前回のつづき…
第四話「旅立ち」のあらすじと感想②
現実世界でも経験したことのない猛烈な痛みを克服し、ゴブリンの隊長であるウガチを倒したキリト。
他の雑魚ゴブリンを威圧して散らした後、すぐさま傷ついたユージオのもとに向かいます。
ユージオの命の危機とセルカの覚悟
すでに意識がなく、今にも事切れそうなユージオの天命をチェックするキリトでしたが、恐ろしいほどの速度で激減する数字に驚愕します。
原作小説では、およそ2秒に1ポイント減ると書かれていますが、アニメでは1秒に10ポイントは減っていますね。
ステイシアの窓を開いた直後のユージオの天命が244くらいだったので、アニメだと25秒で0になる計算になります。ちょっと適当すぎますね。
ちなみに、このシーンでは原作小説でも文章に間違いがあります。
生命力――デュラビリティ・ポイントの表示は、【244/3425】となっていた。しかも、現在値がおよそ二秒毎に1という恐ろしいペースで減少していく。つまり、ユージオの命が尽きるまで、あとわずか二百四十秒――八分しかないということだ。
小説「ソードアート・オンライン9アリシゼーションビギニング」
244ポイントが2秒毎に1減っているので、正しくは残り488秒=8分でユージオの命が尽きる計算になります。原作では二百四十秒=8分となっているので、秒数の部分が誤っていますね。
最初読んだ時、一瞬自分の頭がおかしくなったのかと焦りました(笑)
即座に一刻の猶予もない状況だと察したキリトは、気を失っているセルカを起こし、ユージオの治療をするように言います。
「……無理よ……こんな傷……あたしの神聖術じゃ……」
「無理でもやってみるんだ!君はアリスの妹なんだろ!?」
「ユージオは君を助けにきたんだ、セルカ!アリスじゃない、君を助けるために!」
キリトの懸命な説得に、セルカは覚悟を決めます。
彼女の瞳には、数秒前までの怖れや躊躇いの色はもうありませんでした。
人から人へ天命を移動させる高位神聖術
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ユージオを助けるためにセルカができる手段は、危険な高位神聖術を試すことだけでした。
しかし、それにはキリトの力が必要であり、さらに、もし失敗した場合、キリトとセルカも命を落とす可能性があるとのことです。
「その時は俺の命だけで済むようにしてくれ。――いつでもいいぞ」
セルカは強い光を湛えた瞳で、キリトをまっすぐに見つめ頷きました。
「――トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、ライト・ハンド・セルフ・トゥ・レフト!!」
セルカが唱えたのは、人から人へと天命を移動させる神聖術。
もう少し詳しく説明すると、セルカが導線兼ブースター役となって、キリトの天命を引き上げた上で、ユージオに移動させる神聖術です。
原作では「トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、ライト・トゥ・レフト」となっていますが、アニメでは “ハンド・セルフ” という言葉が追加されています。
天命の移動が進むにつれて、キリトの全身を強烈な寒気が包み始めます。
「き……キリト……まだ、だいじょうぶ……?」
「問題ない……もっと、もっとユージオにやってくれ!」
キリトはセルカの問いかけに即座に答えましたが、すでに視力をほとんど失いつつあり、右手と右足の感覚も消失していました。
キリトの決意と仮想世界への深い関わり
アニメではカットされていますが、この時キリトが思っていたのは、”ユージオの命が救われるなら、どんな痛みにだって耐えてみせるし、この世界における命を失っても構わない” ということでした。
その理由は、もし自分が死んでもユージオの命さえ助かれば、先ほどのゴブリン集団が闇の国の先兵で、これから侵略が激化したとしても、ユージオが対策を取ってくれるはずだからです。
仮想世界内の出来事であり、実際の人間が被害を受けるわけではないのに、馬鹿らしいことを考えるなと思う人も多いかもしれません。しかし、キリトは昔からそういうキャラクターでした。
旧SAOでも、NPCを囮に使ってフィールドボスを攻略しようとするアスナと激しく対立したことがありましたね。
「ボスがNPCを殺している間にボスを攻撃、殲滅します」
「NPCは岩や木みたいなオブジェクトとは違う!彼らは…」
「生きている……とでも?あれは単なるオブジェクトです。たとえ殺されようとまたリポップするのだから」
「俺はその考えには従えない」
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
「気をつけたほうがいいよ。あの人も僕とは違う意味で……現実じゃないとこで生きてる感じがするから……」
ユウキもマザーズ・ロザリオ編でこう言っていましたが、キリトと仮想世界の関係性は、僕たちが考えているよりも深いということでしょうね。
絶対的な死の予感と黄金色の光
では、話を戻します。
自分の命を全て費やしてでもユージオを助けたいと願うキリトでしたが、目の前にあったのは絶対的な死の予感でした。
恐ろしいくらいに孤独で…たまらなく寒い…。
その感覚は、仮想世界アンダーワールドにおける魂の擬似的な死が、現実の肉体をも殺してしまうのではないかと思えるほどでした。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
凍てつく暗闇の中で魂の死を迎えつつあったキリトは、両肩に誰かの手を感じました。
凍りついた体の内部を優しく溶かしていく暖かい手…。
(……君は、誰……?)
キリトが声にならない声で尋ねると、泣きたくなるほど懐かしく感じられる声が聞こえました。
「キリト、ユージオ…待ってるわ、いつまでも…セントラル・カセドラルのてっぺんで、あなたたちをずっと待ってる…」
黄金色の光は激しく、そして優しく輝き、キリトの体の隅々まで染み渡った後、行き場を求めて左手から溢れ出していきました…。
アニメでは、この部分を約1分で演出しています。かなり重要なシーンなのですが…カットの嵐でしたね(笑)。
いろいろと言いたいことはありますが、後にもっと納得できないシーンがあるので、ここはもういいです。
またここで一回切ります。次は村に戻ったところから。
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