©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
大図書室の賢者カーディナルから、アドミニストレータのこと、世界の終末、そして自身の目的について詳しく聞かされたキリト。
全ての準備を整えたキリトとユージオは、次なる目的地を定めました。それは、彼らの愛剣が保管されていると思われるセントラル・カセドラル3階の武具保管庫です。
アリシゼーション編第2クールが始まりました。ここからは整合騎士との戦いが続きます。
第十四話「紅蓮の騎士」のあらすじと感想①
ユージオの密やかな決意
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カーディナルによって、武具保管庫近くの廊下に送られたキリトとユージオ。
アニメでは、すぐに武具保管庫内へと場面が移りますが、原作ではユージオの心情が約6ページにわたって詳細に描かれています。
ユージオは自らを「歴史上最も罪深い人間」だと認識しています。
しかし、彼にはたった一つ残された目的があり、その目的を達成するためなら、これからどれほどの血に手を染め、罪に魂を汚そうとも、前に進み続けると自分に言い聞かせます。
アリスの「心の欠片」を取り戻し、整合騎士アリスを村娘アリス・ツーベルクに戻して、懐かしいルーリッド村に送り届けること。
その目的を達成した後、ユージオは自分の行く末を決めていました。罪人である自分が唯一行ける場所、闇の国で過ごすことを覚悟していたのです。
ユージオは前を歩くキリトの背中を見つめながら、心の中でそう問いかけました。
その後、二人は武具保管庫に入り、それぞれの愛剣を取り戻しました。ついでに新しい服に着替えた彼らは、次の目的地へと向かいました。
整合騎士デュソルバートとの遭遇とキリトの機転
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キリトとユージオが武具保管庫の扉をわずかに開いた瞬間、複数の鋼矢が飛来しました。
彼らを待ち受けていたのは、整合騎士デュソルバート・シンセシス・セブンでした。
デュソルバートが4本の矢をつがえ、今にも放とうとしているのを見たキリトは、即座に叫びました。
「バースト・エレメント!」
キリトの狙いは、武具庫内部を照らすために呼び出した光素を開放することでした。これにより膨大な光を生み出し、デュソルバートの目を眩ませようとしたのです。
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「前だ!」
狙い通り回避に成功し、一気にデュソルバートとの距離を詰めるキリトとユージオ。
光素爆発によってデュソルバートの視力が数秒間奪われると予測し、近接戦闘へと持ち込む算段です。
しかし、次の瞬間デュソルバートは驚異的な行動に出ました。矢筒に残る全ての矢をまとめて長弓の弦につがえたのです。
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アニメではカットされていますが、この時ユージオは、”細い弦一本で、30もの矢をまともに撃てるはずがない” と考えていました。
キリトもデュソルバートの意図を瞬時には判断できませんでしたが、直感的に回避を選択。ユージオにも左後ろに跳ぶよう促しました。
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赤鎧の騎士デュソルバートは、弦を切りながらも全ての矢を放ち、キリトとユージオに矢の雨を降らせました。
デュソルバートの視力が万全であれば、二人は致命傷を負っていたでしょう。しかし、キリトの咄嗟の機転もあって、何とか回避に成功しました。
踊り場に立つ騎士は、まさに「弓折れ矢尽きる」の状態でした。
解放された神器・熾焔弓
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「システム・コール!――エンハンス・アーマメント!」
垂れ下がった2本の弦の先端に橙色の炎が生まれ、長弓の両端に炎が達した瞬間、弓全体から真紅の火焔が巻き上がります。
それは、武装完全支配術によって解放された神器《熾焔弓(しえんきゅう)》の姿でした。
デュソルバートが弓の本来弦があるべき位置に右手を据えると、強烈な炎が迸り、たちまち炎の矢へと形を変えました。
「弦切れも矢切れも関係なしか」
この息を呑む光景に、キリトも思わず唸りを上げました。
氷の盾とアインクラッド流防御技
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「連射は不可能、そう信じる。初撃をどうにかして止めるから、お前が斬り込むんだ」
ユージオは、キリトが提案した策に不安を感じつつも、「キリトが止めると言うなら止めるだろう」と腹をくくります。
「――解った」
不意に動いたキリトを追うように、ユージオも走り始めました。
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「システム・コール!ジェネレート・クライオゼニック・エレメント。ディスチャージ!」
キリトは高速詠唱により凍素を生成し、それを一列に並んだ5つの大きな氷の盾へと変化させました。
「笑止!」
デュソルバートは炎の矢というよりも、もはや “槍” と呼ぶべき劫火の塊をキリトに向けて放ちました。
猛烈な炎の槍は、キリトの作った氷の盾を一つ、二つ、三つと次々に突破していきます。
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そして、最後の5枚目の盾と衝突した瞬間、炎の槍は不死鳥のような姿へと変化しました。
不死鳥と化した炎は最後の盾を破壊し、猛然とキリトに襲いかかりました。
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「うおおおおお!!」
キリトは裂帛の気合いとともに、アインクラッド流防御技「スピニングシールド」を繰り出します。
視認が不可能なほどの勢いで旋回する刀身は、まるで “漆黒の盾” のようでした。
スピニングシールドは、アニメSAO第1期第七話「心の温度」で登場した防御技。アインクラッド55層でのドラゴンが放つブレスを防ぐために使用されました。
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スピニングシールドによって炎の一部を切り裂くことはできましたが、少なくない量が爆発を起こし、その衝撃でキリトの体は弾かれたように宙に舞い、後方の壁に激突しました。
ユージオの剣に込めるべきもの
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「止まるな、ユージオ!!」
自分を心配して叫ぶユージオに、キリトは空中に投げ出されながらも声を返しました。
「彼は約束を果たした。ならば自分もそうしなければ」とユージオは決意し、逡巡を振り払って一気に階段を駆け上がります。
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デュソルバートが帯剣していない以上、この距離まで接近できた時点で自分の勝ちだと確信していたユージオ。
しかし、デュソルバートは凄まじい炎を宿した拳で迎え撃ちました。
――どうする!?
剣と拳を比較すれば、通常は全ての面で剣が優位です。しかし、デュソルバートは階段3段分の高さという地の利を得ていました。
ユージオの中に、青薔薇の剣でこの炎の拳を押し返せるのかという不安が芽生えました。
誰にも負けないほど稽古を重ね、さまざまな秘奥義を会得してきたユージオ。しかし、まだ “剣に込めるべき何か” を見つけられずにいました。
もしかしたら、生まれつきの剣士ではない自分には、それを永遠に見つけることができないのではないかとさえ考えていました。
しかし、今のユージオには確固たる目標があります。それは、記憶を奪われ、整合騎士に変えられてしまったアリスを取り戻すこと。
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8年前、無力だったユージオは連れ去られるアリスをただ見ているだけしかできませんでした。
ユージオは、「今度こそアリスを助けてみせる」という強い決意を青薔薇の剣に込め、渾身の一撃を放ったのです。
アインクラッド流秘奥義 バーチカル・アーク
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「お……おおっ!」
青薔薇の剣の仄かに透き通る刀身を、鮮やかな青い光が包み込みました。空中の一点で、剣と拳が静止します。
この膠着状態を破ったのは、熾焔弓から放たれた猛烈な炎でした。
炎が青薔薇の剣を舐め始め、明滅している刀身を赤熱させていきます。
もしここでデュソルバートに競り負け、技を中断させられてしまえば、即座に灼熱の一撃を喰らうのは必至でした。
――お前は、世界創世の頃から、果ての山脈の頂で極寒の吹雪に鍛えられてきたんだ。こんな炎なんかに、負けるな!
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ユージオが叫んだ瞬間、それに応えるかのように青薔薇の剣から冷気が迸りました。
刺すような冷気は剣を伝い、デュソルバートの拳までも真っ白な霜で包み込んでいきます。
デュソルバートは思わず唸り声を上げ、わずかに体勢を崩しました。
ユージオはその瞬間を逃さず、今まで蓄えていた力を解き放ち、デュソルバートの拳を弾き返しました。
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ここでユージオが放った秘奥義について、
後にデュソルバートに技名を聞かれ、ユージオは「バーチカル・アーク」と答えました。しかし、この右上から左下に向けての剣閃は、単なる「バーチカル」のように見えます。
僕の記憶では、バーチカル・アークはVの字を描くように、上から下への斬り下ろしと下から上への斬り上げの二連撃のはずです。
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アニメSAO第1期第二話「ビーター」で、第1層のボスであるイルファング・ザ・コボルトロードへのとどめに使用した際も、バーチカル・アークの二撃目は斬り上げでした。
このバーチカル・アーク?によってデュソルバートに一撃を喰らわせたユージオは、さらに勝負を決めるべく追撃に転じました。
秘技中の秘技《秘奥義連携》
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通常、あらゆる秘奥義は撃ち終わった後に数瞬の「硬直」を強いられます。
もちろん斬撃が命中し、相手に大ダメージを与えればこの問題は軽微です。しかし、もし攻撃が受け流されたり躱されたりした場合、あるいは今回のように当たりはしたものの敵の動きを止めるに至らない場合は、致命的な反撃を受ける可能性がありました。
この硬直による隙を消す方法は以下の通りです。
- 味方と入れ替わる
- 事前に生成しておいた風素を解放して風圧で間合いを作る
- 秘奥義連携
秘奥義連携とは、ある技の出し終わりの姿勢を次の技の発動姿勢に重ねることで、硬直時間を消し去る超難易度の技術です。この技術は非常に難しく、キリトでさえ成功率は50%程度にとどまります。
――秘奥義連携。アインクラッド流秘奥義「スラント」。
この場面では、バーチカル・アークを単なる斬り下ろしとして描写してしまったため、ユージオの動きが不自然に見えてしまっています。
本来のバーチカル・アークであれば、二撃目の斬り上げの姿勢から左肩に担ぐスラントの発動姿勢へと自然に移行できるはずです。そうすれば、動きの流れがより滑らかで理にかなったものになったでしょう。
ユージオはありったけの腕力と精神力を振り絞り、バーチカル・アーク二撃目の軌道上にある青薔薇の剣の動きを制御した。本来なら左上に高々と斬り上げられるはずの刀身を、左肩に担ぐような形に持っていく。
ソードアート・オンライン12 アリシゼーション・ライジングより
とにもかくにも、この秘奥義連携スラントが決定打となりました。
デュソルバートは肩から胸にかけて深い傷を負い、これにより戦いは終結しました。
次回に続く…
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