2021年10月30日公開のアニメ映画『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』を早速鑑賞してきました。
事前に原作小説や漫画版なども見返して、自分の中のSAOを「ユナイタル・リング編」から「アインクラッド編」に引き戻し、万全の態勢で映画館へ。
※『ソードアート・オンライン プログレッシブ(SAOP)』の概要や原作小説・漫画については以下のURLを参照してください。
アニメSAOは「アリシゼーション編」から質が大きく低下してしまいました。
「War of Underworld」では作画は改善され、特にベルクーリとベクタの戦闘シーンは良かったと思います。しかし、ストーリーに関しては相変わらず酷い有り様でした…。
ここからシリーズが持ち直せるかどうかは、今回の『劇場版SAOP星なき夜のアリア』次第だと思いながら鑑賞しました。
ストーリーに関しては「ん?」と疑問に思う点がいくつかありましたが、それを補って余りある素晴らしい戦闘シーンは「これぞSAO!」と思わせる出来栄えでした。
《傑作とまでは言えないものの良作なのは間違いなく、映画館で見る価値あり!》というのが僕の総評です。
それでは印象的だったシーンなどを中心にいろいろと書いていきたいと思います。
ネタバレを多少含みますのでまだ鑑賞していない人はご注意を!
『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』の感想
アスナ視点で描かれるアインクラッド
SAOの舞台になる「浮遊城アインクラッド」。
いろいろなシリーズで何度もこの城の映像を見てきましたが、今回のアインクラッドもなかなか良き。SAOファンならアインクラッドを見るだけで一気に物語の中に入っていけますよね。
さて、肝心のストーリーについてですが、原作小説第1巻の169ページまでを基にしており、アインクラッド第一層攻略の部分が描かれています。
原作とは異なる点として、物語が”アスナ視点”で進んでいくところが挙げられます。
この点に関しては、漫画版の「ソードアート・オンライン プログレッシブ」に近い印象を受けました。
新キャラ「ミト」の必要性
ただし、今回の劇場版にはオリジナルの新キャラクター・兎沢深澄(キャラクターネーム:ミト)が登場します。
私立エテルナ女子学院に通うゲーム好きな少女。
学院のクラスメイトで、心を許せる数少ない友人である明日奈を《SAO》の世界に誘う。
原作小説のストーリー展開を考慮すると、このミトというキャラクターが必要なのかどうかについては判断が難しいところですね…。
良かったと思ったのは序盤のアスナを引っ張る存在という点。
元ベータテスターであるキリトが初心者にMMORPGの基本やSAOのシステムなど、生き残るための術を教えたように、ミトもアスナに同様の知識を伝授します。
これに関しては、原作小説では十分に納得がいかなかったアスナの序盤の行動を上手く補完する役割を果たしていると感じました。
走れ。突き進め。そして消えろ。大気に焼かれて燃え尽きる一瞬の流星のように。
その一念を抱き、アスナは宿屋を出ると、用語ひとつとっても聞き覚えのないMMORPG世界の荒野に踏み出した。自分の武器を選び、習得した技ひとつだけを頼りに、誰も訪れた形跡のない迷宮の奥底にまで達した。
『ソードアート・オンライン プログレッシブ』001より引用
いくらアスナが優等生だとしても、右も左も分からないSAOの世界にいきなり順応し、ベータテスターたちを上回るスピードで成長するのはさすがに無理があるのではないかと思います。
ちなみに、漫画版では情報屋のアルゴから「SAO攻略本」を受け取り、それを読むことでさまざまな知識を習得するという設定になっています。これはこれで良い。
アルゴにもらう攻略本の代わりがミトという設定なら悪くないどころかグッジョブ!という感じだったんですけどね。
ミトの存在がマイナスに働いたと思われる点は、「アスナの悲壮感」が薄れてしまったこと。
原作では高校受験が目前に迫った時期にSAOという魂の牢獄に囚われ、現実の世界や時間が奪われていくことへの恐怖や怒りが随所に描かれています。
ゲーム内に友人と呼べる存在もおらず必要最低限の知識だけを頼りに行動していたことで、その悲壮感はかなり強烈なものがありました。
原作の「わたしは、美味しいものを食べるために、この町まで来たわけじゃないもの」というセリフにも深い真実味がありました。
しかし、劇場版では元ベータテスターのミトと一緒に行動したことで、アスナがかなり楽しんでいるように見えます。
良さげな宿屋に美味しい食事があり、後にキリトに食べさせてもらった「黒パン+ヨーグルトクリーム」の味もそれほど感動的ではなかったのではないかと思ってしまいました(笑)
ミトは良い意味でも悪い意味でも物語にアクセントを加える存在だったことは確かで、原作を読んでいる人たちにとっても新鮮な気持ちで作品を楽しめたはずです。
ただし、個人的には今回の作品でのミトの絡め方には少々不満が残りました。
例えば序盤でミトと別れた後、イルファング・ザ・コボルドロード(コボルド王)との戦いにミトを登場させず、次回の『冥き夕闇のスケルツォ』で再登場させる方がアスナの感情の整理やストーリーの進行がスムーズになったのではないかと思います。エギルの見せ場「ワールウインド」も見たかった…。
ただ、高い知能や戦闘能力、少しキリトに似ている佇まい、そしてサイスという珍しい武器を使った攻撃モーションは魅力的だし、人気声優である水瀬いのりさんの演技もさすがの安定感だったので、次回以降の活躍に注目したいと思います。
物語のターニングポイント|衝撃のリトルネペント戦
ストーリー的に面白いと感じたのは、アスナとミトが自走捕食植物モンスター「リトルネペント」の予想外の攻撃を受けて窮地に陥るシーンです。
この場面は物語のターニングポイントともいえるもので見応え十分だったのですが、実はキリトも同じような経験をしてるんですよね。
プログレッシブではなく、SAO本編の8巻『アーリー・アンド・レイト』に収録されている「はじまりの日」というエピソードで、キリトも「リトルネペント」の群れに苦戦しゲームオーバー寸前まで追い詰められています。
「リトルネペント」強すぎ(笑)
プレイヤーの人間性についての話など、劇場版と通じる部分もあるので原作既読者には興味深かったのではないかと。
劇場版のそのシーンで、もし自分だったらどう行動するかを考えてみましたが、おそらく私もミトと同じ選択をするだろうと思います。
「圏内事件」におけるグリセルダとグリムロックのエピソード同様、人間の複雑さについて深く考えさせられる内容でした。
アスナが、SAOで何千人もの罪なき人々を殺した茅場晶彦に対して「本当に恨んでいるのかさえ解らない」と語ったように、主人公のキリトやアスナですら単純な正義マンではありません。
人間の心理や行動は非常に複雑で、一筋縄ではいかないものだと改めて感じました。
とにかく、かっこよく登場したキリトも含め、いろいろと衝撃的なシーンでした。
あと、キリトがマップデータをアスナに渡すシーンは「陰」の性格が出ている感じで面白かったです(笑)
作品の大きな見どころ|”脇役”キリトのかっこよさ
それはそうと、今回はアスナが主役ということで脇に徹するキリトのかっこよさが目立ってましたよね?
「マザーズ・ロザリオ編」を見れば分かるように、キリトは主役としてだけでなく脇役としても、というか脇役のほうがかっこいいと個人的に思っています。
アスナとスリーピング・ナイツのために、クラインと共に数十人の敵と死闘を繰り広げたり、パーティーでは空気を読んで自分は参加せずにごちそうだけ置いていったりと、キリトの”デキる男”ぶりが存分に発揮されていましたね。
アスナ視点の物語にしたことでキリトのかっこよさがより引き立ったのは、大きなメリットの一つだと思います。
特に、劇中の最終戦でアスナとミトが会話している裏で、キリトが一人でコボルド王の攻撃を「ホリゾンタル」「スラント」「バーチカル」といったシステム外スキルを駆使して凌ぎ続けるシーンは本当に格好良かったです!
強いて言えば、アニメ版でも小説版でもアスナの剣力の高さについて触れるシーンがあったので、それを活かしてほしかったというのが少し残念なポイントかもしれません。
漫画版と同様に、アスナの高い指揮力にキリトが心を動かされるシーンがあったのは良かったと思います。
大迫力の戦闘シーンこそ本作最大の魅力
最後に『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』最大の魅力だと思う戦闘シーンについて。
アリシゼーション編は論外として、WoUのベルクーリ対ベクタ戦やアスナ対ヴァサゴ戦における線の太い骨太な戦闘シーンは素晴らしかったと思います。
しかし、個人的にはWoUの戦闘シーンはSAOらしさに欠けていたように感じました。表現するのは難しいのですが、まるで別のアニメを見ているような印象を受けたのです。
一方で、今回の劇場版の戦闘シーンはSAOシリーズの正統進化といった感じ。
音響の良い映画館だったのもあって、キリアスの連携からの「バーチカル・アーク」は迫力抜群。まさに鳥肌もの!
細かい不満点も全て吹き飛ぶ爽快な瞬間でした。
まとめ
以上が『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』の感想となります。
本当はもっと細かい部分についても書きたかったのですが、過剰なネタバレは控えるべきだと考え、この程度に留めました。
【本日より公開】
「劇場版 #ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」が、本日より公開です!皆様に楽しんでいただくために、過度なネタバレを含む投稿は胸の内に留めていただけますと幸いです!
これは、ゲームであっても遊びではない――#sao_anime pic.twitter.com/MblHydWedy
— アニメ ソードアート・オンライン 公式 (@sao_anime) October 29, 2021
アニメ版のSAOアリシゼーション編が物足りない出来だったため、今回の『星なき夜のアリア』についても不安を感じていました。しかし、新監督の河野亜矢子さんが上手く物語をまとめてくれたと思います。
河野監督には、アニメSAOを大ヒット作品にした伊藤智彦監督のように、今後も作品に愛情を注ぎ、素晴らしい作品を作り続けてもらいたいと願っています。
来年は『冥き夕闇のスケルツォ』を公開予定らしいのでミトの扱いも含めて期待しています。
今回の『劇場版SAOP星なき夜のアリア』は見る価値ありの良作だと思うのでまだ見ていない人は是非映画館に足を運んでみてください!
関さんの「ちょお待ってんか」が聞きたかったなぁ…。
⇒『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』オフィシャルサイト
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