©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回の続き…
ファナティオとの死闘を制したキリトとユージオ。
瀕死のファナティオを前に、キリトは重大な決断を下します。それは、カーディナルから託された貴重な短剣を使い、彼女の命を救うこと。
ファナティオの治療をカーディナルに委ねた後、二人はカーディナルから送られた回復薬を飲みました。そして、新たな決意を胸に、次なる戦いへと歩みを進めていくのでした。
第十六話「金木犀の騎士」のあらすじと感想②
昇降盤と昇降係
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
大扉を抜けた先には、予想に反して51階への階段はありませんでした。上へ進む方法を模索していたキリトとユージオの頭上に、突如として差し渡し2メートルほどの金属の円盤が現れます。
「お待たせいたしました。何階をご利用でしょうか」
円盤を操作していたのは、無表情で抑揚のない声で話す少女でした。
「昇降係」と名乗ったこの少女は、“昇降盤を動かす” という天職を与えられてから107年の間に、いつしか自分の名前すら忘れてしまっていたのです。
「……あの空を……この昇降盤で、自由に飛んでみたい……」
「もし教会がなくなって、この天職から解放されたらどうするの?」というユージオの問いかけに対する昇降係の少女の答えは、非常に印象的でした。
この昇降係(アリシゼーション・ライジング)と、原作に登場する牢の獄吏(アリシゼーション・ターニング)の話は、天職の理不尽さや虚しさを鮮明に表現していると思います。
獄吏の話はアニメでカットされましたが、昇降係は原作の中でも非常に人気のあるキャラクターです。制作陣もそれを考慮し、丁寧に時間をかけて描写してくれたのでしょう。
円盤を貫く硝子筒の内部で風素を解放し、生み出された爆発的な突風を下向きに噴出することで、三人の体重に円盤自体の重さを足しただけの重量を持ち上げている。
雲上庭園でのアリスとの再会
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
昇降盤で到達可能な最上階、カセドラル80階の “雲上庭園” に二人は到着しました。
目の前に広がる光景は、どこか見覚えのあるものでした。柔らかそうな芝生、澄んだ小川、そしてそれらに付随する香りと音。
川の向こうにある小高い丘へと続く小道の先に、一本の樹木が目に入ります。その樹には、無数の十字形をした橙色の小さな花が咲いていました。
そして、彼女はその樹の幹に背中を預け、瞼を閉じて座っていました…。
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ユージオの複雑な心情
アリスを見つけたときのユージオの心情、これはとてもアニメで表現できるものではありません。
「あ……アリ……ス……」
ユージオが服の胸元を握りしめながら発したこの一言には、数えきれないほどの思いが込められています。
遥かな昔、毎日のように目にしていた輝き。その貴さも、儚さも知らず、いたずらに引っ張ったり、小枝を結びつけたりしたあの髪。
友情と、憧れと、仄かな恋心の象徴であった黄金の輝きは、ある一日を境にしてユージオの弱さ、醜さ、臆病さだけを意味するものへと変わってしまった。そしてもう、二度と見ることは叶わないはずだったあの煌めきが、今また手の届く場所にある。アリシゼーション・ライジング
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一方、整合騎士アリス・シンセシス・サーティは、侵入者であるユージオとキリトを冷徹に見定めています。
キリトたちは、もう少し待つようにと願い出るアリスの要求を無視し、完全支配術の詠唱前に先手を打つことを決意します。
その作戦は、”キリトがアリスの攻撃を体を張って止め、ユージオが短剣を刺す” というものでした。
「いったい何が、お前たちにそのような力を与えているのです?いったいなぜ、人界の平穏を揺るがす挙に及ぶのです?――やはり、剣で訊くしかないようですね」
アニメではカットされていますが、原作ではこのアリスの問いかけの中の「挙に及ぶのです?」と「――やはり、剣で」の間に、ユージオの複雑な思いが描かれています。
原作を読み返すと、随所に描かれるユージオの心情に深く心を動かされます。
――君のため、ただそれだけだ。
ユージオは心の中で叫んだ。しかし、それを言葉にしても、眼前の整合騎士アリスには何の意味も持たないことは解っていた。奥歯をきつく食い縛り、ただ懸命に、ユージオは足を前に動かし続けた。
アリシゼーション・ライジング
金木犀の剣、永劫不朽の神器の秘密
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
アリスが傍らの樹の幹に右手を添えた瞬間、樹は消滅し細身の長剣へと変化しました。
「あの剣、まさか、もう完全支配状態なのか」
キリトはそう呟くと、間髪入れずアリスに向かって突進し、ユージオもそれに続きます。
キリトは抜刀せずアリスの初撃を体で受け止めようと接近し、ユージオは短剣を刺す瞬間の隙を逃さないよう最適な位置取りで追走します。
しかし、あと一歩というところで、アリスの黄金の剣が無数の小片に分かれ、二人を襲います。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
猛烈な重さを持つ黄金の風は、まずキリトを打ち倒し、続いてユージオを横なぐりにしました。
アリスの「加減した」という言葉に、ユージオは心底戦慄。キリトも驚愕と恐怖で顔を蒼ざめさせていましたが、わずかな勝機を見出そうと、ユージオに完全支配術の詠唱を指示します。
そして、キリトは時間稼ぎのため、アリスに “黄金の剣の完全支配術の謎” を問いかけるのでした。
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アリスの神器・金木犀の剣(きんもくせいのけん)は、遥か古の時代に神が人間に与えた《始まりの地》に生えていた一本の金木犀を原形としています。これは人界の森羅万象の中で最も古い存在でした。
この剣は《永劫不朽(えいごうふきゅう)》の属性を持ち、神が設置した最初の破壊不能オブジェクトを原形としています。この特性こそが、アリスの武装完全支配術を信じがたいほど完全で万能なものにしている理由だったのです。
キリトvsアリス、圧倒的な力の差
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「では、整合騎士アリス……改めて、勝負!」
キリトは、アリスの金木犀の剣が自分の “黒いの” よりも遥かに格上であることを認識しつつも、接近戦からの連続技に持ち込めば優位に立てると考えました。
しかし、最初の一合で、その見通しの甘さが明らかになります。
アリスの剣術は、アインクラッド流に比べれば実戦向きではない古流の型であり、その腕前もキリトに勝るものではありませんでした。
それにもかかわらず、キリトは一方的に追い詰められていきます。
その理由は、金木犀の剣の “圧倒的な優先度” にありました。
この剣は、キリトの黒い剣の数倍にも達する重量を秘めており、弾くのはおろか、受け止めることすら至難の業でした。
ユージオの完全支配術と氷の拘束
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絶望的な戦いの中、キリトは一瞬の隙を突いてアリスの動きを封じます。
そのタイミングに合わせてユージオは完全支配術を唱え、ついにキリトごとアリスを凍らせることに成功。
ユージオは二人に申し訳ないという気持ちを抱きつつも、懐中の短剣でアリスを刺すべく近づきます。しかし次の瞬間、壁に突き刺さっていた金木犀の剣が再び無数の花弁へと分裂し、氷柱を削っていきました。
「なかなかの座興でしたが……たかが氷で、私の花を止められるはずもありません」
そう言ってアリスが剣を元の形へと戻そうとした時、キリトが絶叫します。
キリトの決死の反撃と白亜の壁の崩壊
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「エンハンス・アーマメント!!」
キリトが完全支配術を唱えて狙ったのは、アリス本人ではなく凝縮する寸前の金木犀の剣でした。
漆黒の影と黄金の花弁がぶつかり合ってできたエネルギーの塊は、巨大な爆発音を轟かせます。
破壊不能と思われていた “白亜の壁” は崩れ、キリトとアリスは塔外へと吹き飛ばされました…。
第十六話「金木犀の騎士」は、ファナティオ戦の決着から昇降係の話を経て、アリス戦まで一気に描かれました。
連戦に次ぐ連戦で作画班に限界が来たのか、ここ数回の作画の質には課題が見られますね。エフェクトによる表現の過度な依存も目立ちます。
今回のアリス戦では、アリスの一撃の重さを表現するためにわざとスローに描いたのかもしれませんが、戦いの魅せ方はやっぱり伊藤監督の時の方が良かったと思います。
一方で、限られた時間内で物語の整合性を保ちつつ、ライト層の興味を維持するためのスピード感にも配慮が見られるなど、制作陣の努力が伺えます。
今後も複雑な展開が続きますが、制作陣の奮闘に期待したいところ。
次回の「休戦協定」は、アリシゼーション編の中でも特に人気の高いエピソードです。
ユーモラスな展開からシリアスな場面まで、幅広い演出が要求される難しい回になりそうですね。
松岡さんと茅野さんの演技力なら、素晴らしい仕上がりが期待できるでしょう。
次回に続く…
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