会話の中で口を滑らせてしまいアリスの事を”セルカのお姉さん”と言ってしまったキリト。
アリスに問い詰められたキリトは、覚悟を決めて全てを話す事にしました。

右目の封印
アリス・ツーベルク
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「君の中には、君以外の人間に与えられた、しかしそうとは意識できない命令が存在する」
キリトは自分が知っているこの世界の真実を順序立ててアリスに説明します。
- 整合騎士は天界から召喚された存在などではなく元々は人間
- 整合騎士はアドミニストレータによって人の子として生まれ育ったという記憶を封じられている
- アリス・シンセシス・サーティの本当の名前はアリス・ツーベルク
アニメでは非常に物分りが良いアリスですが、原作では「馬鹿な」や「有り得ない」を連発し、なかなかキリトの言う事を信じようとしません。
けれども、エルドリエやデュソルバートの事を話していく内に、少しずつキリトの言葉を受け入れ始めます。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「私の口が、喉が……心が、憶えている」
アドミニストレータに「記憶の欠片」を奪われている以上、アリスにはキリトが言う”ルーリッド村の記憶”や”家族との思い出”を思い出す事は出来ませんでした。
しかし、血を分けた妹「セルカ」の名前を毎日、毎晩呼んだ事を”アリスの心”は確かに憶えていたのです…。
ここのシーンはアニメでは意外と淡白に表現されていますが、原作ではアリス・シンセシス・サーティの不憫さが深く描かれています。
嗚咽を漏らすアリスを見たキリトが伸ばした右手を手で強く払い「見るな!」と叫ぶシーンもカットされていますが、誇り高いアリスの性格をよく表しているのにもったいないなと思いました。
全ての計画が上手く運び、”村娘アリス・ツーベルク”を取り戻した時、ここにいる”整合騎士アリス・シンセシス・サーティ”は消滅するのがあるべき形…
キリトはそう自分に言い聞かせようとしましたが、自分の横で泣きじゃくる整合騎士をどうしようもなく不憫に思うのでした。
なぜアリスがこれほどまでに家族の温かさを渇望していたのかは、原作を読めば理解できます。(アニメではカットされているので…)
「いつかダークテリトリーの邪悪な者どもを打ち滅ぼし、騎士の責務を全うしたその時には、再び神の国に迎えられて……私の両親やきょうだいたちのことを、全て思い出せると……最高司祭様は……おっしゃって……」
SAOアリシゼーション・ディバイディングより
アリスの独立宣言
アドミニストレータが村娘アリスから「記憶の欠片」を奪い、代わりに「敬神モジュール」を埋め込んで創りだされたのが自分という事を理解した整合騎士アリス。
そして、皆に必要とされているのは村娘アリスであって自分ではない、自分は誰からも必要とされていない…ならば皆が望むように自分の体を村娘アリスに返さなくてはならない、とアリスは気丈に微笑みながら話します。
ただひとつだけ、自らが消滅する前に物影からほんのひと目だけでいいのでセルカや家族たちの姿を見たい、と整合騎士アリスは望みます…。
キリトが「必ずルーリッドに連れて行く」と約束すると、アリスはしばらく時間を置いた後、凛とした表情で教会との決別を宣言しようとします。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「ああっ……右眼が、焼けるようです……!」
しかし、その毅然たる宣言は突如鋭い悲鳴へと変わりました。
右眼に現れた「SYSTEM ALERT」という真っ赤な文字…キリトは反射的にユージオが語った現象と同一だと考えました。

この右眼の封印はある種の心理的ブロックで、発現のトリガーは”魂に刻み込まれた規則に抗おうとすること”。
与えられた規則を積極的に破ろうとすると、まず右眼の痛みが現れ、続いて「SYSTEM ALERT」の赤文字で対象者の思考を乱し、改めて禁忌への畏怖心を刻み付ける…
元々遵法精神の強いアンダーワールド人に、この心理障壁が加われば規則を破ろうと考える者など一人もいないのでは、とキリトは考えます。
しかし、もしこの心理障壁をラースのスタッフがアンダーワールド人に施していたのなら、それは彼らの目的と大きく矛盾します。
なぜならラースの目的は、人間と同じ創造性や適応性を持つ真なる人工知能(ボトムアップ型人工知能)を作る事、もう少し分かりやすく言うと”与えられた規則の正悪を自分で判断できる人工フラクトライトを生み出すこと”だからです。

だとすれば、このシステムアラートを仕組んだ人間は、意図的にこの実験(プロジェクト・アリシゼーション)の成功を遅らせている事になるとキリトは考えます。
このあたりのキリトの考察もアニメではカットされていますが、なかなか面白いところです。
右眼の封印を施した者が”神たちの一人”だとキリトに教えられたアリスは、家族の、妹の思い出を奪い、そして服従を強要するためにこんな封印まで施した神々に対して凛と響く声で叫びました。
「私は、人形ではない!」
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「最高司祭アドミニストレータ……そして名を持たぬ神よ!!私は、私の成すべきことを成すために……あなたと、戦います!!」
アリスは右眼と引き換えにアドミニストレータや神々からの独立を高らかに宣言したのでした。
例のごとく原作を半分以上カットした感じでしたが、アリスとセルカが夜空を見上げるシーンやアリス役の茅野愛衣さんの熱演は素晴らしかったと思います。
この回も含めて、キリトとアリスの壁登りのシーンは原作ではとても面白いのに、アニメでは作画や構成のせいで低評価なのがとても残念…。
原作小説はアニメの10倍は面白いので未読の方は是非読んでみてください。
次回に続く…


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