©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回のつづき…
右眼の封印を破り、ティーゼたちを救ったユージオ。
左腕を切り落とされ、喚き散らすウンベールに対し、ライオスは止血をすれば問題ないと冷ややかに言い放ちます。
ライオスは、ロニエの脚を縛っていた縄を必死の形相で傷口に巻き付け、止血しようとするウンベールを横目に見ながら、不敵な笑みを浮かべて壁に掛けられている長剣に手をかけました。
第十話「禁忌目録」のあらすじと感想③
ライオスの非道な目的とユージオへの処刑宣告
ライオスたちの真の目的は、ユージオの予想通り、ティーゼたちを利用してユージオ自身やキリトを陥れることだったのです。
ライオスは、ユージオが禁忌目録に違反したという望外の成果に喜び、さらに嬉々として話し始めました。
「貴族裁決権の対象は、原則として下級貴族と私領地民だけだが……禁忌を犯した大罪人とあらばその限りではない!」
ユージオは、一刻も早く剣を構えて応戦しなければならないと思いました。しかし、破裂した右眼の痛みよりも、剣でウンベールを切ったという衝撃が大きすぎて、身じろぎすらできません。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「ユージオ修剣士、いや、大罪人ユージオ!!三等爵士嫡男たるこのライオス・アンティノスが、汝を貴族裁決権により処刑する!!」
ユージオは、ここで殺されるわけにはいかないと思う一方で、「もういいじゃないか」という気持ちにもなっていました。
なぜなら、先ほどの行動によって整合騎士になりアリスに会うという夢は永遠に絶たれてしまったものの、最後にティーゼたちを助けることができたので、犯してしまった罪の中にも一片の救いがあったと感じたからです。
キリトvsライオス
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「剣を引け、ライオス。お前にユージオは傷つけさせない」
キリトの漆黒の剣が、ライオスがユージオの首目掛けて振り下ろした剣を、すんでのところで受け止めました。
ライオスは、禁忌目録に背いた大罪人を裁いている途中に邪魔をするなと警告。しかし、キリトはライオスを睨みつけながら、彼をゴブリンに例えて罵倒しました。
キリトに罵倒されたライオスは、残忍な笑みを浮かべながら、キリトとユージオの両方を処分できることを喜びました。
ハイ・ノルキア流秘奥義「天山烈波」とセルルト流秘奥義「輪渦」
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ライオスは長めの柄を両手で握り、上段に構えて、ハイ・ノルキア流の秘奥義「天山烈波」を放とうとします。
その禍々しい剣気を感じ取ったユージオは、キリト一人では危ないと感じたため、無意識のうちに立ち上がろうとしました。
「大丈夫だ」
キリトはユージオの右肩を押さえ、低く穏やかな声で囁きました。
次の瞬間、ユージオは驚いて左眼を見開きました。なぜなら、アインクラッド流の技はほとんどが片手持ちなのに、キリトが漆黒の剣の柄を “両手” で握っていたからです。
さらにユージオを驚かせたのは、両手持ちでは短いはずの漆黒の剣の柄や刀身が、かすかな音を立てながら伸びていることでした。
大型化した漆黒の剣を両手で持ち、右の腰上付近に構えるキリト。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
――セルルト流秘奥義「輪渦」。
「そんな代物は、我が秘奥義で打ち砕いてくれるわッ!!」
「来い、ライオス!」
赤と緑、互いの剣気が唸りを上げ、部屋を染め上げます。二人は雷鳴を合図にして、同時に動き出しました。
キリトの剣技選択の理由
剣と剣がぶつかり合った瞬間、ユージオはなぜキリトがアインクラッド流を使わなかったのかを悟りました。
ウォロとの戦いの時のように、ハイ・ノルキア流秘奥義の天山烈波を防ぐには、激突と同時に後方に跳んで技の威力を受け流しつつ、二撃、三撃と技を繋ぐ必要がありました。
しかし、この狭い部屋では、それは不可能だとキリトは理解していました。だからこそ、キリトはセルルト流の両手技である輪渦を繰り出したのです。
ライオスの自尊心と剣気の変化
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「どうだッ……どうだァーッ!貴様ごとき平民にッ!!このライオス・アンティノス様が後れを取るわけがないのだッ!!」
ライオスは眼と口を歪ませ、まるでゴブリンのような醜悪な表情を浮かべながら絶叫。
そして、圧倒的な自尊心の強さによって、ライオスの剣気はいつしかどす黒く変わり、体全体を覆い尽くし、キリトを押し込んでいきました。
リーナ先輩との絆が生んだセルルト流秘奥義「輪渦」の二連撃
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「う……おおおッ!!」
鮮やかな翡翠色の輝き。キリトが放ったのはセルルト流秘奥義「輪渦」の二連撃でした。
これは、キリトが傍付きを務めていたリーナ先輩ことソルティリーナ・セルルトが、最終検定試合の決勝戦でウォロ・リーバンテインを最後の最後に破った大技。
リーナ先輩は、キリトとウォロの立ち合いの中で、「あらゆる秘奥義は型を崩されるとそこで停止してしまうが、斬撃の軌道を正確に後戻りした場合のみ、かなり長く持続する」という現象に気づきました。
そして、わずか半月の修練で、この輪渦の二連撃を身につけたのです。
キリトはリーナ先輩の傍付きだが、検定試合の直後に先輩は卒業してしまったため、この技を直接習う時間はなかったはずだ。つまり、キリトも一度見ただけで、師の技を自分のものとしたのだろう。
これこそが、修剣士と傍付き錬士のあるべき姿。
そしてこれこそが、剣の真髄だ。
ユージオの左眼から涙が溢れた。それはあまりにも見事な技への感動と、もっともっと剣を学びたかったという悔恨の涙だった。ぼやけた視界の中央で、再び放たれたキリトの輪渦が、ライオスの剣を真っ二つにへし折り――。
主席上級剣士の両腕を、手首の少し上で斬り飛ばした。
ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニングより
キリトとライオスの戦いは、アリシゼーション・ターニングの中で僕が一番好きなシーンです。
アインクラッド流を使わずにセルルト流を使ったキリト。
ユージオの言う通り、一撃の重さを追求したかったのは当然でしょう。しかし、それだけではなく、ライオスには到底理解できない「上級修剣士と傍付き錬士の絆の強さ」を剣に込めたかったという想いもあったのかもしれませんね。
次回につづく…
コメント