©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回のつづき…
菊岡がキリトを必要としていた理由を話し終えると、舞台はALOの世界に移行。
そこで、アスナは皆にこれまでの経緯を説明しました。
経緯を聞いた女性陣がそれぞれ意見を述べた後、話題はキリトがSTLを使ってアンダーワールドにダイブしていた時のことに移ります。
第六話「アリシゼーション計画」のあらすじと感想⑤
キリトのアンダーワールドでの行動と影響
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
アスナは皆にアンダーワールドで起こった出来事について説明しますが、これはアニメ第一話で描かれた内容です。
キリトのダイブ中の様子について、もう少し詳しく説明します。
キリトは幼児期から、他の被験者には見られなかった旺盛な好奇心と活動性を示しました。これは、前回説明した”仮想世界への慣れ” によるものだと考えられます。
好奇心旺盛なキリトは、何度も禁忌目録に違反しかねない行動をとっては、お仕置きを受けるような状態でした。
しかし、仮にキリトが禁忌を破ったとしても、それは人工フラクトライトの構造的欠陥を示すだけなので、菊岡らとしては複雑な心境だったようです。
その後も注意深く観察を続けていたところ、比嘉はある興味深い事実に気づきました。
それは、キリトと一緒に行動していた少年と少女の違反指数(予めチェックしていた禁忌違反にどれくらい近づいたかを表す値)が、突出して増大し始めたこと。
キリトがもたらした成果と比嘉らの目的の変化
つまり、キリトは記憶と人格を封印された状態でありながら、周囲の人工フラクトライトの行動に強い影響を及ぼしていたということです。
この時点で、比嘉らの目的は、”なぜ人工フラクトライトが規則に違反しないのか” を解明することから、“たった一つでも《規則の優先順位》という概念を得た真の高適応性人工知能を手に入れること” に変わりました。
その理由は、前者の理由を突き止めるよりも、後者を手に入れて複製・加工する方が、成果を得られやすいと考えたからです。
アリスの禁忌違反と公理教会による修正処理
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
キリトの影響によって違反指数が増大した人工フラクトライトの行動は、アニメ第一話で描かれているとおりです。
少女(アリス)は、他の人工フラクトライト(闇の国の騎士)を助けるために、重大な違反である《移動禁止アドレスへの侵入》を犯しました。
つまり、アリスは禁忌目録よりも他者の命を優先した、適応性を獲得した初めての人工知能ということになります。
しかし、アニメ第一話で描かれていたように、アリスは公理教会整合騎士デュソルバート・シンセシス・セブンによって央都に連行されました。
比嘉らがアリスを物理イジェクトしようとした時には、すでに公理教会によって”ある種の修正処理” が施された後であり、アリスは使い物にならなくなっていたということです。
アリスが禁忌を犯した後、速やかにイジェクトされなかった理由は、アンダーワールド内の時間が現実世界と比べて1000倍という驚異的なスピードで経過しているために生じたタイムラグが原因であるようです。
A.L.I.C.Eの意味と由来
©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
ラースという組織を含めた全ての計画の礎となった概念には、“人工高適応型知的自立存在” という名称が与えられていました。
これらの頭文字をとって 《A.L.I.C.E》 と名付けられました。
- Artificial…アーティフィシャル
- Labile…レイビル
- Intelligence…インテリジェント
- Cybernated…サイバネテッド
- Existence…イグジスタンス
アンダーワールドの住民の名前は、そのほとんどがランダムな音の組み合わせとしか思えない奇妙なものばかりでしたが、適応性を獲得した初めての人工フラクトライトの名前が “アリス” だったという驚くべき偶然に、菊岡らは愕然としたようです。
ラースの究極の目的:アリス化
アリシゼーション・ランニング/イラスト:abec
ラースの究極の目的は、ライトキューブに封じられたフォトンの雲を一なる《アリス》に変化させることであり、ラーススタッフたちはこれを短く《アリス化》と呼んでいたそうです。
菊岡は、多くの機密を明らかにしながら、なおも謎めいた笑みを浮かべて言いました。
「ようこそ、我らが《プロジェクト・アリシゼーション》へ」
現実世界におけるAI研究の現状
小説約120ページにわたる長い説明が終わりました。
川原礫先生は10年以上前(2000年代半ば)にWeb版のアリシゼーション編を公開しましたが、作品に登場するボトムアップ型人工知能の話などは、今でも新鮮に読むことができます。
現在でも、多くのAI研究の権威者たちが、自然言語を扱い、それを使って人間と意思疎通ができ、あらゆる問題に対処できる”汎用的人工知能(AGI)” を創り出すべく研究を進めています。
NHKの「最後の講義」にも出演された大阪大学の石黒浩教授や、レンセラー工科大学のセルマー・ブリングジョード教授の研究は、非常に興味深いものです。
特にブリングジョード教授は”ある人を助けるために他人を犠牲にする” 、”多数の生命を救うために少数を殺害する” などの複雑な問題に対してAIがどのような解決策を導き出すのかを実験しています。
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も、投資資金をAI分野に集中させているように、今後も世界の関心はAIが中心となるでしょう。
SBGを率いる孫正義会長兼社長は、人工知能(AI)などの分野で成長性の高い企業への投資に強い関心を示しており、SB株式の売却益はこうした企業への投資資金などに回す方針だ。
投資会社化を推進=AI傾斜、売却益振り向け-ソフトバンクG
アニメでの説明不足と原作の魅力
SAOのような人気アニメを通して、今後の日本を担う子供たちに人工知能というものを知ってもらうためにも、アニメで詳しく説明してくれることを期待していましたが、原作の内容がほとんどカットされていたので、少し残念に感じました。
この記事ではアニメでは触れられなかった部分を中心にいろいろと書かせてもらいましたが、当然ながら原作はもっと詳しく分かりやすく書かれているので、少しでも興味を持った人はぜひ読んでみてください。
次回につづく。
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