©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回のつづき…
前回の考察でも述べた通り、アニメ第五話は原作をかなりカットおよび改変しています。
カットや改変された部分は、個人的にはあまり納得のいくものではありませんでした。しかし、”オーシャン・タートルへ辿り着く” という終着点は同じなのでなんともいえません。
謎を解き明かしていく過程の面白さは皆無ですが、ストーリーがわかりやすく簡潔に説明されているため、ライトなファン層にはこちらの方が受け入れやすかったのかもしれませんね。
第五話「オーシャン・タートル」のあらすじと感想②
原作小説における謎解きの過程
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アニメ版では、キリトが世田谷総合病院に搬送された際に菊岡誠二郎が登場するため、犯人がほぼ確定的な状態になっています。
一方、原作ではその時点で菊岡は登場せず、アスナ、直葉、シノンの三人が話し合いを重ねることで、キリトを連れ去った犯人を特定するところからストーリーが始まります。
場所は、アルヴヘイム南西部のシルフ領首都スイルベーン内にある、直葉(リーファ)のプレイヤーホームです。
アスナ、直葉、シノンの話し合いと推理
キリトの誘拐理由の考察
まず、犯人がキリトを誘拐した理由について議論。
身代金目的であれば、中流階級のキリトを狙うよりも、富裕層のアスナを狙う方が合理的だろうと推測します。
一方、怨恨説についても検討。
旧SAOでキリトのことを恨んでいる人間は多いので、可能性がないとは言えません。しかし、今回の事件で見られるような資金力や組織力を持つ人物に心当たりはありませんでした。
仮想世界内でのキリトの能力と誘拐の関連性
金銭的な動機でも恨みでもないとなると、犯人は “キリトという人物自体” を必要としているはずだと考えたシノンは、アスナと直葉に、キリトが持っているもの(ゲーム用語でいえば《属性》)は何だろうと問いかけました。
アスナと直葉が答えたのは以下の通りです。
- 剣の腕
- 反射スピード
- システムへの適応力
- 状況判断力
- サバイバビリティ
二人が挙げたキリトの長所は、全てVRMMO(仮想世界)内での能力でした。
「や、現実のキリト君にもいいとこはいっぱいあるよ!」
アスナは小さく苦笑いしながらフォローを入れました。
この部分の会話は結構面白いと思うんですけどね(笑)アニメでも見てみたかったですね。
ソウル・トランスレーター(STL)の存在
ここでシノンは、キリトが普通の高校生男子であり、突出した能力を発揮できるのは仮想世界内だけだという結論に。
それを聞いた直葉は、仮想世界内の能力しか持たないキリトを誘拐した理由は、何らかのVRゲームをクリアさせることが目的なのではないかと考えました。しかし、現在脳に障がいを負って意識不明のキリトには、それは不可能なのではないかと疑問を呈します。
ここで、以前説明のあったSTL(ソウル・トランスレーター)のことが、ふわっと頭に浮かんできますよね。
「意識不明の状態でも、脳ではなく魂にアクセスできるマシンがあれば…」と答えるシノン。
そんなマシンは世界に一つしか存在しません。 それは、”ラース” が開発したソウル・トランスレーターです。
この時点で、三人は キリトを誘拐した組織がラースである という結論に達しました。
キリトの心拍モニターから得られた手がかり
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キリトの居場所を突き止める手掛かりになるもの…それはアニメでも登場した、キリトの心拍モニターでした。
ユイによる信号の追跡と最終発信地の特定
モニターの信号は途絶えていましたが、アスナはキリトが搬送される途中の経路情報をさかのぼって追跡できれば、居場所を特定できるかもしれないと考え、ユイに解析を依頼していたのです。
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「ユイちゃん、どう?」
「パパのハートレート・モニター装置からママの携帯端末に向けて発信されたパケットの追跡は九十八パーセントまで終了しました」
ユイの解析によって特定された発信位置は以下の3箇所。
- 目黒区青葉台三丁目…2026年6月29日 20時50分前後
- 港区白金台一丁目…同日 21時10分前後
- 江東区新木場四丁目…同日 21時50分前後
第三の発信元である新木場を最後に、キリトからの信号は約30時間にわたって途絶えているとのことでした。
東京へリポートからの移送とキリトの所在地
アスナはユイに、最終発信地である新木場にはどのような施設があるのかを尋ねました。
「この地番に存在する施設は、《東京へリポート》という名称です」
ちなみに、「東京都東京へリポート」は、実際に東京都江東区新木場四丁目7番28号に存在します。
これらの情報を総合すると、キリトは東京へリポートからヘリコプターに乗せられ、どこかに連れ去られた可能性が高いという結論に至りました。
アニメ版のユイは、「状況を考慮するとキリトが海外に運ばれた可能性が最も高い」と言っていましたが、原作でのユイは、東京から無着陸で国外に到達できるような航続距離を持つヘリコプターは、一部の軍用機を除いて存在しないことから、キリトは国内のどこかにいるはずだと考えていました。
さらに、シノンは、ラースが開発したSTLは革新的な仮想空間技術であるため、技術を盗む企業スパイなどを警戒するのであれば、外国に研究施設を置くことは考えにくいと指摘。アスナと直葉もその意見に同意しています。
アニメ版でわざわざキリトが海外にいる可能性が高いという設定に改変した理由は、よくわかりません…。
ラースに関する情報収集と限られた手がかり
キリトが国内のどこかに連れ去られたという仮説を立てた三人は、その犯人と推測されるラースについて調べることにしました。
ユイは検索エンジン(インターネットに存在する情報を検索する機能およびそのプログラムのことで、有名なものとしてはGoogleやBingなど)を使用して情報を収集しましたが、該当するものは見つかりませんでした。また、STLに言及した資料や申請済みの特許も一切発見できませんでした。
ちなみに、アニメの中でクラインが特許申請をしていないことについて「徹底してんな」と言っていましたが、これは特許を申請すると一定期間後に技術内容を公開しなければならないことを理解した上での発言だと思われます。
実際、本当に守りたい技術に関しては、多くの企業が機密管理を徹底し、特許申請を控えることがあります。
ラースの由来と「不思議の国のアリス」の関連性
公開されている情報からは何の手掛かりも掴めないことを確信したアスナとシノンは、ダイシー・カフェでのキリトとの会話を必死に思い出そうとしました。
その結果、思い出したのはSTLの仕組みと、ラースという企業名の由来でした。
「不思議の国のアリス」に出てくる空想上の生き物の名前がラースでしたね。
頭字語 “A.L.I” の意味と高適応性人工知能
アスナは、豚という説や亀という説がある謎の生き物ラースについて話している途中で、あることを思い出しました。
それは、カフェでキリトが話した “アリス” という言葉の頭字語について。
しかし、全精神力を振り絞って集中し、思い出せたのは “A.L.I” の部分だけでした。
“Artificial(アーティフィシャル) Labile(レイビル) Intelligence(インテリジェンス)” は、強引に翻訳すると《高適応性人工知能》となります。
長くなったので、またここで一回区切ります。次回は「人工知能」について。
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