©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回の続き…
第十五話「烈日の騎士」のあらすじと感想③
リリース・リコレクションによる天穿剣の解放
死闘の中、ファナティオは自身にもダメージを与える覚悟で、キリトを打ち倒すために「リリース・リコレクション(記憶解放術)」を唱えます。
解放された天穿剣は八方に光を放ち、敵味方の区別なく、そして使い手のファナティオ自身にも破壊的なダメージを与えていきます。
アニメではキリトがまだ余力を残しているように描かれていましたが、原作では彼はファナティオの猛攻を受け続けたことで、天命が尽きる寸前まで追い込まれていました。
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今だ――今しかない!
キリトからの合図はありませんでしたが、ユージオの理性と直感が、この決定的な瞬間を見逃しませんでした。
ユージオの武装完全支配術、青薔薇の氷結波
天穿剣に全ての者の注意が向けられ、ユージオの「武装完全支配術」の発動を止められる者が誰もいなくなった、わずかな時間。
「エンハンス……アーマメント!!」
ユージオは青薔薇の剣を逆手に持ち替え、全身の力を込めて大理石の床へと突き立てました。
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その瞬間、剣から迸る「氷結波」が破裂音を伴いながら前方へと伸び、周囲にいる全ての者を呑み込んでいきます。
「咲け――青薔薇ッ!!」
ユージオの叫びに呼応するように、氷結波は無数の氷の蔓を生み出し、整合騎士たちの自由を奪いました。そして、最後には無数の氷の薔薇を咲かせました。
咲いた薔薇からは白い凍気が撒き散らされます。この凍気の源は、捕らえられた者たちの “天命” でした。
ユージオの武装完全支配術は、拘束に特化した術式でした。氷の薔薇に全身から天命を吸い取られている間は、縛めを破るだけの力が出ないのです。
ユージオは、”整合騎士アリスの動きを止める” という明確な目的のためだけに術の性質を決定したのでした。
氷の拘束を破るファナティオの驚異的な意志力
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
然しものファナティオも、この氷の拘束からは逃れられず、完全に動きを止めてしまいました。
アニメではファナティオが氷の中で俯いている姿で描かれていますが、原作小説の挿絵では真っ直ぐに前を見つめる彼女の姿が描かれています。
アリシゼーション・ライジング/イラスト:abec
SAOが人気作品となった大きな理由の一つに、abec(BUNBUN)さんのイラストの存在があったと考えられます。
特に、アニメの第十三話から第十六話に相当する原作小説『アリシゼーション・ライジング』には、印象的なイラストが多数掲載されています。
アニメだけでなく、ぜひ小説もチェックしてみてください。
「キリト……待ってて、すぐ治癒術を……!」
ファナティオの動きが止まったことを確認したユージオは、術を解除し、急いでキリトの治療を行おうとします。
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「だめだ、技を止めるな!あいつはこれくらいじゃ倒れない……」
鮮血を吐き出しながらも、キリトはユージオに完全支配術の継続を指示します。
キリトは、この生死を分ける戦いの中で、ファナティオという人間を深く理解したのかもしれませんね。
その直後、キリトは武装完全支配術の詠唱に入ります。
原作では、この時点でキリトは立っているのもやっとの重症状態で、血を吐きながら術式を唱えているという描写になっています。
一刻も早い治療が必要な危険な状態にもかかわらず、自身の回復よりもファナティオへの止めを刺すことに全精力を注ごうとするキリト。
その様子を見たユージオは、「そこまで焦らなくても氷の檻はそう簡単に破れやしない」と考えていました。
氷の拘束を破るファナティオの驚異的な意志力
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しかし、予想に反して、全身を幾重もの氷の蔦に巻き取られ、完全に動きを封じられたはずのファナティオが攻撃を仕掛けてきたのです。
「お前に……お前らに、正義なんかない!」
ユージオは涙を流しながら、両手にいっそう力を込めてファナティオの動きを封じようとしますが、その努力も虚しく止めることができません。
アニメではユージオがいきなり正義について叫ぶ描写になっていますが、原作ではユージオの感情の動きがより詳細に描かれています。
ユージオの葛藤、整合騎士の正義への疑問
――本当に、人間なのか。
止まらないファナティオの異常な執念に恐怖を感じたユージオは、彼女にこれほどまでの力を与えているものは一体何なのかと思いを巡らせます。
「我ら整合騎士の最大の任務は人界とそこに暮らす民を守ること」
ユージオは、先ほどファナティオがキリトに語ったこの言葉を思い出しました。
アリスの記憶を奪い、別人に作り変えたアドミニストレータの手先である憎むべき整合騎士。
その彼らが、高等貴族に蔑まれ搾取されている一般民のために、自らの身を犠牲にして戦う正義の騎士であるはずがない。
“整合騎士が正義の担い手” などということがあってはならない。このような複雑な思いが、ユージオの中で渦巻いていました。
そして、その感情の奔流から発せられた言葉が、「お前らに、正義なんかない!」だったのです。
最終決戦へ、キリトの武装完全支配術の発動
ユージオは、自分がどれほど怒りと憎しみを注ぎ、全ての力を込めても止めることができない《ファナティオの正義》に圧倒され、ある事実を悟りました。
――勝てない。今の僕じゃ、あの人には、勝てない。
そんなユージオに、キリトは語りかけます。
「憎しみじゃ、あいつには勝てないよ、ユージオ」
キリトは、アリスを取り戻したい気持ち、もう一度会いたい気持ち、アリスを愛する気持ち、それらはファナティオの正義に劣るものではないと、ユージオを諭します。
そして、ゆるぎない決意を持って、キリトは最後の一句を唱えます。
「エンハンス・アーマメント!!」
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この第十五話は、すごく短く感じた回でした。
時間的制約のため、原作からかなりの部分がカットされていましたが、ストーリーの流れは特に破綻することなく、スピーディーな展開でとても良かったと思います。
ユージオが武装完全支配術を使うタイミングと演出にも痺れましたね。
あと、個人的に生田目仁美さんの声が好きなので、彼女の声が聞けてうれしかったです。
次回「金木犀の騎士」では、いよいよ整合騎士アリス・シンセシス・サーティとの戦いが始まります。
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