©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「エンハンス・アーマメント!!」
人界とそこに暮らす民を守るために自身を犠牲にし、懸命に戦うファナティオ。その姿にユージオは圧倒されていました。
キリトは、憎しみだけではファナティオを倒すことはできないとユージオを諭します。そして、決意を固めて「武装完全支配術」の最後の一句を唱えました。
第十六話「金木犀の騎士」のあらすじと感想①
キリトの武装完全支配術、闇の大槍の威力
キリトが術式を唱え終えた瞬間、黒い剣の刀身が脈打ち始めました。刃のあらゆる箇所から、幾筋もの闇が溢れ出します。
この闇は、うねり、よじれ、そして絡み合いながら、圧倒的な質量を持つ大槍へと変貌を遂げていきました。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ユージオは、キリトが発動させた完全支配術の正体を悟った。
彼は、術式によって黒い剣に眠る記憶を呼び覚まし、それがかつて誇示していた姿、数百年にもわたって切り倒されることを拒み続けた巨大樹を、この場に出現させたのだ。もちろん形や大きさは当時のままではないが、本質はまったく同じだろう。アリシゼーション・ライジング
光と闇の激突、ファナティオの敗北
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ファナティオの天穿剣が放つ光と、キリトの黒い剣が生み出す闇。この二つの対照的な力は、一瞬の均衡を保ちます。
しかし、キリトの完全支配術には特殊な性質がありました。それは、“ソルスの光を貪欲なまでに吸収し、己の力に変える” という特性です。この力によって、最終的にキリトの術に軍配が上がります。
ファナティオの最後の言葉は、何度聞き返してみても聞き取ることができませんでした。原作でも明かされていなかったこの一言は、非常に気になるところです。
瞼がゆっくりと閉じられ、口許がわずかに動いた。そこには何らかの感情が込められていたはずだが、ユージオにはそれが何なのか察することはできなかった。
アリシゼーション・ライジング
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
漆黒の巨樹の先端が光を喰い尽くした瞬間、ファナティオは恐ろしい勢いで空中に跳ね上げられ、天蓋に激突しました。
打ち砕かれた壁画の残骸と共にゆっくりと落下する第二位の整合騎士。彼女はもう立ち上がることはありませんでした。
ユージオの機転による治癒術と天命移動術
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
漆黒の大槍が影のような流れとなって黒い剣に吸い込まれ、元の姿に戻ると同時に、キリトは崩れ落ちました。
「システム・コール!ジェネレート・ルミナス・エレメント!」
ユージオが唱えたこの治癒術(光素生成)は、通常、大量の空間神聖力を消費するため、聖花珠などの触媒が必要です。
しかし、今回はユージオの完全支配術によって整合騎士から吸収された天命が神聖力となって空間に漂っていたため、触媒なしで術を発動することができました。
ユージオの完全支配術にはこのような副次的効果もあったのです。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
「システム・コール!トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、セルフ・トゥ・レフト!!」
光素系神聖術でキリトの傷口を塞ぎ、天命の連続減少を止めたユージオは、速やかに天命移動術を唱え、自分の天命をキリトに分け与えます。
この術は、第四話でセルカがユージオを治療した際に使用したものと基本的に同じです。
術式の単純さに比べて効果が大きいこの天命移動術により、ユージオが自身の天命の半分ほどをキリトに流し込んだ時、ようやくキリトは目を覚ましました。
目覚めたキリトは、ユージオにフィゼルとリネルへの対応を指示し、自身はファナティオの元へ向かいます。
アニメではカットされているユージオの対応を少し紹介します。
ユージオはまず少女たちの毒剣を青薔薇の剣で一薙ぎして粉砕します。その後、入念なボディチェックを行い、他の武器を所持していないか確認します。
そして、少女たちに解毒剤を飲ませ、キリトとファナティオの強さの理由を二人に語ってから、キリトの後を追っています。
ファナティオの深刻な状態と治療の難しさ
一方、ファナティオの状態は深刻でした。
アニメでは演出上の配慮からか、彼女の姿はそれほど痛々しくは描かれていません。しかし、原作では眼を背けたくなるほど酷い状態だったのです。
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ファナティオの体は、熱線で胴と両足を四箇所貫かれ、右腕は薔薇の棘に引き裂かれた上に大火傷を負っていました。さらに、キリトの最終攻撃をまともに受けた上腹部には、大人の拳大の貫通痕があり、無傷な箇所がないほどの重傷を負っていました。
このような重症のケースでの治療方法は、まず傷口を塞いで天命の連続減少を止め、その後ユージオが先ほど使用した天命移動術などによって天命を回復させる必要がありました。
しかし、キリトとユージオの二人がかりでも、ファナティオの傷口を塞ぐことはできませんでした。この状態では、たとえ天命移動術で一時的に天命を回復させても、すぐに減少してしまい、効果が無駄になってしまいます。
キリトの決断、カーディナルの短剣使用をめぐる葛藤
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトの決断は、“カーディナルから渡された短剣を使うこと” でした。
この短剣は攻撃力をほとんど持ちませんが、刺された者とカーディナルの間に切断不可能な経路を接続し、カーディナルの用いるあらゆる神聖術を必中にする特性があります。
キリトは、この短剣を使ってファナティオの治療を強力な神聖術者であるカーディナルに託そうとしたのです。
しかし、この決断には異論を持つ人も多いのではないでしょうか。
この短剣は、アドミニストレータを倒し、アリスを助けるために絶対に必要な、たった二本しかない貴重な道具。
アニメではカットされていますが、原作ではユージオもキリトに多くの正論を投げかけ、ファナティオの命を諦めるよう説得しています。
例えば、地下牢でユージオに敵を殺す覚悟を問うたこと、完全支配術を使った時点で生き死にを覚悟していたのではないかという点、そしてファナティオ自身が死ぬ覚悟を持って戦っていたことなどです。
ユージオは、ウンベールの腕を切り落とした時に、本物の剣を相手に向けるということの意味を学びました。
そして、その「覚悟」をキリトは遥か昔から、ルーリッドの森で初めて出会った時から知っているものだとユージオは考えていたのです。
「これを使えば助けられる……助ける手段があるのに、それを使わないなんて……俺にはできない」
キリトがこれまで体験してきた数々の出来事が、彼の心を複雑にしているのかもしれませんね…。
©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
それはそうと、原作では “使わないなんて……” と “俺にはできない” の間に “命に優先順位をつけるなんて” という言葉がありましたが、アニメでこれを省いたのは制作陣の適切な判断だったと思います。
結果として、カーディナルがファナティオの治療を引き受けることになりました。
カーディナルは、アドミニストレータが放った探索用の蟲(使い魔)が気付いていることを警告しつつ、手短に今後の対策方法を教え、さらには最上級回復薬まで送ってくれました。
この行動を見て、やはりアリシゼーション編で一番好きなキャラクターはカーディナルだと再確認しました。
原作ではどうしてもイメージしきれなかった蟲の姿と、キリトとユージオの蟲関連のやりとりを楽しみにしていたのですが、そこはあっさりカットされてました…。
次回に続く…
コメント