではユージオの感情の動きがしっかりと描かれています。
――本当に、人間なのか。
止まらないファナティオの異常な執念に恐怖を感じ、ファナティオにこれほどまでの力を与えているのは一体何なのかとユージオは考えます。
「我ら整合騎士の最大の任務は人界とそこに暮らす民を守ること」
先刻ファナティオがキリトに言っていたことを思い出したユージオ。
アリスの記憶を奪って別人に作り変えたアドミニストレータの手先である憎むべき整合騎士が、高等貴族に蔑まれ搾取されている一般民のために我が身を犠牲にして戦っている正義の騎士であってはならない、”整合騎士が正義の担い手”だなどということがあってたまるかという思いから発した言葉が”お前らに、正義なんかない!”だったのです。
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自分がどれだけ怒りと憎しみを注ぎ、全ての力を込めても止めることができない《ファナティオの正義》に圧倒されユージオは悟りました。
――勝てない。今の僕じゃ、あの人には、勝てない。
「憎しみじゃ、あいつには勝てないよ、ユージオ」
アリスを取り戻したい気持ち、もう一度会いたい気持ち、アリスを愛する気持ち、それらはファナティオの正義に劣るものではない、とユージオを諭すキリト。
キリトはゆるぎない決意を持って最後の一句を唱えます。
「エンハンス・アーマメント!!」
この十五話は凄く短く感じた回でした。
話自体は時間の縛りもあることからかなりカットしていましたが、特に破綻することもなくスピーディでとてもよかったと思います。
ユージオが武装完全支配術を使うタイミング、演出にも痺れましたね。
あと個人的に生田目仁美さんの声が好きなのでうれしかったです。
次回「金木犀の騎士」ではいよいよ整合騎士アリス・シンセシス・サーティとの戦いになります。


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