©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project
前回のつづき…
ここで場面は現実世界の自走式メガフロート「オーシャン・タートル」へと移ります。
現実世界のキリトの状況を思い出してみましょう。
彼は殺人ギルド「ラフィン・コフィン」のメンバー、ジョニー・ブラック(本名:金本敦)に筋弛緩剤を注入されました。その結果、低酸素脳症によるダメージを脳に負っている状態にあります。
世界で唯一キリトの脳の治療ができる施設が、このオーシャン・タートルで、現在キリトは施設内の「アッパーシャフト」と呼ばれるエリアで治療を受けています。
第十七話「休戦協定」のあらすじと感想②
オーシャン・タートルでの朝食と不審な護衛艦の出現
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午前7時45分、キリトを見舞ったアスナは、フルダイブ技術研究者の神代凛子と共にラウンジで朝食を取っています。
新鮮な白身魚のフリットと、8番デッキ後部の洋上大規模農場で作られた野菜のサラダ。
二人は想定外に立派なビュッフェ形式の料理に舌鼓を打ちながら、遥か遠方に見える船舶について話をしています。
そこへ、自衛隊員の中西一等海尉が現れました。
中西によると、二人が気にしていた艦船は “5000トン型汎用護衛艦DD-119あさひ” だそうです。
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この “あさひ” は第2護衛隊群第2護衛隊(佐世保基地)所属の実在する艦船。
原作では “DD-127ながと” という名の艦船でしたが、現実世界でDD-127は “いそゆき” という名称のため、アニメ化に伴って実在する艦船に変更されたようです。
予定外の行動を取る “あさひ” に、アスナは仄かな胸騒ぎを覚えました…。
邪悪な怪物ミニオンの急襲
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一方、キリトたちは壁登りの途中でしたが、日没による空間神聖力の枯渇により、必須のハーケンを生成できなくなっていました。日が完全に沈めば、一時間に一本作れるかどうかという厳しい状況でした。
そんな中、キリトは頭上に石像のようなものを発見します。
石像の上で休むことを提案し、アリスも同意。アリスは左手の籠手を物体形状変化術で黄金のハーケンに変え、キリトに渡しました。
キリトが2メートルほど登ったとき、頭上の石像が突如として不気味な怪物へと変貌し、二人を襲います。
足場が不安定な場所での戦い、さらにショックで硬直したアリスを庇いながら応戦するキリトでしたが、劣勢は否めませんでした。
キリトとアリスの命懸けの共闘
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「二人とも生き残れたら、後で幾らでも謝る!!」
キリトは危険を承知で、全身の力を振り絞りアリスを数メートル上のテラスへと放り投げました。
奇跡的にテラスへ着地したアリスは、ハーケンから滑り落ちたキリトを怒りの声で叫びながら引っ張り上げ、散々に罵倒。
「な……何を考えているのですが、この大馬鹿者!!」
整合騎士たちが “ミニオン” と呼ぶ邪悪な魔物は、なおもキリトたちに襲いかかってきました。しかし、安定した足場を得た二人にとって、もはや脅威ではありませんでした。
アリスは恐ろしいほど速く重い「単発中段斬り」で、キリトはアインクラッド流秘奥義水平四連撃技「ホリゾンタル・スクエア」で、ミニオンたちを次々と撃破していきます。
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戦いの後、アリスは “心底嫌そうな顔で” キリトに向かって言いました。
「ああもう、男というのはどうしてこう……。お前、手巾の一枚くらい持っていないのですか」
そう言いながら、アリスはキリトの頬に付いたミニオンの血を拭くための手巾を差し出します。
二人は、わずかでも空間リソースを供給する月が昇るまでの数時間を、現在位置でおとなしく待つことにしました。
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ユージオの複雑な心情と90階への到達
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ここで場面は、カセドラル最上階を目指し階段を上るユージオへと移ります。
ユージオは、実力者であるキリトやアリスなら、どうにかして落下を食い止め、塔の外側から登り始めているはずだと信じていました。その信念を胸に階段を上り続け、ついに90階の大扉へと辿り着きます。
アニメではカットされていますが、原作ではここでユージオの複雑な心情が詳細に描かれています。
キリトに対する信頼や憧れという肯定的な感情と、劣等感や羨望、嫉妬に似た否定的な感情が、ユージオの胸の中で複雑に絡み合っていたのです。
キリトと騎士アリスは、今頃どうしているのだろう。
塔の外壁を登るキリトを、アリスが追いかけている?それとも、塔の壁にぶら下がったまま、尚も戦闘を続けている?あるいは……キリトという人間の不思議な魅力が、とりつく島もなさそうだった整合騎士アリスの剣すら引かせているだろうか……?
アリシゼーション・ディバイディングより
現在のアニメ監督はキャラクターの内面描写をほとんど省略する傾向にあり、今回もその部分が割愛されました。
しかし、これはキャラクターの成長と物語の深みを理解する上で非常に重要な要素だと考えられます。
ユージオは、これまで以上に強力な敵が待ち構えていることを覚悟しながら、大扉を押し開きました。
そこに現れたのは、全身に無数の古傷が刻まれた一人の大男でした。
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原作ファンからみたアニメSAOアリシゼーション第十七話の感想
アニメSAOアリシゼーション第十七話「休戦協定」について、原作ファンとしての感想を少し。
原作で特に好きだったこのエピソードですが、アニメでは期待通りの面白さを感じることができませんでした。
その理由を考察すると、主にキリトとアリスの間の “コミカル” な要素が大幅にカットされていたことが挙げられます。
原作『アリシゼーション・ディバイディング』では、ツンツンしているアリスをキリトが恐れつつも弄り倒し、「すいません」と何度も謝罪を繰り返すシュールな笑いが散りばめられていたのです。
これらの要素の約8割がカットされ、重要な会話のみが残されたことで、ストーリーにメリハリが欠け、面白さが減じてしまったように感じます。
また、キャラクターの「表情描写」にも改善の余地があると思います。
現監督の下では動画のエフェクトには力が入っているものの、キャラクターの心情を表す表情表現が乏しく、時に場面やセリフと不釣り合いな表情が見られることがあります。
大袈裟に言えば、腹話術の人形にセリフを喋らせているだけのような感じ?
脚本に関しては、時間的制約があることは理解できますが、原作の素晴らしさを知るだけに、今期のアリシゼーションや「からくりサーカス」のようなダイジェスト的な展開は非常に残念に感じます。
ただし、アニメ化における原作との差異は必ずしも否定されるべきではありません。
例えば、名作「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」の水島監督は「アニメ版は二次作品」と述べ、原作者の荒川弘氏も「根っこの部分さえ取り違えなければ思い切りやっちゃってOK」「原作と全く同じならアニメという別メディアに乗せる必要は無いと思うので」と言及しています。
これらの意見は、アニメが独自の解釈や展開を持つことの重要性を示唆しています。
とはいえ、魅力のないアニオリを挿入したり、水で薄めたようなダイジェスト展開には、やっぱり不満が残りますね…。
次回につづく…
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